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あれで付き合ってないの? ~ 幼馴染以上恋人未満 ~  作者: 一ノ瀬麻紀
太陽の話(スピンオフ2)

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プロローグ

太陽スピンオフについて


星司と月歌に続き、今度は太陽のスピンオフです。

こちらについては、単独で読んでも分かるようになっていると思いますが、オメガバースの説明などは省略されています。

基本的には、本編を読んでいただいたあとの番外編の扱いなので、説明不足と感じたりするかもしれません。

本編主人公、麻琴と蒼人も出てくるので、多少のネタバレにもなっています。

ご理解いただいた上で、読んでくださると嬉しいです。よろしくお願いします。

「オレ、告白されたんだ」

「えっ?」


 ゴールデンウィーク明けのバカみたいに忙しい一週間を乗り切り、なんとかたどり着いた週末。

 生まれて初めての出来事について相談したくて、中学時代からの友人を呼び出した。


「誰に? おれの知ってる人? どんな人? 何歳?」

「おい、麻琴(まこと)。畳み掛けるように質問するな。ちゃんと太陽(たいよう)の話を聞け」


 目をキラキラさせて、期待の眼差しでオレを見つめるのは、中学からの親友の森島麻琴(もりじままこと)。それを制して大人しくさせようとしているのが、同じく中学からの親友で麻琴の夫の森島蒼人(もりじまあおと)

 オレたちは、卒業後も頻繁に連絡を取り合う仲間だ。


「先月から実習に来てるやつなんだけど」

「実習って、学生? え、年下じゃん! ベータなの? それともアルファとか?」

「こら、麻琴」


 蒼人は、身を乗り出す麻琴を捕まえると、自分の膝の上に座らせ優しく抱きしめた。

 そんな二人の様子を見て、オレは相変わらずだなぁと、嬉しくなった。

 今は夫夫(ふうふ)だし、自然な行動かもしれないけど、こいつらは中学の時……付き合っていないうちから、距離感がバグっていた。


 けど、こんな光景は羨ましくもあり、いつかオレにもそんな相手が現れるのかな? なんて考えた時期もあった。

 なのに気付けばもう32歳。オメガなら結婚適齢期を意識する頃。

 ……まぁ、オレはベータだからそんなことも考えずに、のんびり生きてきたんだけど。


 そんなオレの毎日が大きく変化したのは、桜の花がほとんど散り、若葉が芽吹き始めた4月なかばのことだった。



「あ、太陽くん、ちょっと」

「はい」

「今度実習生が来るから、色々と教えてあげて欲しいんだ」

「実習生なんて久しぶりですね」

「後輩から頼まれちゃってね。優秀なアルファの子だから、そんなに気負わなくても大丈夫だと思うよ」

「わかりました。任せてください」

「うん、頼りにしてるよ」


 数日前、院長に呼び止められたオレは、実習生の面倒を見るようにと頼まれた。

 オレの勤める「春岡クリニック」はバース専門病院で、軽い風邪の治療からマッチング相談、オメガのシェルターなど、アルファとオメガについて幅広く対応している。


 ベータのオレがバース専門看護師を目指そうと思ったのは、中学生の頃に出会った麻琴と蒼人の影響だ。あいつらを見ていたら、第二の性について、もっと深く知りたいと思ったんだ。


 それでもやっぱり、オレはベータ。どれだけ寄り添っても、本当の気持ちをわかってやれない。

 けど、ベータのオレだからこそできることがあると信じ、日々頑張って働いている。

 色々と大変なことはあるけど、まぁ、穏やかに日々は過ぎていたんだ。


 ――あいつがこのクリニックに来るまでは。


今宮凛太郎(いまみやりんたろう)です。よろしくお願いします」


 爽やかイケメンというのは、こういう奴のことを言うんだろうな。

 平凡な顔立ちのベータのオレは、少し妬ましい気持ちを抱えつつ、目の前で笑顔を振り撒くイケメン実習生を眺めた。


「凛太郎くん、よろしくね。……今日から君のお世話をするのは、天間太陽(てんまたいよう)くん」

「天間太陽です。一緒に働くのを楽しみにしていたよ。よろしくね」


 春岡先生からの紹介を受け、オレは一歩前に踏み出すと、手を差し出した。

 爽やかイケメンが羨ましいのも、一緒に働くのを楽しみにしていたと言うのも本音だ。


 本来実習というのは、大学が連携している総合病院で行うことが多い。けど、バース科という特殊な実習は、学校指定外の病院で行うことも可能とされている。

 オレも、ここ、春岡クリニックの実習でお世話になったのが縁で、働き始めて十年が過ぎた。

 

「太陽さん! よろしくお願いします!」


 凛太郎は、差し出したオレの手を両手で包み込むと、さらにぐいっと距離を詰めた。

 え? なんだこの距離感は?

 違和感を少し覚えたものの、オレは包容力のある先輩だとアピールするように、にっこりと優しく微笑んだ。


「じゃあ、とりあえず先に着替えようか。更衣室に案内するからついてきて」

「やっと会えましたね!」

「……え?」


 さらに拳ひとつ分の距離まで顔を近づけた凛太郎は、唐突に変なことを言い出した。

 案内するからついてくるように言っただけなのに、噛み合わない反応にオレは首を捻った。


 やっと会えましたね……?

 まるで以前にも会ったことのあるような口ぶりに、記憶の糸を辿ってみたものの、どうしても思い出せない。もしかして人違いをしているのだろうか。

 

「おい、ちょっと近いんじゃないか? んでさぁ、オレたち初対面だよな? 誰か他の人と勘違いしてないか?」

「一緒に働ける日をどんなに待ち望んだか!」


 凛太郎の思い違いだと訴えているのに、こいつはさっきから全く人の話を聞かない。

 こうなると何を言っても無駄だろうと悟ったオレは、凛太郎の肩を掴むと、ぐっと距離を取った。


 こんなやりとりをしている時間はない。

 とにかく任務を遂行しようと、その場を離れ更衣室に向かおうとした。

 けど――。


「好きです、太陽さん!」


 目の前の笑顔がますます輝いたかと思うと、オレは突然、凛太郎に思い切り抱きしめられていた。

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