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あれで付き合ってないの? ~ 幼馴染以上恋人未満 ~  作者: 一ノ瀬麻紀
星司と月歌(スピンオフ)

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13 実家へ

 散々話し合った結果、僕たちはおじい様に会いに行くことにした。

 逃げるように家を出てしまった僕たちだけど、おじい様が望むのなら、やはりひ孫である雪夜(ゆきや)に会わせたいというのが、一番の理由。親の都合で会わせないというのは、勝手すぎると思うから……。


 約束の日。雪夜を連れての移動ということで、余裕を持って電車でゆっくり行くつもりだったけど、おじい様から迎えの車が来ていた。幼子を連れての移動は大変なので、迎えがあるのは正直ありがたかった。


 僕たちが星司(せいじ)くんの家の敷居をまたぐのは、六年ぶりになる。相変わらずのどっしりとした門構えに、僕はどんどん緊張が増していった。

 門の呼び鈴を鳴らすと、「お待ちしていました」と、お手伝いさんの声がして、中に案内された。

 中に入ると、玄関でおじい様が出迎えてくれた。お顔を見るのは久しぶりだけど、相変わらず凛々しく頼もしいお姿をしていた。


「……お久しぶりです、おじい様。長い間、ご無沙汰して申し訳ありませんでした」


 深々と頭を下げる星司くんの横で、僕も「お久しぶりです」と言いながら頭を下げた。雪夜を抱っこしているので、会釈程度になってしまったけれど。


「よく来てくれた。さぁ、みんなが待っている。中へ入ってくれ」


 おじい様はそう言ったあと、僕と雪夜の方へ視線を落とした。


月歌(るか)くん、その子が雪夜くんかい?」

「はい。……あの……抱っこしていただけませんか?」


 僕は、星司くんと二人逃げるようにこの家を出てしまったという負い目はあるけれど、こうやって穏やかに声をかけてくださるおじい様に、ぜひ雪夜を抱っこしてもらいたいと思った。


「ありがとう。でもここでは寒いから、暖かくしてある部屋で抱っこさせてもらうよ」


 おじい様は、玄関先では寒いからと、部屋の中に入るように促した。僕も星司くんも、おじい様のあとについて廊下を進んでいった。

 客間の前にたどり着くと、おじい様は「入るよ」とひと声かけて、静かに襖を開けた。


 部屋に入った僕たちは、目の前で待つ人たちを見て、一瞬動きを止めた。

 今日僕たちは、おじい様と会う約束をしてここへきている。もちろん、実家に帰るということは、他にも身内がいるということだ。

 けれど、いざ佐久(さく)家へ再び足を踏み入れたその先で、見慣れた顔が並んでいると、再会の喜びよりもまず先に気まずさが勝ってしまった。


「お母さん……」

「父さん、母さん」


 案内された客間で待っていたのは、星司くんのご両親と、僕のお母さんだった。

 ちゃんとあいさつをしなければいけないのに、その先の言葉に詰まってしまい、困った僕は星司くんを見た。

 星司くんはそんな僕を見て、うんと小さくうなずくと、客間で待つ星司くんのご両親と僕のお母さんの方へ視線を戻した。


「ご無沙汰しています。長い間連絡もしないで、申し訳ありません」


 二人で頭を下げると、客間の方からすすり泣く声が聞こえてきたので、びっくりして顔を上げると、僕のお母さんがハンカチで目元を押さえていた。


「さぁ、そこでは寒いだろう。中に入って」


 立ち止まってしまっている僕たちを見かねて、おじい様は中へ入るように言ってきた。せっかく温めた部屋に冷たい空気が流れ込んでしまう。僕たちははっと気付いて、部屋に足を踏み入れた。

 そして座布団の上に座ると、改めて皆に向かって頭を下げた。


「逃げ出すようにこの家から出ていってしまったのに、再び足を踏み入れて良いものかと、二人で散々悩みました。けれど、おじい様からお手紙をいただき、この機会を逃したら、会えないかもしれないと考えたのです。私たちだけならそれでも良かったかもしれません。けれど、雪夜も生まれました。だから、この子の顔を見せたいと考えるようになったのです」


 星司くんは、僕の腕の中で気持ちよさそうにすやすやと眠る雪夜の頭をそっと撫でた。

 優しいほほ笑みを浮かべる星司くんの顔と、安心しきって寝ている雪夜の顔を見ていたら、緊張で固まっていた僕の体が、ほっと緩んだような気がした。

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