後編 暴走するランナーたち
ジョギング禁止条例が審議されそうになったというニュースに接した時、私は驚きました。
一瞬、何のことだと思い、調べて見たら皇居ランナーによる暴走を問題視し、いっそ走る行為を禁止しようと皇居周辺を所管する千代田区が、審議しようとしたそうです。
私は当初は驚きましたが、さもありなんと思いました。
何故なら、私もその皇居ランナーの被害に遭ったからです。
簡単に説明します。
首都東京には天皇皇后両陛下がお住まいになる、皇居があります。
その皇居、旧江戸城の周囲には堀がめぐらしてあり、その周囲を道路が整備してあります。
通称内堀通りになります。
その道路沿いには歩道が整備されていて、そこをランナーが走っています。
特に女子ランナーには人気で、夏になるとお腹や足を出した刺激的なウェアで、颯爽と走っています。
なんと、夜でもです。
普通なら女性は不審者とか痴漢を恐れるところですが、そこは皇居であり、警察官が24時間365日体勢で警備しており、道の途中には簡易交番が設置してあります。
つまり、女性でも安心して走れる、安全なコースになります。
女性が安心して走れるのだから、何も問題は無いように思われます。
しかし行政は、禁止すべく条例の制定に動きました。
目に余ると、千代田区は判断しました。
では、何が問題なのか?
それが暴走ランナー問題です。
まだ、皇居ランナーなる言葉が定着する前に、私は所用で皇居近くを歩いていました。
その際、やけにジョギングしている人が多いいなあと思いましたが、仕方がなく道の隅を歩いていました。
しかし、歩道が狭くなる場所ではランナーを避ける事も出来ず、狭い道を走りにくそうにしているランナーに舌打ちされるのはまだいい方で、何ちんたら歩いているんだ邪魔だ!と怒鳴られた時には驚きました。
何なんだと思いましたが、そんなものかと思い、当時の私は気にしませんでした。
しかし、千代田区がジョギング禁止条例について検討を始めると聞いた時、私は改めて皇居に向かいました。
すると、そこには驚く光景がありました。
相変わらずランナーは多く、前出の女性ランナーも多数存在しました。
問題はそこではなく、道沿いに多数の看板が立てられていたことにあります。
走行は反時計周り
歩道は歩行者優先
お互いに道を譲り合いましょう
ゴミは持ち帰りましょう等々
思わず、子供かこいつらはと思いました。
こういった看板がたくさん立てられていると言うことは、ランナーがもはや社会問題となるぐらいに迷惑な存在と認識されており、それゆえの啓発活動でしょうか?
このことが報道されると、ランナーから突き飛ばされた人も居る上に、ランナー同士で衝突する事故も起きていました。
皇居を逆走(?)しているランナーが居て、傍若無人に振舞うそうです。
何だか、暴走自転車と同じに見えます。
結局、ジョギング禁止条例は制定されず、ボランティアなどがランナーに呼びかけを行うことで、事なきを得たようです。
その後、皇居を周回するランナーの数は減少し、問題も聞かれなくなりました。
もちろん、真面目に走っているランナーが大半でしょうが、一部の心無い人の行為に迷惑することで、全体が問題と認識されるのは、仕方がないと言えます。
かといって、暴走するランナーを取り締まることも出来ず、せいぜいが警察官による注意ぐらいでしょう。
いずれにせよ、暴走自転車も暴走ランナーも、悪意があってそのようにしているのではなく、子供の感覚を持ったまま全能者の如く振舞う、そんな身勝手さが現れた事例と思います。
問題はそこ被害者がいることであり、加害者が子供なら責任の取りようがありません。
普通なら保護者の責任になりますが、相手が未成年ならともかく、成人ならやっぱり自分で責任を負わないといけません。
そして責任を負わない人、あるいは自覚がない人は責任を取ろうとしません。
悪いのは自分以外だと、そう思えるからです。
だから違反者には、罰が必要になります。
啓発活動には、意味がありません。
何故なら、こういうのは真面目な人には効果がありますが、そもそも真面目な人は他人を蹴散らすような行為はしないでしょうから。
そうなると、出口(罰)ではなく、入口(許認可)を締めないと、どうしても被害者は出てしまいます。
結局、こうなると免許制にするしかありませんが、それは自転車には可能ですが、ランナーを免許制には出来ないでしょう。
つまり、暴走する人は自分で自分の首を絞めていることになりますが、他人の首も絞めていることにも自覚を持つべきでしょう。
いや、むしろ他人なんか死ねばいいすら、思っているのかもしれません。
だって、日本人は思い込みだけで、幼児を犯罪者と断定して殺せるんですから。
そういう思い込みが出来る民族であると、我々は認識しないといけません。
被害は加害者が気を付けるのではなく、被害を被りそうな立場の人が、気を付けるべきになります。
だって、相手が保険に入っていなかったりしたら、もうどうにも出来ないからです。
これは自転車の保険加入が義務化されても、起きる問題だからです。
だから乗り手を選ぶか、罰するか以外に方策はありませんが、結局、自らを守るのは自分ということになります。
歩行者が優先だから、事故に遭ってもいい、障害を負ってもいい、あるいは死んでも本望だと思う人なら、まあ仕方がないでしょう。
そうでないのなら、お互いに気を付けましょうとなります。
だって、損でしょうから。