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06:解雇理由と転生について

 ゴブリン討伐依頼達成から数日経った今。

 俺はユウキが走り去る際に開けっ放しにした扉から目をそらし、天井を見上げて溜息をついた。


 ユウキについて色々と検討したが、やはりパーティーから外れてもらったほうがお互いのため、と結論に達した。

 一番の理由としては、補助術師としての実力が、これから昇格するBランクの依頼をこなせるレベルに達していないことにある。

 現にゴブリン討伐依頼でも、補助魔法の効果時間を把握していなかったせいで、ヒューが怪我をした。戦闘中に正確に時間を計測しておくことの難しさは理解しているが、他のBランク以上のパーティーの補助術師の話をきくと、そういったことはできて当然らしい。

 しかも、こういったことが起きたのは先の依頼の時だけではない。三か月ほど前から、似たような件は複数回起きたのだ。そのたびに警告したにもかかわらず改善が見られなかった。

 それでも、他の側面で強味があれば、パーティーに残ってもらうのを検討できた。しかし、作戦の立案や経理などの事務作業にも積極的に関わらないし、薬草や偵察など戦闘面以外の冒険に有用な知識もない。

 さらに、近接戦闘も全然できない。前衛が攻撃を受け止めるのはもちろんだが、どうしても状況によっては討ち漏らして後衛に負担をかけてしまうこともある。そんな時に、エマやアメリアのように最低限自分の身を守ることができないし、腰を抜かして逃げることもできないのだ。

 このままでは、万が一の場合は命に危険が及ぶ。それはユウキにとってもパーティー全体にとっても不幸なことだ。

 だから──パーティーからの解雇も止むなし、と判断した。

 メンバーからの反対もなかったので、今日、俺から彼に告げることになったのだ。

 

 俺は重い腰を上げて立ち上がった。まだやることがあるのだ。




 ここで俺について話しておこう。

 前世での名前は羽生聡介(はぶそうすけ)だった。

 日本で生まれ、義務教育を終えて高校、大学へと順調へ進み、中堅どころのIT企業に新卒で入社して、システムエンジニアとして10年ほど働いた。仕事はそれなりに順調で、5年目にはプロジェクトリーダーを任され、5人ほどの部下を管理しつつマネージャーの下でいくつかのプロジェクトを経験した。

 そしてプロジェクトが一区切りつき、大学時代から付き合っていた彼女と結婚の話もし始めたところで、暴走した車に轢かれてあっさりと死んだ。

 気が付くと白い空間にいた。少しぼーっとしていたが、交通事故にあった記憶が蘇ってきたので、ここはどこかの病室なのか、と思った。それにしてはベッドなどが一切なく、目に入るのは見渡す限りの白い空間だけ。

 死後の世界ってやつか──と悟ったところへ、頭の中で声が響いた。

 「声」の正体は、神様とか、そういった存在だったのだろう。自分では「管理者」と名乗っていた。

 そしてその声は淡々と告げていった。曰く、俺は別の世界へ転生することになる。特に使命などはないから好きに生きていい。ただし、何もない状態で転生するのは大変だろうから、ある能力(後に知ったことだが、この世界では「スキル」と呼ばれる。アメリアたち宗教関係者は神からの「ギフト」と読んでいるようだ)を授ける。

 スキルは、前世の経験と知識から最適な内容が決定される。俺のスキル名は「マジックデータベース」というらしい。たぶん、前世がIT業界のエンジニアだったからそうなったのだろう。どう有用なのかは、後にエマと出会って魔法について詳しく聞いて初めて知ることになった。

 そして「声」が最後に語った内容はこうだ。俺は最も肉体的に壮健だった時期の肉体へ再構成されることになる。「転生」というからには、赤ん坊になってやり直すのかと思いきや、「声」曰くそれには膨大なエネルギーと世界のシナリオの書き換えが必要になるからやらない、とのことだった。

 何が何だかその時はさっぱりだったが、気が付くと俺はどこかの森の中の開けた場所に横たわっていた。

 そして、まずユウキと出会い、ヒューやエマ、アメリアと出会ってパーティー「夕飯の支度(サパーズレディ)」を結成した。俺自身は「ハービー」と改名して、今に至るわけだ。


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