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あれで付き合ってないの? ~ 幼馴染以上恋人未満 ~  作者: 一ノ瀬麻紀
太陽の話(スピンオフ2)

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15 あの言葉の意味

「あの時の出来事をきっかけに、僕は、太陽(たいよう)さんの隣に並んでも恥ずかしくないような、医者になろうと決めたんです」

「医者を目指すのはいいとして、オレの隣に並んで恥ずかしくないようにって……」

「あの日あの瞬間、ビビッときたんです。太陽さんは僕の運命だって」

「何言ってんだ? お前にはちゃんと……」

「太陽さん、僕の話をちゃんと最後まで聞いてくださいね。質問は後で受け付けます」

「ははは。なんだよ、それ」


 まるで会議の質疑応答は最後に……みたいなセリフに、オレは思わず吹き出してしまった。

 そうだな、黙って聞いてやるなんて言ったのに、口を挟むのはダメだよな。

 オレは、うんとうなずき、口をつぐんだ。


「太陽さんとの出来事の後、僕は父に話をしました。好きな人ができたから、その人に見合う男になりたい……本気で医者を目指しますって。そしたら、すごく喜んでくれたんです。父も気づいていたんでしょうね。僕が人生舐めまくっていて、つまらなそうにしていたことを」


 親って、見てないようでちゃんと見てくれてるんだよなぁ。うちの親も、普段は放任なのに、実家に帰るとそのことに気付かされるんだ。


 そんなことを考えていたら、ふとオレは気づいてしまった。

 凛太郎(りんたろう)がオレのことを好きと言ったところで、今は良くても未来はない。

 だってオレはベータだぞ? 子どもが欲しくてもその願いは叶えてやることはできないんだ。


 ただ、凛太郎には詩音(しおん)くんというオメガの婚約者がいる。だから、オレがそんな心配をする必要はないんだ。

 なのに、なぜか心にちくりと棘が刺さったみたいだった。


「それから僕は海外に留学し、必死に学びました。今まで何も考えずに過ごしていた人生を、取り戻すかのように無我夢中でした。大変でしたけど、太陽さんと一緒に働けるのを夢見て、頑張ったんです」


 凛太郎は、1人分空けて隣に座るオレの方をじっと見つめた。


「そして、日本の大学に編入しました。すぐにでも太陽さんに会いに行きたかったけど、日本でも1年頑張って、実習を一通り終えてから、やっと春岡クリニックの実習の時がやってきたんです」

「それで、あの勢い余って……みたいな感じだったんだな」


 オレは、実習初日のことを思い出し、ふふっと思い出し笑いをしてしまった。

 本当に、何が起きたのかわからなかった。あの時は会った記憶もないのに、距離を詰められ手を握られ、告白され抱きしめられ……。


「あの時は、本当にすみません。勢い余ったとしても、もう少し冷静になるべきでした。なのに、太陽さんはオレを避けることなく、優しく接してくれました。……やっぱり、太陽さんは全く変わってなかった。僕の憧れであり、好きになった太陽さんそのままでした」


 凛太郎のまっすぐな瞳が、オレを捉えた。その視線に釘付けになり、オレは凛太郎から目を逸らせなくなってしまった。


「これが、実習初日に『やっと会えましたね』と言った理由です。そして、『好きです』と伝えた気持ちも、嘘偽りはありません」

「……わかった。凛太郎からの話は、ここまでか?」

「はい。僕から伝えたかった、太陽さんへの気持ちは以上です」

「じゃあ、オレから聞かせてもらう」

「詩音のことですね」

「ああ……」


 凛太郎の気持ちもわかった。その上で、オレの気持ちを整理しようとも思った。

 けど、婚約者の存在があるのなら、オレの気持ちを整理しようがなんだろうが、意味のないことになってしまう。


「すみません。まず先に、誤解のないようにお伝えしておきたいのですが、詩音は婚約者じゃありません」

「……え?」


 単刀直入に「詩音くんは婚約者じゃない」と言われ、オレは戸惑ってしまった。

 その戸惑いも想定内と思っているのか、凛太郎は淡々と話を続けた。


「詩音は、家族ぐるみで仲の良い、僕にとっては可愛い弟なんです。うちの母も詩音のお母さんも、僕たちが一緒になったら嬉しいのにってよく言ってました。そしたら、詩音は親たちの言葉を信じてしまって、僕と婚約者同士だって思い込んでしまったんです。もっと早くはっきり言ってあげれば良かったんですけど、僕が留学して離れていて、寂しい思いをさせていると思ったら言えなかったんです」

「そうか、そんなことが……。とても素直そうな子だもんな」


 中には、オメガという性を武器のようにする者もいる。けど少し話をしただけでも、詩音くんはそういう子じゃないのは感じた。

 凛太郎は、兄として詩音くんと接していたつもりが、詩音くんはそうじゃなかったんだな……。


「僕は、太陽さん一筋なので、ちゃんと詩音と話をしてきました。かわいそうなことをしてしまったと思うけど、ごまかすのもあいつのためにならないし……。気持ちが落ち着くまでまだ時間はかかると思いますけど、あいつの兄として、見守っていきたいと思います」


 そう言って、凛太郎は小さく息を吐いた。

 可愛い弟へ思いを馳せているのかもしれない。


「詩音くんのことは、わかった。……けどオレはベータだぞ?」

「太陽さんが言ったんじゃないですか。バース関係ないって」

「いや、確かに言ったけどなぁ……」

「それにアルファは、オメガだろうとベータだろうと、自分がこの人だと決めた人には、全力でぶつかって行くんですよ」

「年齢だって10歳も違うんだぞ?」

「大丈夫です。太陽さんは『若々しい』ですから」


 凛太郎は、そう言って楽しそうに笑った。


「他に、太陽さんから聞きたいことはありますか?」

「いや、ないな。バースも年齢も関係ない、その人の中身をちゃんと見ろって言ったのは、オレだもんな」

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