ゴミトロール
にごにご
俺はイシャに連れられて彼女の家に入った、イシャが甲冑を無理やり家に押し込み椅子に座らせる、そして俺はスマートに土下座
「お願いします、運営にレポートしないでください、消えたくないです」
「いいよ」
あっさりと承諾され拍子抜けな気分になる、運営にバグを報告するとプレイヤーにはこのゲームの通貨であるグルグル金貨が与えられるはずだ、説得は難航すると考えていたが
「いいのか?」
「いいよ、金貨はいっぱい持ってる、村人NPCの剥製も医者NPCの剥製ももうあるから、君たちをどうこうする理由はない」
とんでもない発言である、それにしても金貨が余っているとは、大抵のプレイヤーは金貨が不足し毎日駆けずり回って依頼やイベントを探し回っているというのに、やはりかなり強力な魔法を使うだけあって上位プレイヤーなのだろうか。
「そういえば魔法使いなのになんで甲冑を身につけているんだ?」
「私の名前は『†卍拳殴打最強投絞極卍†』拳って呼んで」
……?キモすぎる名前だ、自己紹介も突然だし、しかもだからなんだと言うのだろうか、俺やイシャが沈黙していると補足が入った。
「コンセプトは武闘家っぽい名前の戦士の格好の魔術士」
やってることは盗賊だったが、人を剥製にしようとするバケモンの考えることは分からん、こころなしかイシャも引いている。
「金貨が余ってるというのは凄いな、大手のギルドにも入ってたりするのか?」
イシャが話を逸らした、俺も一緒になって拳の返事を待つ。
「入っていた、今シーズンの魔王との戦いで私だけが残ったけど、トドメを刺さなかったからギリギリ負けて追い出された」
「何故トドメを刺さなかったんだ?」
イシャが聞くが俺にはもう答えがわかっていた
「死んだら剥製にできないから」
「魔王すら剥製にしようと言うのか、というかできるのか」
「できる、ほら」
拳が3体の石像を取り出す、今までの3シーズン全てのそれぞれを代表した魔王だ、そりゃ毎シーズンの魔王討伐イベントに関わっていれば金貨も余るのだろうか。
「それより私からも話していい?」
俺たちが魔王の石像に呆気に取られている隙に拳が話を切り出す。
「剥製集めを手伝って欲しい」
その直後彼女は消失しオンライン状態が切り替わる、そこにはメモ紙が残されており、およそ6行程のメモの書き出しはこうである
『お仕事の電話があったのでまた今度お願いしますಠ_ಠ』
それを読み終わったあとの俺たちの感想がこう。
「「ニートじゃないんだ……」」
【用語】
『シーズン』このオンラインゲームはシーズンで区切られていて大型アップデートの度にシーズンが変わる、今はシーズン4でリリースからアップデートが3回入った状態
『グルグル金貨』
このゲームの通貨、プレイヤー同士やNPCとの取引などに必ず使う、これがなければ始まらない。