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あれで付き合ってないの? ~ 幼馴染以上恋人未満 ~  作者: 一ノ瀬麻紀
番外編 1(本編を先にお読みください)

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夏祭り 2(蒼人視点)

 背中におんぶされながらも、初めて見るものばかりなのか、あれ何? とか、すごいねーとか、ずっと話しかけていた麻琴(まこと)が、急に静かになった。……と同時に、背中に重みが加わったような感覚があった。

 あれ? と思って、麻琴? と呼びかけるけど、返事がない。そのうち、すーすーという寝息が聞こえてきた。

 

「はしゃぎ過ぎて、疲れちゃったんだな」

 

 慣れない浴衣と下駄での外出。お祭りという気分が高まる空間。

 七夕に二人で浴衣を着て、お祭りに行って花火を見る計画が叶わなかったし、リベンジ温泉旅行では、麻琴を無理させすぎて二日目に計画していた観光がキャンセルになってしまった。

 

 今回こそはと計画した旅行。二人で浴衣を着てお祭りにくり出す……まではリベンジ出来たから、今夜の花火を一緒に見られたら完璧だ。

 七夕の時も、麻琴が怖がらずに花火を見られる宿を予約していたのに、行くことは叶わなかったから、今度こそはと思っている。

 

 ……なのに、背中ですーすーと気持ちよさそうな寝息を立てる麻琴に、どうしたもんかと考えながらも、とりあえず宿まで寝かせたまま戻ることにした。

 

 麻琴をおんぶしたまま宿へ戻ると、あらあら……と言いながら女将さんが急いでやってきたので事情を話すと、奥から絆創膏を持ってきて、手際よく手当をしてくれた。

 

「んー? もうあさぁ~?」

 

 背中から、なんとも間の伸びた可愛らしい声が聞こえてきた。女将さんが足を触っていたからか、麻琴が目を覚ましたようだった。

 

「お目覚めですか? お部屋に案内しますね」

 

 女将さんに声をかけられると、「えっ」っと声がしたと思ったら、背中でジタバタと暴れ出した。

 

「わっ! もう宿に着いてたんだね! もう、蒼人(あおと)、なんで起こしてくれないの!?」

 

 ワーワーと騒ぎながら背中から降りようとするけれど、構わずそのまま女将さんの案内で部屋まで向かった。

 

 部屋へ入ると、目の前には湖が一望でき、あたり一面夕焼けに染まっていた。

 夕焼けに染まる景色を見ながら先に軽く汗を流し、部屋着として用意されていた浴衣に着替えた。

 そしてテーブルの上には、ポツンと置かれたりんご飴。

 

「もうすぐ夕飯だけど……せっかくお祭りで買ったから食べたいな」

「そうだな。半分食べて、のこりは明日の朝にしようか」

 

 俺の提案に、麻琴は嬉しそうに頷いた。

 

「では、いただきまーす」

 

 りんご飴を目の前にしてキラキラ目を輝かせていた麻琴は、満面の笑みでひとくちガブリ。

 

「飴のところ、美味しいー。でもまだりんごに届かないよ?」

 

 困ったように言いながら、何度かハムハムとかじると、上手に飴とりんごを食べることができたようだ。

 

「んーっ! おいひーっ」

 

 口の周りを真っ赤にして、満足そうにパクパクと食べ進めていた麻琴は、4分の1程度食べたところで、ふぅ……と息を吐いた。

 

「美味しいけど、夕飯食べられなくなっちゃうから、もうやめとく」

 

 口のまわりに付いた飴をペロペロ舐める様子に、俺はゴクリと喉を鳴らした。

 いや、ここで手を出しては駄目だ。花火を見るまではだめだ。

 心を無にして「俺も」と、りんご飴を同じく4分の1程度食べた。

 

「うん、美味しいな」

 

 半分ほど残し、次の日に食べようと冷蔵庫にしまった。

 

 少しの間、風景を楽しんだりしながら部屋の中を見て回っていると、程なくして夕飯が運ばれてきた。

 

「うわぁー! すごい、美味しそう!」

 

 夏祭り御膳というらしい。地元で取れた食材をふんだんに使った、涼を感じることの出来るメニューで、食べ切れるのか心配になるほどのボリュームだ。

 

 麻琴は楽しそうに料理の写真を何枚か撮ると俺を手招きして、仲良く並んで自撮りで料理も込みで記念撮影をした。

 

「いただきまーす」

 

 手をパチンと合わせると、再び目を輝かせて、箸を手にした。俺もそんな嬉しそうな麻琴を眺めながら、料理をいただくことにした。





 美味しく夕飯をいただき、片付けも済み、布団も敷いてもらった。


 あとは花火だけだと思いながら時計を見ると、19時30分を示していた。花火の打ち上げは20時からだったはずだ。

 

「最初は部屋で窓を閉めて花火を見る?」

 

 花火の大きな音を克服したわけではないから、まずは部屋での鑑賞を提案してみた。

 おれとしては、露天風呂でイチャイチャしながら花火を見たいところだけど……。

 

「うーん……。でもせっかくだから、露天風呂に入りながら見たいなぁ」

「でも、打ち上げ時間は1時間程度らしいよ?」

「そんなに長いの? そしたらおれふやけちゃうなぁ」

 

 ちょっと困ったように、くしゃりと顔を崩す麻琴が可愛い。

 

「まずは部屋で窓を閉めて、次に窓を開けて、大丈夫そうなら露天風呂で見るのは?」

 

 ゆっくり段階を踏んでいけば、少しずつ音にも慣れるだろう。

 

「うん、そうだね」

 

 俺の膝の上で、どんな花火だろうねとワクワクした様子で話す麻琴が可愛くて、俺はうんうんと相槌を打ちながら、話を聞いていた。

 

 ドーン

 

 予定時刻になり、大きな音とともに夜空に大輪の花が咲いた。

 窓を閉めているおかげか、花火が連続で打ち上げられても大丈夫なようだ。

 夜空が大きな花火で色づくたびに、歓声をあげる。

 

「すごい、すごーい! ねぇねぇ、蒼人!  窓開けてもいい?!」

 

 目を輝かせて振り返った麻琴の笑顔は、どんな花火よりもきれいだ。

 

「麻琴が大丈夫なら、窓を開けてみよう」

 

 大丈夫かな? と心配しつつ、ゆっくり窓を開けてみた。ドーンと打ち上げる音に、ちょっとびっくりしながらも、更に迫力を増した花火に、再び大きな歓声をあげた。

 

「わぁぁぁぁ! すごいよ! 音が大っきくなったら、なんか、バーンってすごいの!」

 

 人間は、興奮すると語彙力を失うのだろうか。

 麻琴の言葉は、まるで幼稚園児のようになっていたが、それもまた可愛い。

 

(続)

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