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あれで付き合ってないの? ~ 幼馴染以上恋人未満 ~  作者: 一ノ瀬麻紀
太陽の話(スピンオフ2)

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04 連絡先の交換

 クリニックに戻ったオレたちは、午後の診察前、春岡先生にキッズスペースの話をした。

 春岡先生もこの案に賛成してくれ、凛太郎(りんたろう)に任せると言ってくれたので、2人で考えることになった。


「段差があると、転んでしまった時に危ないと思うんです。でも、あまり凝ったものを作ると金額も高くなってしまうし。置き畳なら、段差も少なくてクッション性もあるし、良いと思うんですけど」

「あー、敷くだけの畳か」

「そうです、ネットで調べると、いろいろと載ってるんですよ。キューブブロックというものもあったけど、キッズスペースの周りはクッション性がないので、ブロックから落ちたら危ないかなって思って」


 凛太郎はいろいろと説明しながら、スマホ画面を見せてくれた。

 ほー、みんな、いろいろと工夫してるんだなぁ。


「これなら、ホームセンターで買えますし、気軽にキッズスペースを作れると思います。……どうですか?」

「そうだな、良いんじゃないか? この案を、春岡先生に言ってみろよ」

「はい!」


 春岡先生は、凛太郎に任せるって言ったんだから、オレに確認せず、直接言いに行けばいいのに。……そう思ったけど、頼りにされているようで、悪い気はしなかった。


 改めて春岡先生に詳しい提案をして、許可を得てから、周辺の写真を撮りサイズを測った。

 これで準備は万端だ。……そう思ったところでふと気がついた。


「なぁ、凛太郎は明日何か用事はあるか?」

「明日、ですか?」

「今日の診察が終わってからじゃ遅いし、明日の診察が終わってからなら、時間があるかなって思って」

「ええ、大学も休みですし……」


 凛太郎は初め、頭の上にハテナがポンと浮かんでいるような顔をしていたけど、だんだん期待をしたような表情に変わっていた。


「じゃあ、用事がないなら、ホームセンターに行ってみるか」

「え? 良いんですか!?」

「良いんですかも何も、オレの方が聞きたいくらいだよ。休日にまで実習内容を持ち込むのは、普通だったらやらないだろ?」


 提案したものの、やっぱり学生を引っ張り回すのはよくないかと思い直そうとしたら、凛太郎はグッと距離を詰めた後、オレの手をガッと掴んで両手で包み込んだ。


 ……ん? デジャブか? 実習初日にも、同じような体験をした気がするんだけど……。

 オレはぐいっと距離を詰めた凛太郎をじっくりと眺め、苦笑いした。


「行きます、行きたいです、行かせてください!」


 苦笑いしているオレにはお構いなしに、興奮した様子で、凛太郎は二つ返事……違うな、三つ返事で承諾した。


「わかった、わかったからちょっと離れろって。近すぎるんだよ、お前は」

「僕の喜びを、全身で現しているんです!」

「そんなに興奮すんなって。大型犬がしっぽをブンブン振ってるみたいだぞ」

「大好きな太陽さんとのお出かけですよ? 興奮しないでいられますか! 今なら僕、犬の気持ちが分かりそうです!」


 犬の気持ちが分かりそうとか、何わけのわかんないこと言ってんだよ、こいつは。

 呆れてものも言えない……とは思ったけど、でもなんだか憎めないんだよなぁ。


 実習初日と同じように、距離感バグって近づいてきているのに、あの時とは全く違った。

 不思議なもので、凛太郎の人となりが見えてきた今は、不覚にも何か可愛いとさえ思ってしまったんだ。


「出かけるなら、連絡先の交換をしないとな」

「ええっ!? ちょっと待ってください、今なんて言いました?」

「いや、ほら、一緒に出かけるなら連絡先――うをっ!」


 連絡先の交換をしないとな。と、最後まで言い終わらないうちに、オレは凛太郎に抱きつかれていた。


「なんて僕は幸せ者なんでしょう! 太陽さんと一緒に出かけられるだけでなく、……まさか、連絡先の交換までできるなんて! どうしよう、幸せを全部使い果たしちゃったのかな?」

「……は?」

「大好きな太陽さんと、こうやって一緒に過ごせているだけでも奇跡なのに、プライベートまで一緒に過ごせるんですよ? こんなことって、ありえないじゃないですか」

「わかったわかった。奇跡だな、うん。んで、交換するのしないの?」

「します、もちろんします! ダメと言われても交換します!」


 初日こそ、距離感バグった変なテンションのやつだと思ったけど、それ以降はいたって普通だったんだ。

 実習生としても優秀だし、気配りもできるし、コミュニケーション能力も高い。

 ……なのになんだ、今の凛太郎は。

 何かのネジが外れてしまったようなテンションに、オレはとうとうおかしくて笑い出してしまった。


「何さっきから言ってんだ、お前は。……でもなんか、すごく楽しそうでよかったな」

「はい、僕は今とっても楽しいし、嬉しいし、幸せです! ほら、しっぽ振ってるの見えるでしょ?」

「わかったから、早くしっぽしまえ。もうすぐ午後の診察が始まるぞ」


 オレをぎゅーっと抱きしめている凛太郎の背中を、ポンポンと軽く叩くと、離れるようにうながした。


「うー、もう少しこうしていたいですー」

「オレは午後の準備をしたいんだ。お前もやることあるだろ?」

「そうですね、仕方がないです……」


 凛太郎は名残惜しそうにオレから離れると、じーっとオレを見た。

 やっぱり、ぺたんと伏せた耳としゅんと垂れたしっぽが見えるようだった。


「ほら、スマホ出せよ。連絡先交換できないだろ?」

「ハイっ!」


 再び凛太郎の耳はピンと伸び、しっぽがブンブンと大きく揺れた。

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