猿でもわかる計画
電光石火!
待ち合わせをしていた村の近くのコタル草原に着くと拳はいつも通りの甲冑を着て待っていた。
「拳!こっちの子はテンイン!手伝ってくれるらしいんだ」
「よろしくお願いします!」
「わかった、冒険者とパーティを組めて嬉しい」
「私はNPCだよ?」
「そうか、NPCとパーティを組めて嬉しい」
受け入れが早い、変なこだわりのある者同士、謎の仲間意識のようなものがあるのかもしれない。
「どうやって雷を捕まえるの?」
そのテンインの問いに拳は計画を実行することで答えた
「『雷雨の生成』」
拳の魔法により瞬く間に暗雲が立ち込め強い雨と雷が降り出した、そして俺はその暗雲を目掛けて跳躍する、イカヅチの体は自由に飛行できる上とんでもない速度を出せる、轟音を響かせながら俺の走る道筋が稲妻になる、なかなか味わえない楽しい体験と言えるだろう、なんなら途中でハート書いといた。
「お前お前!止まれ!」
暗雲に差し掛かった辺りで声をかけられ停止する、暗雲からこちらを覗くのは俺と同じ姿をしたイカヅチだった、俺はこいつを何とかみんなの元におびき寄せないといけない。
「お前何考えてるんだ!下から上に登ってくんな!」
「そういうなよ、ちょっと話がしたいだけだ」
「登りイカヅチと話なんかできるか!」
へ、ヘイトスピーチ……!どうやら雷界では成り上がり系は流行っていないようだ、しかも差別対象である、そんなタブー的なことなのだろうか、実際上に登る雷はあんまり…全く見た事は無いが……
「いや……実は下に見てもらいたいものがあるんだよ、絶対に見るべきだ、後悔するぞ」
「なに?気になるじゃねえかどれどれ」
そういうなりイカヅチは落ちていく、俺はそれについて行くように落ちる、ただ落とすだけではなく3人の元に誘導しなくてはならないのだ。
「あそこに見える人間が見えるか?あれはすごいぞ!絶対に見るべきだ!」
「なんだと!?人間には近づかないように雷王様に言われてんだろうが!とんでもない馬鹿野郎だとは思ってたがここまでとは思わなかったぜ!俺は宮殿に帰るぞ!」
「え!?ちょっと!?」
そういうなりイカヅチは離れた地面に落ちたと思うと、元来た道を綺麗に辿って戻っていく、傍から見ると雷が落ちたように見えるのだろうか、俺は仕方なく3人の元に降りた
「イカヅチは人間には近づかないように雷王ってやつに言われてるらしい、空の上には宮殿があるんだとか」
「ダンジョンってこと?すごいじゃん!大発見だよ」
テンインの言うとおり、ダンジョンの可能性が大いにある
「でも私たちが上に行くのは難しいかな……?」
「いや、きっと出来る、ムラビト、鳥になって私たちを乗せて」
「無茶言うな、人を乗せられる大きさの鳥なんてそうそういないだろ」
そうツッコむと待ってましたと言わんばかりに拳は魔法を唱える、少し待つと完成した魔法が放たれた
「『怪鳥の群れの生成』」
その直後に数匹の見上げられる大きさの鳥が現れ俺を取り囲んでもみくちゃにする、俺が鳥の毛まみれになって魔法で生み出された鳥が全て消える頃には俺はデカい鳥になっていた。
『肝臓検査』によるとどうやら今の俺は『ウルトラマジック・ラージ・ピジョン・プラスインセイン』
らしい。
「もしかしてこの体、超強い…!?」
「所詮鳥」
「…」
ていうかそもそもさあ
「鳥が出せるならそれに乗れば良くない……?」
「…先に言って」
無茶言うな
くるっぽー(・<>・)
【用語】
『パーティ』このゲームにパーティを組む機能は無い、単にプレイヤーが行動を共にする時パーティと呼んでいる
『ハート』♡♡♡
【モンスター】
『イカヅチ』高速で移動するピカピカ光るモンスター、雷に擬態している、べつにこのゲームの雷が全部モンスターということでは無い、少なくとも主人公の村の近くで発生する雷はこいつらだった。
『ウルトラマジック・ラージ・ピジョン・プラスインセイン』
高度な魔術によって生み出された・大きな・鳩・その種族の中でも特に優れている個体
という意味の名前である、ずんぐりむっくりで可愛い、元となるピジョンというモンスターはスキルも弱くほぼ全てのステータスが貧弱だが魔法防御だけは中の中の上と行ったところである