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あれで付き合ってないの? ~ 幼馴染以上恋人未満 ~  作者: 一ノ瀬麻紀
太陽の話(スピンオフ2)

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02 相談

 実習初日以来、凛太郎(りんたろう)は何もアクションを起こしてこない。

 なんならあれはオレが見た変な夢で、凛太郎との関係は実習生と指導係、それ以上でもそれ以下でもない。  

 ……もし本当にそうだったら、どんなに気が楽だったか。


 けれど、あの日の言葉も、抱きしめられたぬくもりも、どうしても消えない。

 1ヶ月たった今も、忘れようとしても、ふとした瞬間に思い出してしまう

 忘れたふりをして普通に接しているけど、心のどこかでずっと引っかかっていて、そんな自分に戸惑っていた。


 凛太郎は、今まで春岡クリニックにやってきた実習生の誰よりも優秀だった。

 求められること以上にこなすし、さりげない気遣いもできる。

 その上、爽やかアイドル系イケメンで、背も高いしスタイルもいい。

 どこにでもいるベータのオレにとっては、羨ましい限りだ。


 そんな、非の打ちどころのないような男が、なんでオレにあんな態度を取ったのか。

 今さら問いただすこともできず、心の奥底にモヤモヤを抱えたまま、ただ日々を過ごしていた。



 数日後、ひとりでモヤモヤを抱えたところでどうにもならないと思い、友人2人を呼び出した。


「……というわけなんだ」


 オレは麻琴(まこと)からの質問攻めを交わしながら、蒼人(あおと)にことの成り行きを話した。

 2人セットだから、麻琴も同席しているが、正直相談相手としては期待していない。酷い話だと思うけど、仕方がないんだ。


 蒼人はオレの話を一通り聞くと、「なるほどな」と呟いてうーんと唸った。

 その隣で、同じようにうーんと何やら考え込んでいた麻琴が、「あ、そうだ!」と言って、ポンと手を打った。


「ねぇ、蒼人。春岡先生のところに来てる実習生ってさぁ…」

「実習の時期だからな。あちこちの総合病院や個人院には、実習生がたくさんだろ」

「うん、そうだねぇ。そうだよねぇ。もしかしたらって思ったけど、違うかぁ」


 目の前の2人のやり取りに、オレは首をかしげた。

 何やら意味ありげな会話にも聞こえるが、でも麻琴の言うことだから、きっと大したことはないんだと思う。

 現に、蒼人は普通の反応を返している。もしここで何かあるのなら、多少は慌てたりするだろう。


太陽(たいよう)も大変だな、自分の仕事に加えて実習生の面倒まで見てるんだから。その上……」

「まぁな」


 蒼人が言いかけた言葉に、オレは苦笑した。

 うん。初対面のはずの実習生に、いきなり告られたんだもんな。大変と言わずしてなんと言うのだろう。


「でも、あいつが、優秀なやつであることには間違いないよ」

「そうか。……まぁ、頑張れよ」

「ああ」


 蒼人が労いの言葉をかけてくれる横で、麻琴は再び目をキラキラと輝かせた。


「太陽がそう言うなんて、おれ、会ってみたいなぁ!」

「タイミングが合えばな」


 オレは、社交辞令みたいな返事で、話を濁した。

 だって麻琴には「タイミングが合えば」なんて言ったけど、勤務先に来ている実習生を、どのタイミングで紹介するって言うんだ。

 可能性があるとすれば、麻琴が春岡クリニックを受診する時くらいか? でもそんな仕事中に、紹介なんてできるわけないし。

 だからおそらく、麻琴の願いは叶わない。オレは、それでいいと思ってるけどな。


「話戻すけどさ、こういう時、オレどういった態度取ればいいと思う? 今までこんな経験ないし、わけわかんなくてさー」


 まだ事情を話しただけで、なんの解決にもなっていない本題に話を戻した。

 その直後に、麻琴が首を捻りながら、蒼人の顔を見てからオレの顔を見た。


「ねえ、なんで本人に聞かないの? 太陽から聞けばいいじゃん!」


 蒼人の膝の上に乗ったまま、身を乗り出した麻琴は言った。

 まっすぐオレを見つめる瞳は、なんでそんな簡単なことに気付かないの? とでも言っているような気がした。


「太陽は聞けないから、俺たちに相談してるんだろ」


 蒼人は当然のことのようにさらりと言うと、前のめりになっていた麻琴をぐっと引き寄せ、膝の上にしっかり座り直させた。


「えー。そんなの、太陽らしくないじゃん!」


 麻琴が抗議するように口を尖らせて言うと、蒼人は「たしかに」と、ボソッと呟いた。


「だろー? ハッキリ聞いて、スッキリしちゃえばいいよ!」


 名案を言ったとばかりに、ニコニコご満悦な麻琴は、ワクワクした様子でオレが口を開くのを待っていた。

 止めてくれると思っていた蒼人までも、「たしかに」と同意してしまったものだから、麻琴を止めるものはこの場からいなくなってしまった。


 麻琴には、1ミリも他意がないのは分かっている。

 生まれたその瞬間から蒼人がそばにいて、守られ生きてきた。蒼人だけじゃなく、麻琴の周りは驚くほど過保護で、オレも例外ではない。


 そんな風に生きてきた麻琴は、ほんと純粋で、無垢で、素直すぎる。時々心配になるくらいだ。

 まぁ、蒼人がそばにいるから、変なやつは寄ってこないだろうけどな。

 オレは思わずそんな場面を想像して、ひとり心の中で肩をすくめた。


「麻琴が言うほど、簡単なことではない。でも間違ってはいないと思う。相手の行動からして、冗談とは思えない」

「そうか、蒼人も冗談とは思わないか」

「もし冗談なら、もっとうまくやると思う」

「冗談なら、もっとうまくやる、か」


 オレは、実習初日の、凛太郎のあの真剣な眼差しを思い出していた。


「それだけストレートに思いをぶつけて来たのなら、太陽もしっかりと話を聞いて、それから自分の気持ちと向き合うべきじゃないか?」

「そう、だな……」


 蒼人の言葉に、オレは天を仰いでため息をついた。

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