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あれで付き合ってないの? ~ 幼馴染以上恋人未満 ~  作者: 一ノ瀬麻紀
太陽の話(スピンオフ2)

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11 お見舞い

 春岡先生に頼まれて様子を見にきたけど、詩音(しおん)くんがいるなら大丈夫か。でも、預かったこの荷物どうしよう。

 渡された袋を見つめ、オレはどうしたもんかと考え込んでいると、インターホン越しにもう1人別の声が聞こえてきた。


『詩音、誰と話してるんだ?』

『クリニックの方だって。心配で来てくれたみたいだけど、僕がいるから――』

太陽(たいよう)さん!』


 詩音くんの声を遮るように、オレを呼ぶ声がしたと思ったら、ガタガタっという音がしてその声が近づいた。


『太陽さん、来てくれたんですか! 今開けます!』

『えっ。僕がいるから大丈夫だって』

『わざわざ来てくれたのに、追い返すのは悪いだろ』

「春岡先生から、預かってきたものがあるんだけど」


 インターホン越しに何か話をしているので、オレは春岡先生に託された荷物があることを伝えた。


『ありがとうございます! エントランスのドアを開けるので、そのまま入ってきてください。入ってすぐのところにエレベーターがあるので、15階まで上がってきてください』

「ああ、わかった」


 エントランスから中に入ると、言われた通りエレベーターが見えてきた。ちょうど1階に降りていたのでボタンを押し中に入る。そこで15階を押そうとして、手が止まった。


「最上階じゃねーか」


 15階と言われた時点でもしかしてとは思ったけど、やっぱり思った通りだった。

 どこのお坊ちゃんだよって思ったけど、父親は医者で母親は看護師だと言っていた。親族も優秀なアルファが多く、医者とか会社経営していたりと金持ちが多いらしい。

 まぁ、本人から聞いたわけではなく、クリニックのスタッフが噂話をしていたんだけどな。


 部屋の前……と言っても、普通に一軒家みたいな玄関の前に立ち、しばし感心して周りを見渡した。金持ちってのは、やっぱり金持ちなんだな。

 玄関横にあるインターホンを押すと、待っていましたとばかりに、すごい勢いでインターホンから声がした。


『太陽さん!』


 おそらくモニター越しにオレの姿を確認したんだろう。オレの名を呼んだあと、玄関のドアが勢いよく開いた。


「こんばんは。凛太郎(りんたろう)……と、詩音くん」

「太陽さん、ささ、入ってください」

「あ! この前お会いした方でしたか。先日は、お気遣いいただきありがとうございました」


 凛太郎が、オレを早く部屋に招き入れたくてうずうずしている隣で、横に並んだ詩音くんは、ゆったりと挨拶をして深々とお辞儀をした。

 親御さんがしっかりとした方なんだろうな……と感心しながら、オレもそれに応えるように、お辞儀をした。


「この前は大丈夫だったかな?」

「はい、おかげさまで何もなく無事に帰宅できました」

「それは良かった」

「ありがとうございます。……あ、玄関先ですみません。どうぞ中にお入りください」

「あ、お邪魔します」


 凛太郎は、すぐにでもオレの手を引き寄せて、家の中に入れたいんだろうな。でも、ちゃんと詩音くんが対応しているから、グッと我慢しているのが伝わってくる。


「凛太郎は熱があるんだろ? オレはいいから、部屋で休んでろよ。詩音くんがいるから、大丈夫だろ」


 凛太郎のオレへの気持ちを知っているのに、少し意地悪を言ってしまっているなと自覚はあるけど、凛太郎は病人だ。健康な詩音くんがそばにいるなら、休ませるのは当然だと思う。


「……え。せっかく太陽さんがうちに来てくれたのに、僕、休まなきゃダメですか?」

「あのなぁ、頑丈なアルファでも、甘く見るんじゃないぞ。身体が何かしらのSOSを出しているんだ。……ほら、早く休め」

「はい……」


 まるで大型犬のように、さっきまで振っていたしっぽと、ピーンと立っていた耳が項垂れる。

 やっぱり、凛太郎が大型犬にしか見えないんだよなぁ。

 オレはクスッと笑うと、凛太郎の頭をポンポンと撫でた。


「元気になったら、どこか出かけようぜ」

「……え? いいんですか?」

「ああ、約束だ。だから、早くしっかりと治せよ」

「はい! 僕、今すぐ休みます!」


 凛太郎は病人なのに、すごい勢いで部屋に戻っていた。


「凛太郎くんと仲が良いんですね」


 オレたちのやり取りを静かに見守っていた詩音くんが、そう言いながらにっこりと笑った。


「可愛い後輩みたいなもんだからね」

「よかったぁ〜。僕、ちょっと心配しちゃったんですよ。凛太郎くんってば、太陽さんの話ばかりするから」

「そんなに?」

「そうですよ〜。僕という婚約者がいながら、凛太郎くんってばひどいですよね」


 詩音くんは、口ではひどいなんて言っているのに、笑って嬉しそうにしている。


「でも、実際お会いした太陽さんは、とても気遣いのできる素敵な方で、凛太郎くんが先輩推しになるのもわかる気がします」

「先輩推し……か」

「あれ? 違いました?」

「いや、そうだな。歳は離れているけど、可愛い後輩ができてオレは嬉しいよ。実習に来ていて、とても優秀だし、将来が楽しみだな」

「そうですよねー! 凛太郎くんは子供の頃からすごかったんです。幼稚園の……っと、すみません、電話がかかってきちゃいました」


 詩音くんは、そう言って自分のスマホを手に取ると、話をしながら隣の部屋に行ってしまった。


 ベータのオレでも、さすがにちょっと今のは、気持ちが揺らいでしまうかもしれない。

 オレのことを好きだと言ってくれた凛太郎のそばには、こんなに素直で可愛い幼馴染がいる。

 ちゃんと凛太郎の気持ちと向き合うと決めたものの、本当にそれは意味のあることなのだろうか。


 今日は、このなんとも言えない気持ちの置き場所に困ってしまって、電話中の詩音くんには悪いが、メモと春岡先生からの荷物を置いて帰ることにした。

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