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04:回想③ 戦闘開始

 ゴブリンたちが薄暗い地下へ降りてくるよりも早く、ユウキの補助魔法が俺とヒューにかけられた。

 ユウキは俺と同じく転生者だ。転生者は、この世界に生まれ変わる際、神から「スキル」を授けられる。スキルにはこの世界で生きていくうえで有用なものが多く、冒険者だけでなく鍛冶師や商人、役人になる転生者もいるという。ユウキのスキルは、本人から聞いたところによると「補助魔法の効果時間の倍増」だ。

 補助魔法がかけられると、言葉では言い表しがたい安心感というか全能感が得られる。

 俺とヒューは階段を下りてきたばかりのゴブリンたちに無言のまま斬りかかった。


「ギャァッ!」


 ゴブリンが2体、俺の剣とヒューの槍の餌食になり甲高い悲鳴を上げた。補助魔法のおかげで攻撃の威力が上がっているからか、ちゃちな鎧や盾なら問題なく貫通する。

 こちらを認識した先頭のゴブリンが短剣を突き出してきた。俺は身をかわしつつその鎧の腹を思い切り蹴飛ばすと、ゴブリンは後ろの数体を巻き添えにして階段上に倒れ込む。


「ほらよ!」


 その間にヒューは先ほどユウキが蹴飛ばした槍を拾って投擲し、起き上がろうともがいている数体をまとめて串刺しにした。


「弓兵がいるわ!」


 エマが鋭く叫ぶが問題ない。階段上から放たれた弓は、俺とヒューに届く前に見えない壁に弾かれた。アメリアが物理障壁を張ったのだ。


「エマ、今だ!」


 俺が声をかけると、エマはすかさず杖をかざし、短い詠唱の後に火球をいくつか飛ばす。魔力によって作られた炎はアメリアの物理障壁を貫通することができる。小さくても威力は充分で、二の矢をつがえようとしていた三体のゴブリンの顔に命中し、あっという間に炎に包まれた。


「よし、みんな、上へ!」


 俺は物理障壁と石壁の隙間をすばやく駆け上がり、炎に包まれて転げまわっているゴブリンたちに止めを刺すと、やってきた他の何匹か斬り捨てて、一階の広間へ続く廊下へ出た。


 広間には十数体のゴブリンたちが待ち構えていたが、リーダー格と思しき姿は見当たらない。おそらく上階にいるのだろう。逃げられるか、戦いの準備を整えられる前に見つけ出さなければならない。俺たちはわらわらと押し寄せてくるゴブリンの波を撃退しつつ階段を上った。


 そのゴブリンは三階部分の一番奥の広い部屋に陣取っていた。その巨躯を見てエマは鼻を鳴らしながら言った。


「ゴブリンエリート、だけど、脳筋タイプね」


 魔法が使えるゴブリンメイジや奇跡が使えるゴブリンプリーストは知能が高く、成長すると統率力や戦略性の高さから厄介な敵になる。しかしそういった取柄がない普通のゴブリンは、いま目の前にいる個体のように図体ばかり大きくなることが多い。

 しかしそれでも、天井に届くほどの背丈や盛り上がっている筋肉、(びょう)のついた棍棒は普通に脅威だ。


 ゴブリンエリートは俺たちの姿を視認すると、殺意に満ち満ちた赤い瞳をたぎらせながら、前触れなく突進を始めた。


「ギャアッ」


 エリートの取り巻きらしいゴブリンたちがその足に蹴り飛ばされたり踏みつぶされたりしている。なるほど統率力がないのもうなずけるが、正直猪突猛進(ちょとつもうしん)にこちらへ来られるのは一番困る。廊下は狭くかわすだけの余裕はないし、俺やヒューで食い止められない可能性があるからだ。


「みんな、いったん屋上へ退避だ!」


 幸いなことにすぐそばに階段があった。追いかけてくるエリートにエマが火球を浴びせて足止めをしつつ、なんとか屋上へ逃げ込んだ。


 俺は作戦をみんなに伝え、陣形を整えた。

 エリートは息を整えつつのっしのっしと上がってきた。取り巻きのゴブリンはいない。どうやら自分で味方を減らしてくれたようだ。それほど知能が高い個体ではなさそうなのでそこはありがたい。

 何はともあれ、こいつを倒せば依頼完了だ。

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