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海神  作者: 葉月 優奈
二話:回収人
18/56

018

そうだ、俺は殺していない。

殺していないのなら、堂々としていればいい。

それでも、動機という点では俺は圧倒的に不利だ。


結婚を反対されて、俺には恨みがあった。

柚乃も、結婚を反対されているけど…まさか柚乃が殺したのだろうか。

ベンチのそばで、柚乃が泣いていた。


その涙は、偽物ではない。俺はそう信じていた。

でも疑われやすいのは、俺と柚乃だ。

ほかの人間は、うね婆さんとの接点がない。

いや、本当にないのだろうか。

頭の中で、俺の思考がぐるぐる回っていた。


(いったん冷静に考えよう)

俺は、女子トイレに行った覚えもない。

女子トイレ…そういえばうね婆さんが行ったのは21:50ぐらいだろうか。

エレベーターが停止される、少し前だ。


「うね婆さんが死んだとして、その推定時刻はわかるのか?」

「わからないけど、21:48には彼女は私のカフェにいました」

黒いベストに白シャツのバーテンダーの格好をした女性が、静に答えた。

彼女は、カフェというよりバーの店員。

長い茶髪にカチューシャ、凛とした顔は大人びていた。


名前は確か、『砂川』とか言っていた。

ついでに、彼女がトイレを利用しようとしたときうね婆さんが倒れていた。


「時間は21:50ぐらい。

そこでうねさんが、女子トイレに入った。確か俺はそう見ている。

柚乃、お前も見ているよな?」

「ううっ」柚乃は、俺の言葉も無視して泣いていた。

「なるほど21:50。エレベーターの停止は21:58。

アナウンスが起きて最後のエレベーターが停止したまで僅か8分程度。

その間に、死んだのか」

印南が経緯を、まとめていた。

ここにはうね婆さんを運ぶ四人が、彼女を囲んで立っていた。

印南のそばで、砂川。さらには婆さんの孫娘の柚乃が泣いていた。


うね婆さんは確か71歳だ。

心臓病で急死は、なくはない年齢だ。

だが病気をしていたとか、病院通いだったとかという話を聞いたことがない。

元気をそのまま表現した、婆さんだ。


「それでも、やはり殺人はおかしいと思う。

このタワーに上がる前、お前たち警備員が持ち物検査をするだろう。

エレベーター前で、やっていたあれはなんだ?」

「そうだな、確かに手荷物検査をしていた」

印南はしていないけど、彼と同じ制服を着た人間がエレベーターに乗り込む前に検査をしていた。

簡単な手荷物検査をして、刃物の確認をしていた。


「まあ、うね婆さんには外傷もないけど」

「それなんだが、やっぱり病気じゃないのか?」

俺と一緒に運んだ、波多野が険しい顔で静かに眠るうね婆さんをそう見ていた。



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