最初は自分達がやりたいから始めたことがつまんなくてやる気なくなっちゃう、そういう時の対処法
「おおおおお、ここがデートダンジョンか、『アイ・ランド』、そういう名前なのか」
黄緑の言う通りにデートダンジョンに行きたいと念じると突如青いポータルのようなものが現れて、その中に入ると石造りの道が繋がる入場ゲートがあった、デートダンジョンはアイ・ランドという遊園地という形のダンジョンのようだ、ここからでも既に中の華やかな飾りつけが見える、どうやら俺たち以外にもたくさんの人が居るようだ。
「ウサギさんが言うにはカップルなら入場は無料だそうだ、私たちは恋人同士ということにして入るか?」
うさぎさん、ゲートのそばにはウサギが立っている、デッカイなこれ…は恐らくこの遊園地のキャラかなんかなんだろう、がカップルじゃなきゃ入れんと言うならそうなんだろう。
「まあ付き合ってることにしても何も問題は無いよな?一応通常の入場料は…どこに書いてる?」
「ウサギさんが言うには1000万金貨らしい」
「高すぎだろ、普通の客は入んなって?カプ厨必死かよ」
幻想希石の大鉱山の10倍だぞ?普通の客が入れるわけないしカップル以外お断りってわけか、仕方ない、やっぱり付き合ってることにして侵入しよう。
デカいうさぎが手を振って見送ってくれた、真っ白でふわふわ、かわいい。
「どうやら恋人同士であることをチェックされることはないようだな、キスしなければ入れないとか言われたらどうしようかと思っていたよ」そういって嵐は胸をなでおろした。
「まあそうだな、ラッキーラッキー、ん?看板たててあんぞ、ちょっと雰囲気にあってないな」
園内の空気はまるでサーカスのようにカラフルで色とりどりなテントやアトラクションが立ち並んでいる、バルーンや吊り旗などの装飾も所狭しと置かれておりあえて言うならピンク色が多い、周りの冒険者達で賑やかで楽しげな空気が割を包んでいる。
そんな中に似合わない黒看板が立っているのだ、そこには赤文字でこう書かれていた。
【この看板は皆様の前に1度だけ現れます、必ず以下のルールを守ってください。
1・入場したふたりは別行動を控え、はぐれないようにしてください、1時間以上離れてはいけません、念じることで相手の元にワープできます。
2・アイランドに料金を払わず恋人のフリをして侵入した方を発見した場合、相応に過激な対応を致します
3・アイランド外の森には絶対に入らないようにしてください、魔界です】
とこのようなことが書いてあった。
「何が書いてあるんだ?カジヤ君」
見えない嵐のために読み上げてやる、すると嵐は「そうなのか、ではカジヤ君、2のルールはちょっと怖いな?」と言う、確かに今の俺たちは違反しちゃってるわけだし。
「1000万踏み倒して入場することの相応の対応って…」
もしシンプルに1000万罰金でも死ぬほど困っちまう、1億稼ぎたいのにむしろ借金まみれになっちまう、ここはちょっと本気で付き合ってるフリをすべきかもしれない。
「手でも繋いどくか?」
「うん、そうしよう、それに呼び方ももっと可愛くするか?恋人同士ぽく」
「え?いやなんでもいいけど、好きにしてくれ」
「じゃあカジぴ!さぁ私を案内してくれ、この遊園地に何があるか私は知らないのだ」
「カジぴ…いやいいけど、まあ嵐は目え見えないしな、案内できるかわかんないけどやってみるよ、あ〜、あれとかいいんじゃないか?」
嵐の手を引いて遊べそうなヤツの近くに来る。
「なになに?何があるんだいカジヤ?」
「なんか変な形の噴水みたいなやつだな、いっぱい設置されてるし目玉アトラクションなんじゃないか?」
にっこにこのゾウを模した建築物の鼻の部分から霧のような水が噴射されている、当たると気持ちいい。
「…カジぴ!これはただの暑さ対策のミストだ!アトラクションじゃないぞ!」
「ええ!?あそうなのか??でも俺遊園地なんか見た事ないしわかんねえな…」
パーフェクトプラネットの世界観に合わないじゃん、遊園地って、何でそんなのがあるんだよ、むしろ嵐に案内して欲しいのに…?いやちょっと待てよ?
「そもそも遊園地を楽しむために来たわけじゃねえぞ!?」
本来の目的はレベル上げ、決してアトラクションに乗ることなどではない。
「あ、そうだなカジぴ、魔物と戦うか」
「おう!で、どこにいやがんだ?それは」
「蒼月が言うには敵は中ボス形式で登場するらしいんだ、園内を歩いてると出くわす…と本来ならそういうことらしいが!まあ私に任せたまえ、敵の気配が分かるスキルを持ってるんだ」
そう言って嵐は俺の手をぐいぐい引っ張り敵の元に案内した。
「こいつが敵だ!」
「お、おうそうなのか?めっちゃ弱そうだな、この風船は」
そこに居たのは風船のような魔物、大きさ1mほどのバカでかい赤い風船なのだが顔が書かれている、こちらもにっこにこだが正直あんまり可愛くない。
「お、おおお?襲ってくるぞ!」
風船は俺達の方に近づいてくる。
「どんな攻撃してくるんだ!?カジぴ、攻撃の気配が感じられない!」
「わかんねえ!今んとこただ近づいてくるだけだ!うお、近くで見るとさらにでっけえ、遠近法ってやつか?」
風船は攻撃を仕掛けてくる気配を感じない、ただのっぺりとした動きでゆっくり近づいてくるだけだ、1mくらいの大きさだと思ってたが、近くで見ると実際1.5mはありそうだ、その顔を見るためにそいつを見上げなきゃならない。
「あっ!よく見ると名札が付いてるぞ!名前書いてる!『ボムーン』…あ」
よくみるとその風船は口っぽいとこから周りの空気を吸い込み大きく続けている、表情は先程までのにこにこからいつの間にか膨れ上がった怒りに切り替わっていってる、これでボムって名前だとどんな攻撃をしてくるか予想が着くというもんだ。
「これ絶対自爆攻撃だろ!」
「むむそうなのか!では先手必勝だな!『気裂き』!」
嵐はいまにも爆発寸前の風船が次の動きを見せるよりも圧倒的に速く、剣を抜き攻撃を仕掛ける、大気を切り裂く斬撃が飛んで風船は一撃でぱあんと破裂して無事撃破完了した。
「弱!一撃かよ!しかももらえる経験値もめっちゃ多いぞ!あとアイテムは…お土産交換チケット…?これだけみたいだな」
「ふむ、私からすると遥かに低レベルの敵だからな、これならゴリゴリにレベル上げできそうだな!」
そういうと嵐は少し耳を済ませるようにしながら俯いた、と思いきやすぐに顔をあげる、どうやら魔物の気配を探っていたようだ。
「近くにまだまだいるぞ!いこうカジぴ!」
「おう!目指せレベル100だ!」
それから動物型のマスコットや先程の風船など様々な敵を倒して行った。
貰える経験値は多く、ギミックも豊富で楽しい!さあどんどん倒していこう!
…としてたのは1時間くらいの話、気づくと俺たちは。
「カジぴ!これがメリゴラだ!メリゴラは神の遊具なんだ!」
「そうなのか?さっき乗ったジェッコってやつの方が良かったけどなあ」
うん死ぬほど脱線していた。
結構いろいろ面白いモンスターは居てレベル上げも捗った、実際俺のレベルは80まで上がったのだ、これは大快挙である、ところが70超えたあたりからちょっと上がりづらくなって…ひたすら、ひたすら同じこと繰り返し続けてるとちょ〜と息抜きしたくなる、そういうこともある、だから一回だけお化け屋敷に入ったところ遊びの流れが止まらなくなってしまったのだ。
「メリゴラの歴史は18世紀に遡る、クルクル回るお馬さんはいつも人々の心を掴んで離さない」
嵐の語りも止まらない。
「まあ確かに、ちょっと楽しいかも」
「そうメリねえ!」
?嵐が変な語尾で喋り始めたのか?今?
「え!?喋ったぞ!」
嵐はこう言ってる、どうやら突然語尾がおかしくなった訳じゃないらしい、というかさっきの変な声は違和感があったような…直接頭に響いた声の正体は。
うん、うまが喋った、聞こえてきたのはひんひんといううまの鳴き声だったのだが遊園地の魔法の力なのか何となく何を言っているのかわかる、そうメリねえ!って言ってた。
「うまがはなしかけてきたんだ!」
「なんだとカジぴ!どういうことだ!?羨ましいぞ!」
「今確かにうまの声が聞こえたんだよ!なあ!お前喋ったよな?」
俺は自分が乗ってるうまに話しかけた、すると後ろから「違うメリ!こっちメリ!」と聞こえる、俺と嵐が後ろを振り向くと。
「メリゴラは本当に楽しいメリ!」
メリーゴーランドの上に乗る小さな子馬の姿があった。
「…………魔物か?」
「馬鹿者ッ!こんなに可愛い魔物がいるかアッ!!!!」
「いるだろカワイイ系の魔物は…!」
「魔物じゃないメリ!メリメリメリーメリよ!」なに?なんだって?
「魔法が解けたのか?メリメリメリメリと何言ってるかわかんなくなったぞ?」
「名前メリ!メリメリメリーメリよ!」
「カジピ、つまりこのお馬さんの名前はメリメリメリーと言うのではないか?」完璧な考察だ、そういうことだとすとんと腑に落ちる。「違うメリー!」違うのかよ。
「じゃあメリメリメリーメリか?その語尾いつでも着くわけじゃねえんだな」
「違うメリーメリ!」
…ぁあ!そーいうことね、完全に理解した。
「語尾がメリの時とメリーメリの時の2パターンあんだな、つまりこいつの名前はメリメリだ」
「おー!!なんと可愛らしい名前だ〜!私は嵐だ!」
「ようやく分かったメリ?だったらようやくメリが話したかった本題に入れるメリー!」一人称はメリらしい。
「そっちの彼氏の…何メリ?」
「こっちはカジぴだ!」
「カジぴ!何やら憂鬱そうに見えるメリね!マスコット1級死角を持つメリの目はごまかせないメリーメリ!」なんだと?まさか俺たちが付き合ってるフリしてるのがバレたんじゃ…俺は背筋が冷たくなるような感覚に襲われるが嵐は平然と受け答えした、あくまでも恋人のフリを突き通すようだ。
「なんだと〜?カジぴ、私と遊ぶのが楽しくないと言うのか〜?」
「言うメリか〜!?」
「い、いやいやそういう事じゃねえんだけどな、えっと〜?初めて来たからな、ちょっと勝手が分からないって言うか」
一旦言い訳として適当なことを言うとメリメリは少し考えてから「じゃあメリが案内するメリー!このアイ・ランドを楽しみ尽くすまでは帰さないメリ!覚悟するメリーメリよ!カジヤ!」
そういうやいなや、メリメリはメリゴラから飛び降りてすぐ近くにあるアトラクションまで走っていく。
「早く来るメリー!」
「どうするんだ?カジぴ」
「え、まあ付き合ってやるかあ?」
このまま付きまとわれるのも面倒だし、満足するまで付き合ってやるのがいいだろう、そう思ってメリメリについて行こうとすると、ふとメリメリが振り返って言った。
「あ!忘れてたメリ!全てを忘れられる夢の国!アイランドへようこそ!メリー!」
メリメリは園内を悠々と飛んで移動する。
「マスコット1級の資格を持ってるって言ってたよな?魔物にはそんな資格があるんだな、どんな試験を受けたんだ?」
「?メリは生まれつきこの死角を持ってたメリ!メリのおじいちゃんもお母さんも持ってるメリ!ご先祖さまが普通のうまだった時に魔人の死剣を受けたメリ!病に犯されて病床に倒れながらもなんとか生きながらえた時…ご先祖さまは魔物となりその死角を神から授かったらしいメリ!」
「試験を受けて病気に!?」
一体どんな試験だったのだろうか?恐ろしい…
「あ、着いたメリ!これメリ!《カタパルトメリゴラ》メリ!」
いつの間にか目的地に着いていたらしい。
メリメリに追いつくとカタパルトメリーゴーランドという名前のアトラクションがあった、サングラスかけて大砲を持った、ドヤ顔のイケイケ系ゴリラさんを模した機械が巨大な投石器にもたれかかっている。
どんなアトラクションか想像着くくらいには、俺は遊園地に慣れてきたところだ、これ発射されて自由落下するタイプのアトラクションだろ絶対、なんか遠ざかってく悲鳴が聞こえると思ってたんだよなこの辺。
「デートにもってこいなシューティング系のアトラクションメリーメリ!」
「嘘つけや!100%空中に発射されるアトラクションだろこれ!」
「カジぴ!こんなに可愛いメリメリの言うことを疑うのか?私には分かる、これはほんとにそういうアトラクションだ!」
「そうメリー!乗って見れば分かるメリ!」
そう言ってメリメリと嵐に投石機の石置く部分に無理やり乗せられる、そこにはやはりサングラスかけて大砲を括り付けられた馬が輪になったメリゴラがあった、それに2人と1匹が乗り込んだところで巨大なゴリラの機械が喋り出す!
『全てを忘れられる夢の国!アイランドへようそこ!』
「「「ようそこ?」」」
『おっと間違えた!だがこのベテランゴリラ傭兵の[ゴリポン]様にとっては些細なミスだなぁ!改めてようこそ!俺様のイカしたアトラクション!カタパルトメリーゴーランドへ!これからお前さん達を打ち上げる前に注意があるぞ!1度しか言わないからよく聞くんだ!』
「おい!打ち上げるっつったぞ今!やっぱぶっ飛ばされるんじゃねえかこれ!」
「そうメリ!でも注意案内中は静かにするメリーメリー!カジぴ!ゴリポンが可哀想メリー!」
「…」それはそうだな、静かにしなきゃ。
『このメリーゴーランドに安全装置やシートベルトなんかはない!お前さんたちは安全のため、振り落とされないようにおウマさんに足でしがみつく必要がある!自信が無いお子ちゃまは今のうちにスタッフさんに下ろしてもらうんだぞ〜!』
そんなことあるか?危なすぎるだろ、と言う間もなく馬がくるくるとゆっくり回り出した。
「いま下ろしてもらう時間なかったぞ!?どういうことだ!メリメリ!」
「この中にお子ちゃまはいないから問題ないメリ〜!あ!始まるメリよー!」
いよいよアトラクションが稼働するようだ。
『安全の説明は終わりだ!次はお前たちの仕事について教えるぞ!お前たちはこれからアイランドを裏切ってバナナを横領したチンパンジーさん達を追いかけないといけない!そのおウマさんにつけられた大砲を使って奴らを撃ち落としてやるんだ!何!?自分の武器を使いたい!?それでもいいぞ安心しろ!チンパンジーさん達は特殊な訓練を受けているから傷1つつかないぞ!ぶちかましてやれ!』
そういった案内を聞いているさなか、突如後方からカモメに乗ったチンパンジー達がいっぺんに空に舞い上がった。
『さあ始めよう!最もフィジカルで!最もプリミティブで!最もフェティッシュな!裏切り者のお仕置きの時間だ!イッテコーーーーーイ!』
ゴリラがその巨大な腕を振り上げたあと、大きな機械が動く時特有の風を巻き起こしながらカタパルトをぶっ叩いたことで俺たちは勢いよく空に放り出された、その速度はとてもじゃないがコントロール不能で、必死で両手、いや全身で馬に捕まってないと吹っ飛ばされそうだ。
「うおぉおわああぁァーーー!!!」
恐怖のままに叫ぶと同時に口の中に大量の空気が入り込み一瞬で喉の奥まで乾燥するような感覚に襲われ思わず口を閉じた、普通に不快だった。
そういえばみんなは大丈夫か?声が聞こえないけど…
「お前ら平気か?」
「当然メリ、さあ2人とも!弾道が安定したらいよいよ、レッツ、シューティング!メリーメリ!」
さっきは斜め上へ飛ばされる時、風圧やらで周りの景色すら見れない位だったが、今では少し余裕がある、風が気持ちいいくらいだ、見るとメリーゴーランドには羽が生えていてそれが俺たちを上手に飛ばしているらしい。
「おお!やってやるぜ!行けるか?嵐」
「あ、ああ何とかな、本当に怖かった…で、その鳥はどこにいるんだ?」
「どこって、どこにでもいるだろ、あ」
こいつ見えないんだった…
「見えないんじゃ撃ちようないんじゃねえか?」
「そんなことは無いぞ!スイカ割りみたいな感じでカジぴが口で伝えればいい!」
いい?ほんとにいいか?無理だと思うが…スイカ割りと違って相手は動いているし、しかし物は試しだ。
「…ちょっと右だ!」俺たちがなかなか撃ち出さないのを見て調子に乗ったのかカモメの上で器用に逆立ちして遊んでいたサルが居た、それを狙うように嵐に指示すると「了解!発射ー!」と言って嵐が引き金に手をかけた。
ポンと軽い音を立てて巨大な砲弾が大砲から発射された。
「やったか!?カジぴ!」「やってるわけねえだろ!やっぱ無理だ!」指示してから狙いを定めて撃つまでに多くの状況が変わっている、というか難易度高くないか?これ
「カジぴも撃ってメリ!」メリメリに言われて俺も引き金に手をかける「…オラ!行けー!」
無論砲弾は明後日の方向へ向かっていった、というか難易度設定が異常すぎる、高速で飛行する馬に乗って、と言うだけでも難しすぎるのにメリーゴーランドが回っているという理由から常に自分が向いている向きが変わる、高さにも変化が加わっていて相当キツい、というかあのサル普通に飛行テクニックで避けてる、こっちの弾丸を!避けんな!
「嵐!カジぴ!2人が息を合わせないとサルは捕まえられないメリ!頑張るメリーメリ!」メリメリが好き放題言ってくる、こちとらもう何十日も一緒に戦ってるんだ、連携しろって?よく考えたら敵の位置を伝えて攻撃するとか猛練習してたとこだ、余裕だわ!
「あぁやってやるぜ!武器使っていいんだよな!?」「む?その音は手裏剣か!ふふ!任せろ!」
俺が手裏剣取り出したのを受けて嵐が刀を鞘から抜いた。
「行け!嵐!1秒後、8m先60度左!」「了解した!気裂き・左流!」
気裂き・左流は嵐が使う飛ぶ斬撃、気裂きから派生する技だ、通常の気裂きは真正面に一直線に飛んでいくが、左流はその後左に流れていく性質を持つ。
「キキ!ウッキキ!」
猿は嵐から見て左にいたので、曲がってくる飛ぶ斬撃に後ろから追われる形になる。猿は急加速で気裂きから逃げようとする、このままだと気裂きが追いつく前に自然に消えてしまうのが先だろう、しかあし…
「ここで『白刀斬り』だ!」
逃げる先をを埋めるように手裏剣を投げることで左流を避けた敵にも当たる連携攻撃だ、シェリシュを仕留めるために編み出した技だが果たして…?俺は祈るような気持ちで手裏剣を見送る。
「当たるか!?」「当たるのか!?」「当たるのメリか〜!?」
…当たらん!全然当たる気配すらなく手裏剣が落ちてった、落ちてった?落ちてった!?落ちてった!!!!
「落ちてった!!!!!!!!!」
「何がだ?」
「俺の手裏剣!!!」
「そんなに大事メリか?」とぼけた顔で聞くメリメリ、そんなん当たり前すぎるだろ。
「俺の最高傑作だぞ!!あぁ…」
見えないほど遠くへと落ちていく、魂込めた作品が…
「…こうなったらヤケだ!こんの猿ども!全部落としてやるからなあ!」
「おお!私はどうすればいいんだ?カジぴ!」
「こんなん狙っても当たらないんだから何も見ずに撃っても同じだろ!やっちまえ!」そう言って俺はめちゃくちゃに砲弾を乱射し始めた、猿どもは慌てて飛び回る。
「私もやるぞ!」「頼む!あいつらタダで済ますな!」
二人で何発も弾を発射し続けていると当たらないのに結構楽しくなってきた。
「それ!これならどうだ!」嵐は見えていないのに適当に砲弾を撃ちまくる、逆に怖いのかカモメはビュンビュンと飛び回り上に乗ってるサルがふらついている。
「おーい!大丈夫かそこのふらついてるサル!…今から撃ち落としてやるからなあっ!!」
「2人とも!ここからはボーナスタイムメリ!」
なに!どういうことだ?なんだボーナスタイムって。
「落ちてる間は得点2倍メリ!」
「…落ちてる間?」
このメリーゴーランドはカタパルトに乗ってぶっ飛ばされた、自分の力で飛んでる訳じゃない、羽は着いてるが、弾道が安定する程度だ、となると当然…
「…やっぱりこれ空にぶっ飛ばされるアトラクションだったじゃねえか!今から自由落下じゃねえかよ!」
「危ないからしっかり掴まるメリよ!ハイリスクハイリターンのボーナスタイム!開始メリー!」
羽が引っ込んで徐々に角度が怪しくなる、下からの空気抵抗も激しい、ていうかガチでヤバい、怖すぎる、安全装置が無いんだからこんなのアトラクションじゃなくてただの落下だ。
「「うわぁぁあああああああああああああ!!!!!!!!!!!」」
もうサルがどうとかどうでもいい、必死で馬にしがみつく、ジェットコースターよりはるかに怖い、死ぬ、死ぬ、死ぬ!だろうが!
「きゃあぁぁぁああカジぴ助けて!今どうなっているんだ!」
「ととととにかく捕まってろ!!」
目を塞がれて落とされる嵐の恐怖は想像すらつかないが俺だって他人を気にしている場合じゃない。
そんな時、あまりに恐ろしいその光景がふと霞んで…
「カジヤよ、聞こえておるかの」
「この声は…老子!?白刀老子!!」
俺の前に突如俺に修行をつけてくれた白刀老子が現れる。
「ふぉふぉ、カジヤよ、久しぶりに会うことになったの」
「老子!なんでここに!?」
どうなってるんだ?これもしかして走馬灯的な?死にかけて幻覚が見えてるのか?そりゃ老子には世話になったが死ぬ前はイシャとかムラビトとかテンインとか、友達がいいんだけどな。
老子は落ちていく俺に合わせて高速落下していく、このままじゃ老子まで地面に激突してしまうんじゃないか?
「ワシがここに来たのはお主に伝えなければならないことがあるからじゃ」
「な、なんだよ?」
「お主は修道場を卒業し立派なド白刀になった、だが進化が止まった訳ではない、もっと先があるのじゃ」白刀老子はそう言うと少し俺のことを見て、俺が話すのを待っているように見えた。
「そうなのか!?教えてくれよ!」
「ダメじゃ」
老子は即答した。
「なんでだ!?」
老子が直接俺に鍛治の技術やらを教えたことは無い、老子が知らないから、また自分の力だけで成長するのが白刀のやり方だからだ、でもその代わりに白刀としての在り方や、より成長するための助言をくれた、なのになんで今になって教えを渋るんだ?
「まだお主には準備が出来ていないからじゃ」
「準備?俺はド白刀になったのにか?」
「実力の問題では無い、それよりもう時間が無いようじゃな」え?それってどういう
「そろそろ地面メリ!」
その声でハッと今の状況を思い出し、気づくと老子は消えていた。
「地面!?!?当たったら死ぬだろうが!」
メリゴラはとっくに終端速度に到達し、地面に真っ逆さま、もう激突まで数秒しかない!!
「大丈夫メリー!ふわっと落ちるメリ」
そういった途端エンジン音のような轟音がメリゴラの下部から響いて落下速度がそれはもう急激に落ちる、強烈な浮遊感で油断したら吐きそうだ。
「う、おおおお」
徐々に速度が落ちてメリゴラは辛うじて耐えられる程度の速度で地面に落下した、平衡感覚を喪失した俺は、ふらふらとなんとかうまから降りて両手を地面に着けた。
「なんだったんだよ…このアトラクションは!おい嵐、大丈夫か?」
「終わったのか?カジぴ、手を貸してくれ、怖くて歩けない…」
「おう、今から行くぞ」
嵐をウマから下ろしてメリゴラを降りるとメリメリが俺たちの前に飛んできて「さて今回の得点は〜!!?」と騒ぎ始めた。
「…分かりきってるだろうがよ」
「0メリー!」メリメリがそう言うと同時にメリゴラが突然大砲からスコアボードを発射して俺たちの前に落とした、そこには他の客がこのアトラクションで取った点数が記されている。
「カジぴと嵐は〜!0点メリ!現在順位は2位メリよ!」
KAJIPI&ARASHIの点数は0点と書かれているが、プレイしたのがついさっきだからか山ほどの結果を抜き去って2位に君臨している。
「0点で2位!?やっぱあんな難しすぎるアトラクション誰にも無理だと思ってたぜ!1位って誰なんだよ、どんなラッキーな奴らが…お?なるほどなあ」
「だ、だれだったんだ?カジぴ」
「TERU&ONEって書いてんな1点だってよ」
「おお!テルとその彼女の名前じゃないか!彼らもこれに挑んだのか!」
テルには彼女がいたのか…というより
「てことはあいつら遊んでんじゃねえか!」
「私達も遊んでいるだろう?」と嵐に諭される「これは…休憩みたいなもんだ!」
少し長めの休憩だな、うん。
「どうしたメリ?遊園地は遊ぶとこメリよ!」
「え?あぁそうだな、いやそうだったわ!次は何して遊ぶかな〜?」
レベル上げを再開するにもとりあえずこいつを満足させて離れてもらわなきゃ困る、だって本当は恋人と遊びに来たわけじゃないとバレるのが困るから、てことは一旦遊園地で遊ぶのは理にかなっているんだ、うん、決して俺たちはサボってない。
「遊ぶのも良いメリけど少し休憩していくメリ!美味しい料理がいっぱいあるレストランに案内するメリよ!」
「どうしたカジぴ?行こうか」
「あ、おう、行くか」
俺たちは遊園地を移動してレストランに向かう、遊園地の構造はよく出来たもので、園の中心近くにレストランやお土産屋さんなどが多く配置されており、どこからでも気軽に行けるようになっているのだ、だから景色を軽く楽しみながらサクッとレストランに行けた、行けたのだが…
「なあ嵐、ほんとにそんなに悩むところか?どっちも美味そうだろ?サッと決めろよ」
「どっちも美味しそうだから困ってるんだよ、やはり卵か?いやニワトリというのも…新しくていいんだ、素晴らしい…しかし…やはり卵には務まらないのかもしれない…」
「おいおい…り」再び催促の言葉を飛ばそうとしたところでメリメリが口を挟んできた。
「カジぴ!迷っちょうのは仕方ないメリ!なんせこのレストラン『武者武者!』の料理はどれも凄くジューシーな大物ばかりメリーメリ!ゆっくり悩んだ方が本当に料理を食べた時の美味しさも倍増メリ!カジぴももっと考えるメリ?」
武者武者、と名付けられた店の看板には鎧を脱ぎ捨てこれでもかと言わんほどに並ぶ料理を食べる侍のマスコットが居た、このレストランは戦場で開かれた料理店で戦い中の侍が休憩しながら食事をとっている場所、という設定らしい、遊園地に遊びに来た客が後半戦に向けてランチでエネルギーを補給できるように肉料理やたっぷり具の入ったスープなど、活力の湧くような物が取り揃えられている。
店内では弓や刀がぶつかる効果音が程よい音で流れている、侍たちによるコントもスピーカーから発射され続けていて凄く賑やかなんだが…
「いやそりゃ俺だって結構悩んだぜ?この笑おうと思えばちょっと笑えるくらいのコントを3種類全部聞くくらいの時間悩んだ、でも嵐はその3倍はかかってるし、なあ嵐、もうどっちでも良くないか?」「うう、待ってくれ、ほんとに今決めるから!」「ほら嵐もこう言ってるメリ!遊園地は急いで回るものじゃないメリ〜」
メリメリは嵐の肩を持つ、こいつは嵐が悩み始めて3分で飽きて外を飛び回っていた、一方俺はずっとこの悩みに付き合わされていたんだ、今戻ってきたこいつにはその苦しみが分からんだろう。
「まあ確かにな…30分くらい待ってやればいいと思わなくもない、だけどなあ!それは何食うか迷ってるならの話だ!こいつが考えてんのは順番なんだぞ!順番!両方食うんだから一緒だろ!注文してから考えりゃいいだろうが!」
鶏が先か卵が先か、こいつは今ローストチキンとオムライスのどっちを頼むかではなく、どちらを先に食べるかで悩んでいるのだ、どう考えてもオムライスだろ、常識的に考えて!
「メリ!?嵐、早く決めるメリ、待ちくたびれたメリよ、カジヤももっと急かすメリーメリ!」
「嵐!さっさと決めろ!」
「そ、そんなあ!ちょっと待ってくれ」
「待たねえ!おら!」
店員を呼ぶベルを叩くと忍者がトロトロ歩いてきて注文を取るためにテーブルの横に着いた、店内で走るのもあれだろうから仕方ないにしても、その動きはあまりに遅くテーブルに着くまでの時間は約135秒だった。
「『オムライス』と『ローストチキン』、『武者武者バーガーセット』、『ユニコーンフード』…ユニコーンフードってなんだよ…を1個ずつ!よろしく!」
「すみません、オムライスは今デミグラスソースが切れてるから出せぬでござる…orz」
「そうなのか?嵐、どうすんだ…あ、嵐おい大丈夫か」
完全にフリーズしてる、そんなに食いたかったのか「オムライスにはケチャップだろう!!!!」うわびっくりした、急に喋らないでくれよ。
「戦場ではトマトは取れないのでござるよ、ご容赦願うでござる」
んじゃあ他は取れんのかよ、卵とかがか?
「なら仕方ない、私はチキンだけ食べるぞ!」
「あ、そうか、じゃあローストチキンと武者武者バーガーセットとユニコーンフードを頼む」
「おkでござる!」
そう言って忍者は厨房に向かってトロトロ歩いていく。
「見たか?ネット民みたいな忍者だったな」
「できたでござる」
早すぎる、どうなってる?注文とってまだ3秒とかだぞ?今から雑談のつもりだったのに。
「わ〜い美味しそうメリ〜」
忍者がテーブルに料理を置いてすぐ、置かれたゆらゆら光るわたあめみたいなものにメリメリがぱくついた。
「なんなんだよ、そのユニコーンフードって」
「人々の希望や夢メリ!」
「そんなに素敵なものを食べてるから可愛いのだな!」
「…いや悪魔みたいな食生活だな」
それ食われた奴はどうなるんだ?
「所詮魔物メリから!」
自分で言うなよそんなこと。
とはいえメリメリだけ先に食い終わるとこいつが暇になっちゃうだろうから、俺もバーガーを頬張ることにした。
「おっ美味いな、値段にぎり見合ってないくらいの美味さだ。」
めちゃくちゃ高かったんだ、遊園地価格と言うやつか。
「まあシェフはマニュアルをよく読んだ素人メリから、設備が良いのと相殺して良くも悪くも味は一定メリ」
ほーん、素人ね、素人で思い出したわ、さっき老子(の幻覚?)に俺がド白刀の先のレベルになるには準備が足りてないって言われたんだよな…俺に足りてない資質ってなんなんだ?
そもそも白刀とはなんなのか整理しよう。
白刀とは誰からの教えも受けずに自分だけの道を進むものだ。
老師はそれを刀に例えて教えてくれた。
刀は鋼を熱し、何度も叩いて不純物を取り払って作る、白刀の考えによれば他者からの教えは自分の道を歩むための不純物、他人の教えを貰うということは自分の刀に他人の色を貰うということだ、様々な色を足せば、刀は最後には真っ黒になる、白刀の道を行かなければ黒刀になるしかない、それは……
それって悪いことでもないな?
白刀になるために白刀修練場で修行してた頃は他人の教えを徹底して排除することで自分だけの鍛治道を切り開いたつもりだった、そしてド白刀になって外に出た時は?
他の奴らが技を教えあって、最終的に皆同じやり方をしていたか?そんな訳ない、自分の色がある、黒刀のやり方は決して毒みたいなものじゃない…だけど今更になって、黒刀のやり方を取り入れられるだろうか?
それも難しい、白刀として学んできたものが失われてしまうだろう、2つの道はどちらも悪い物じゃないが、どちらかを行くしかないんだ…
「カジピ!そんなもそもそ食べちゃダメメリ!考え事はやめて集中!ムシャムシャ行くメリよ!」
「え?…おう、美味いことには美味いんだよな、コレ」
そうだな、一旦考え事はやめにして目の前の事を集中しないとな、これからも遊園地を楽しむためにまずはエネルギー補給だ!
地面師流行ったくらいの時からずっとこれ書いてた




