010
(INNAN‘S EYES)
展望台には、全ての人間が集まっていた。
ここには、唯一下のフロアにつながるエレベーターがあった。
だけど、エレベーターは停止されている。警察の指示だ。
理由は、この展望室に危険なスパイと生物兵器『エノシガイオス』があるからだ。
茶色のスーツの男性が、親指を立てた。
あれが刑事なのだろう、名前は神影刑事という。名前はわからない。
でも、おそらく変装もしているし名前も変えているだろう。
彼も危険な武器を持つスパイに警戒しながら、スパイの居場所を探っているのだ。
(話しているのは、仲間の刑事か?それともスパイの一人か?)
なりすましの外国人が、ここに二人いると聞かされた。
生物兵器の取引会場であるここで、二人の外人が潜伏していた。
そして、同時に起きたのが殺人事件。
殺人事件が起こったのを、刑事はすでに知っていた。
本部でも、トイレの中には監視カメラはない。
とにかく、俺はまず客を見ていた。
「まずは落ち着きましょう。
すでに警察の方も、通報しております。
それと、あなたはこの方をご存じですか?」
「鵤さんだ」
茶色のジャンパーを着た男性が、声をかけてきた。
無精ひげの男性は、髪もぼさぼさの不潔な感じがした。
「あなたは?」
「俺の名は成沢、こいつは俺の彼女。名前は柚乃」
成沢が隣にいる女を紹介した。
黒のオフショルダーを着て、短いスカートに、黒いブーツをはいた若い女性。
茶髪の染めたカールかかった長い髪は、ギャルにも見えた。
「成沢さんに、柚乃さん。彼女?」
「俺と柚乃は、どう見たって付き合っているんだ」
見た目は、親子のような二人組。
それでも、成沢の隣で泣いていた少女柚乃と付き合っていた。
カップル宣言を、堂々と言い放つ。
「成沢さんは、失礼ですが職業とか……」
「ああ、画家だよ。まあ、画家で食っていけるほど稼げていないけどな。
それに、柚乃は高校卒業したばかりだ」
「鵤さんとの付き合いは?」
「あんた、探偵かなんかか?」
疑惑の目で、自分を見てくる成沢。
とっさに、自分は少し奥で親指を立てた刑事(多分神影さん)を見て前を向いた。
「ええ、自分はこのタワーを守るためです。
それに、犯人はこの展望室内にいる」
自分は、はっきりと断言した。
断言した瞬間、ほかの客もまた驚きの顔を見せていた。