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あれで付き合ってないの? ~ 幼馴染以上恋人未満 ~  作者: 一ノ瀬麻紀
太陽の話(スピンオフ2)

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19 お揃いのマグカップ

 お世話になった温泉旅館をチェックアウトしたオレたちは、帰りに道の駅へ寄った。麻琴(まこと)たちやクリニックのスタッフに、お土産を買って帰ろうと思ったんだ。


 1ヶ月ずっと考えていた気持ちを伝えることができて、オレたちはお試しにはなるけど、恋人同士になった。

 でも特に変わらない……と思いかけて、オレはそっと自分の頬に触れた。

 昨日のことを思い出すと、少し気恥ずかしいこともあるけど、でも心の中がぽっと暖かくなる。

 オレと凛太郎(りんたろう)の思い出が、こうやって積み重なっていくんだな……。


 自然と緩む口元を感じながら、ゆっくりお土産を見ていると、マグカップの並んだ一角に目が止まった。

 太陽(たいよう)のイラストが描かれたマグカップと、その隣に、ベルのイラストが描かれたマグカップが並んでいた。


「凛太郎、これお土産に買って帰るか」

「マグカップですか?」

「ああ。太陽とベル。オレと凛太郎みたいじゃないか」

「ああ! 本当だ! いいですね、太陽さん。これお土産に買って帰りましょう! 恋人になった記念ですね」


 凛太郎は2つのマグカップを手に取り、愛おしそうに目を細めた。


「オレの家に置いておくから……いつでも、使いに来ていいぞ」

「――!」


 オレの言葉に、凛太郎はマグカップの箱を手にしたまま、こちらを見て動きを止めた。

 ああ、本当にわかりやすいやつだ。

 オレは、予想通りの反応をしてくれる凛太郎に、満足してうなずいた。


 帰り道は、楽しかった時間を思い返しながら、オレたちは温泉旅行の余韻に浸って帰路についた。



「太陽の話を聞いた時、うちにインターンに来る予定の子かなーって思ったけど、やっぱりそうだったんだねー」


 8月上旬の、夏真っ只中。木陰にあるテラス席で、オレと麻琴と蒼人(あおと)の3人は、いつもの報告会をしていた。

 凛太郎が春岡クリニックの実習を終えた後、麻琴と蒼人の働くシンセンス研究所にインターンに行ったんだ。


「太陽の言うように、凛太郎は優秀だった。あいつは上位アルファだな」

「アルファだから……じゃなくて、あいつは努力してるからな」

「そうか、確かにそうだな。頑張っていた」


 オレは、凛太郎が褒められたことで、鼻高々な気持ちになった。

 元々蒼人は口数が少ないし、アルファ同士は常にライバル視してるところもあって、そんな蒼人が褒めてくれたんだ。


「すっごくいい子だったよ! アルファなのにエラそうにしなかったし!」

「そうなんだよ。いつも一生懸命で、まっすぐなんだ」


 麻琴もニコニコしながら褒めてくれて、オレはますます気分が良くなる。


「太陽、凛太郎くんが褒められて、すごく嬉しそうだね!」

「……あっ」


 ニコニコした笑顔のまま、麻琴が言ったセリフに、オレは一瞬ドキッとしてしまった。

 まだ2人には、凛太郎とのことを報告してないんだ。そのために今日呼び出したんだから。


「えっとな、今日は話があって呼び出したんだけど……」

「なぁにー?」


 いつものように、蒼人の膝の上に座ったままの麻琴は、キラキラと目を輝かせて、オレの言葉を待っている。

 蒼人の方をチラリと見ると、もうわかってると言うように、オレにアイコンタクトをしてきた。

 さすが蒼人だ。ただの執着アルファじゃない。オレの様子からすでに察してくれているようだ。


「オレと凛太郎、お試しで付き合うことになったんだ」

「付き合うことになったの? ……って、え? お試し?」


 麻琴は嬉しそうに身を乗り出した直後、でもえ? って目をキョロキョロさせた。

 それはそうだ。普通に付き合い始めた報告じゃなくて『お試し』なんてついているんだから。


「正直、オレはめちゃくちゃ恋愛に疎い。凛太郎へのこの気持ちが、本当に恋なのかわからないんだ。あいつは本当にいいやつで、友達として好きなのかも? って考えちゃうこともあってさ」

「でもなんでお試し? 普通に付き合うでいいじゃん」


 麻琴のもっともな疑問に、オレはふっと笑った後、話を続けた。


「好きかわからない状態で、流されるように付き合うのは凛太郎に悪いと思ったんだ。でも、お試しで付き合ったら、本当の気持ちに気づけるかなって。……まぁ、そんなこと言うのも失礼なことなのかもしれないけど、でも、凛太郎は喜んで受け入れてくれた」

「そうか。太陽らしいのかもしれないな」

「そうだねー! 太陽っぽいかも!」


 付き合いの長いこの2人がそう言ってくれたのなら、オレの選択は間違っていなかったのかもしれない。

 まだ手探り状態だけど、真剣に凛太郎と向き合っていこうと思っているんだ。


「おれ、凛太郎くんに久しぶりに会いたいなぁ!」

「今日は、用事があるって言ってたんだよ。2人に報告するなら、凛太郎も同席してもいいかなって思って声をかけたんだけど」

「そうなの? 残念だー」


 オレたちは、2〜3ヶ月に一度くらいのペースで会っている。近況報告を兼ね、食事をしたり夜飲んだりしている。

 5年前のピクニックをきっかけに、星司(せいじ)月歌(るか)たちも呼んで、みんなで遊びに行ったりもする。

 その仲間に、凛太郎も入れてやりたいんだ。オレの友達はみんないいやつだし、とても居心地がいいんだって教えてやりたい。


「声だけでも、話したかったなー。ねぇ、太陽、今電話してみて?」

「え? 今か? ……わかった。ちょっとかけてみるか」


 麻琴の無茶振りに答えて、オレは凛太郎に電話をかけてみることにした。

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