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あれで付き合ってないの? ~ 幼馴染以上恋人未満 ~  作者: 一ノ瀬麻紀
太陽の話(スピンオフ2)

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06 待ち合わせ

『あの時の言葉……ですか』


 電話の向こうの凛太郎(りんたろう)の声が、小さくなった。

 初日のあの勢いはどこへ行ったんだろう。オレの口からは、ふっと笑いがもれた。


「そうだよ。いきなりオレを抱きしめて、言っただろ?」

『はい……言いました』

「それとも何か? あれは冗談だったと?」

『そんなこと!……そんなことあるわけないじゃないですか……』


 何を思って、凛太郎は躊躇しているのかはわからなかったけど、ちょっとオレも意地悪しすぎたかな。

 電話の向こうの凛太郎の声は、気のせいか少し震えているような気がする。


「意地悪言って悪かったな」

『いえ、僕も改めて、ちゃんと伝えたいなと思ってるんです。……ただ、ちゃんと会って、太陽(たいよう)さんの目をしっかりと見て、僕の思いを伝えたいんです』

「そうか。……そうだよな。大事な話だもんな」

『わがまま言って、すみません』

「いや、今の言葉だけでも、凛太郎の本気が伝わってきた。……オレも、ちゃんと自分の気持ちと向き合ってみるよ」

『……ありがとうございます』


 やっぱり、凛太郎は誠実なやつだ。初日のバグった距離感に焦ったものだけど、あれも凛太郎の強い思いの結果だったんだと思う。


 でも、やっぱり引っかかるのは、あの時の『やっと会えました』という言葉。

 もしかしたらどこかで会っているのかもと、あれからずっと考えているけど、思い当たる節がない。

 それも含め、近いうちに凛太郎の口から直接聞ける日が来るだろう。


 ……それまでに、オレも自分の気持ちと向き合っていかないとな。


「じゃあ、そろそろ寝るか。明日、17:00に駅前ロータリーな。遅刻すんなよ」

『はい、大丈夫です! 楽しみにしています!』

「おやすみ」

『太陽さん、おやすみなさい!』


 最後には、いつもの元気の良い凛太郎の声に戻って、通話を終了させた。



 次の日。オレは朝から何かソワソワして落ち着かなかった。

 普段は仕事帰りに特に用事があるわけでもなく、まっすぐ家に帰るのに、今日は夕方から出かける予定ができた。

 この用事は『仕事の一環』なわけだけど、一緒に行く相手は、オレに好意の目を向けてくれている凛太郎だ。

 昨日の電話のこともあるし、仕事のための外出とは割り切れずにいた。


 7:30。いつもの時間にクリニックに到着すると、当日順番待ちの紙を外に出した。

 うちのクリニックは、基本は事前予約だ。それに加え、当日予約の時間指定枠と順番待ちもできるようになっている。


 今日は土曜日なので、混雑するのは目に見えている。

 なのに、仕事に気持ちを切り替えようとしても、昨日の凛太郎の声が耳に残っていて、なかなかスイッチが入らない。


「今から仕事だぞ、しっかりしろ!」


 オレは両手で頬を叩くと「よしっ」と気合を入れた。



「お疲れ様でしたー。……あ、春岡先生、キッズスペースの件で、これから凛太郎とホームセンターに行ってきます」

「時間外に、ありがとうね。凛太郎くんにもよろしく伝えておいてね」

「はい、良さそうなものがあったら買ってきちゃいますけど、大丈夫ですか?」

「いいよ、君たちに任せているから」

「ありがとうございます。では、お先に失礼します」

「はい、今日もありがとうね、お疲れ様」


 オレは、春岡先生にあいさつをして、クリニックの外に出た。

 普段は最後まで残って片付けをしてから帰るけど、今日は凛太郎との約束があるので、少しだけ先に帰らせてもらった。



 一度家に帰り、支度をして約束の時間に間に合うように家を出た。

 いつもは悩まない服装など気にしたり、普段は適当に持ってるバッグを、もう少しだけ綺麗なものにしたり……なんか柄にもなく、この時間が少しだけ楽しく感じた。


 夕方の駅前ロータリー付近まで来ると、仕事帰りの人や学生たちで、とても賑やかだった。

 オレは車を寄せながら、凛太郎を探した。


「あ、いたいた」


 凛太郎は背が高いからよく目立つ。顔も整っていて、そういう意味でもとても目立つのだけど、今この時の周りからの視線は、多分そういうのと違った。

 なんだろう? と思ってさらに近づくと、人混みに隠れていて完全に見えなかった凛太郎の全身が見えた。――と同時に、凛太郎の腕に自分の腕を絡めた、小柄な男性も見えた。


「なんだ、あれ……」


 ほんの少し前まで、浮き立っていた心が、急にひゅっと冷え込んだ。

 友達……? にしても、あんなに密着して、距離感おかしくないか?


 オレは、自分の中に覚えのない感情がわき上がってきて、心の中で首をひねった。

 そして、心の中にとどまっているこの感情が何なのかわからないまま、オレは駐車スペースに停めて車を降りた。


 わかりやすいように軽く手をあげ、声をかけようとした瞬間、凛太郎と目が合った。オレはベータの平均身長だから、この人混みには紛れてしまう。なのに一瞬で気付くとは。


「太陽さん! こっちです!」


 いつもと変わらぬ様子で、笑顔を振りまいて手を振る凛太郎に、周りの人が一斉にオレを見た。うわ、やめてくれ、その、お前はこいつのなんなんだみたいな視線は。

 でもそれはそうか。少し前まで……というか今も、そばには親しそうに身を寄せる小柄な男性がいる。

 周りからすれば、オレの方が間男に見えるよな。


「待たせたな。……ところで、こちらの方は?」

「ああ、こいつは……」


 オレの問いかけに、凛太郎が答えようとした途端、隣にいた小柄な男性が、ぐいっと前に出てきた。


「こんにちは! 僕、凛太郎くんの婚約者の雪村 詩音(ゆきむらしおん)です!」

「……え?」

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