序章 ──終焉と祈りのその先に
皆様お疲れ様です。初めての投稿です。
PCでの編集にしており、スマホ等でどんなふうに掲載されるのか現在全くわかりませんw
まだまだ続きますので、各務家をよろしくお願いいたします。
私は──各務佐奈。
三十八歳の、どこにでもいる平凡な主婦だった。
特別な才能も、特別な信仰もなかった。
それでも、私には世界にたったひとつの宝物があった。
──家族だ。
優しい夫の真一、わんぱくだけど心根の優しい息子の真人、
そして、いつも笑顔をくれる娘の陽菜。
忙しいけれど笑いの絶えない日常。
クリスマスにはケンタッキーを囲み、
正月は近所の神社にお参りする程度の、いわば“普通”の家庭。
けれど、それが──私にとって何よりも尊い幸せだった。
……それが、ある日突然終わりを告げた。
それは、突如日本海に現れた一本の光の柱から始まった。
夜空を貫き、海を沸騰させ、世界中の人々の視線を釘付けにしたその光は、
まるで天から落とされた審判のようだった。
「専門家は“自然現象の一種”と分析していた」と、メディアは言った。
だが──私の胸は、理由もなく冷たいもので締め付けられていた。
その直感は、悲しいほどに的中する。
数日後、未知の病。
──通称“C菌”と呼ばれるそれは、世界を覆い始めた。
発症すれば、高熱、咳、吐血。
そして……死。
日本だけじゃない。
世界中に次々と光の柱が現れ、そして感染は瞬く間に拡大していった。
人は倒れ、街は静まり、声が消えていった。
──そして、私の家族にも、その時が訪れた。
夫が最初に倒れた。
病院に行く時間も、余裕もなかった。
やがて真人が、そして陽菜までもが、布団の中で苦しみ始めた。
私は何もできなかった。
薬も、医者も、救急も──誰も、何も、もう機能していなかった。
時間は過ぎ、音もなく、家は静まり返った。
私の膝には、夫の頭が乗っている。
最期の膝枕だ。
かつては頼もしく感じた夫の体が、今はただ、静かで、重くて、冷たい。
右手には、もう動かない真人の手を。
左手には、陽菜の冷たくなった小さな手を握っていた。
……最後まで、私は手を離さなかった。
咳が止まらない。
喉が焼ける。
吐いた血が、夫と子どもたちの頬を濡らす。
視界が暗くなっていく。
それでも──
(もう一度……家族と、生きたい)
声にはならなかったが、魂の底から、私はそれだけを願った。
愛していた。
この平凡な日々を、何よりも、私は大切にしていた。
だからこそ、私は──祈った。
神様でも、奇跡でも、何でもいい。
誰にともなく、私は祈った。
もう一度、家族と、笑い合えるのなら……。
* * *
その祈りを、聞いた存在がいた。
場所は、時空の狭間。
神々の集う、空の庭。
「……これは、ひどい有様だ」
ひときわ大きなため息をついたのは、地球の守護神。
いかにも中間管理職といった疲れ切ったスーツ姿で、
重そうな書類の山を前に頭を抱えている。
「……こんなに死んじゃって……また対応遅れたって叱られる……」
空を見上げれば、異世界の神々がざわざわと集まってくる。
「カクガミ様、また世界ひとつ終わったんですか~?」
「こっちの勇者、足りてないんですよ~。誰かくれません?」
「そっちから渡ってくる子たち、最近特に優秀で助かってますよ~」
カクガミは深々とため息をつく。
「人間はね、神をあまり信じないけど……
それでも、時々とんでもない“願い”を飛ばしてくるんですよ」
彼の前に、ひとつの光が浮かぶ。
それは──佐奈の祈りだった。
「この家族──各務家というんですが、特別信心深いわけじゃありません。
初詣も行くし、クリスマスにはチキンを食べる。
でもね、日常を大切にしていたんです、” 今ある幸せ ” を。
失ってはじめて気づくような、そんなものを、ちゃんと毎日感じていた」
カクガミは目を細める。
「だからこそ……僕は、この家族を助けたい。お願いできますか?」
異世界の神々は顔を見合わせ──
「いいでしょう」
「その家族、面白そうだし」
「うちの世界にひとりずつ振り分けて導いてみます?」
異世界の神々は快く応じてくれた。しかし・・・
「いや、今回は同じ世界にしてください。
まだ魂が幼いし、できる限り支え合えるように」
「あー、それじゃ……エレゼアにしますか?
ちょうど守護精霊の輪が広がってきてるし、馴染みやすいかも」
「了解。それぞれの役割は、こちらで調整しますね」
ひとつ、またひとつ。
神々が手を取り合い、運命の再構築が始まる。
「さあ、もう一度チャンスを。
この小さな家族には、きっと世界を変える何かがある」
カクガミは、そっと目を閉じて、光の中へと手を伸ばした。
こうして──四つの魂は、それぞれの姿で、
新たな世界へと旅立っていった。
姿も、力も変えて。
もう一度、めぐり逢うために。
なんだろう。地球で各務家だけ助かったみたいな感じになっちゃったけど、本当はね、八百万も神様いるから、それぞれのお得意さんの世界に生まれ変わってる的な感じもしてるんですよ。私神じゃないので、希望的観測ですが。
カクガミ「そうですね、私以外にも神的な方々がいますので各々動いているかもしれませんね」
なるべく早く、次の話を出します。