ひたすら、ひたすら同じこと繰り返し続けてるとちょ〜と息抜きしたくなる、そういうこともある
「嵐!前方左だ!」
今回の敵はシェリシュ、相変わらず完全に無音で移動するため、嵐に位置を伝え続けなければならない、とはいえ敵が見えていないのは嵐だけではない気づけば視界からも消えているシェリシュを見逃さないためには3人で360度を監視しなければならない、その対策に俺たちは嵐を中心に三角形を結んで全体を見渡せるようにしてある。
「『気裂き・左流』!」
今度の挑戦では嵐には後方から攻撃で支援をしてもらうことにした。位置が分からなくても攻撃範囲の広い技で大体の位置を攻撃してもらう、ちまちま削っていくのが狙いだ。
「ナイス!当たったっぽいぞ!」
前回瞬殺されたにもかかわらず既に何度か攻撃が成功している理由はずばり蟹だ。
前回まで一旦消耗の大きい広範囲攻撃を使ってでもオリハルコンクラブを一掃して戦うためのフィールドを作っていた、だがあえてカニが襲いかかってくるのをそのままにすることで蟹を壁の代わりにしてシェリシュを近づきにくくさせることが目的だ、、このウォールクラブ作戦は今のところ大成功しており、シェリシュに接近を許さず一方的に斬撃で攻撃できている、とはいえ……
「あとどれくらい耐えれば倒せそうだ?」
俺にはこういうボスと戦った経験が無いから敵の体力を削る感覚が分からない、こっちはカニを倒さず耐えるのもそろそろ限界だ
「さぁ?まだ高いダメージは出てないからこのペースならあと10分くらいかな?大丈夫、カジヤ君ならやれるぞ」
「……無理だ!」
そりゃシェリシュを相手にするよりマシだけど、カニの相手も相当きつい、テルは前衛じゃないから向いてない仕事をさせられているし、俺は単純にレベルが低い、なんとかなってるのは蒼月くらいだ。
「ふっ、俺は先に行く」
「あっおい待てテル!カッコ悪いぞ!っあぁ!?」
テルが体力0になってしまったか、倒れてキャンプに帰っていく、そうなるともう終わりだ、テルが担当していたぶんのカニが俺たちの後ろから襲いかかってくる、これで前方だけでなく左右の敵もさばかなければならない。
「流石に無理だろこれ!?背中合わせで180度見ろってか!?」
「それより一旦集団を抜けるべきだな!俺が突っ込むから2人とも続いてくれ!」
「いやその前に2人とも、シェリシュは今どこにいるんだ」
「ここよ」
「「「あ」」」
シェリシュはどういうカラクリか俺たちの間に入り込んでいて今、俺と蒼月の肩に手を回していた。
「あがっ、たがっ、あ!!!?」
「ダメだ嵐!蒼月がやられた!」
「……介錯!」
左手の方で触られた蒼月が毒に犯されて苦痛を訴えている、こうなったら可哀想なので殺してあげよう、とはシェリシュ対策会議第2回で決まったことだ、嵐の刀が蒼月を真っ二つにした。
「まっ、こりゃまた無理か」
「えぇそうねぇ、うふふ、また来てちょうだいな」
そしてシェリシュが俺の体を揺さぶった、ガクガクと視界が揺らされたあと首と肩の間あたりからごキッと嫌な音がして意識が暗転する、キャンプで目が覚めるとすぐに嵐も送られてきたことからついでにサクッといかれて終わってしまったようだ。
「またダメか!強すぎんだろマジで」
今ので10?いやもっと挑んでるのは間違いない、だがずっと惜しさすらなく惨敗しているのだ。
どんな困難に襲われても絶対に諦めない、そう、俺たちはチャレンジャー、しかもちょっと強い……しかし、だから勝てるという訳でもない、無理なもんは無理だ。
「今回の結果を記そう」
そう言って嵐がキャンプに設置したホワイトボードに記入していく、負ける度に書き加えているボードは既に八割ほど埋まっているが未だにほぼ成果はなし、だ。ランダムに来る3人の敵に対して手応えのある結果を得られたことは1度もない。
対シェリシュ
備考
毒を持つ左手に注意
出現に気づけない
戦術
距離をとって待ちに徹する!←瞬殺された
近くに陣形を組んでカバーし合う!←隣の仲間がやられても反応できない
一気に取り囲んで全力で速攻する!←スルッと抜けられた←1人見えてないしな
全範囲を攻撃する!←なんか避けられた
嵐は役に立たないのでお茶汲み係(ポーション要因)になる←私のポーションが飲めんのか!?←飲む暇もなかったな
次の作戦!カニをあえて利用する←流石に無理
対クス
備考
シンプルに強い
戦術
私なら一対一でも勝てる!←無理じゃねえか
遠距離から気裂きで戦う!←向こうも使ってきた←向こうの方が強かった!
一気に取り囲んで全力で速攻する!←一気に負けた←逆に苦痛はなかったぞ!
逆に四天王スタイルで順番にいく←順番に死んだ
対キンラ
備考 最初から蟹魂状態 無理ゲー
強すぎ、アーマー着いた状態で連続蟹鎌されるだけで全員死ぬ、無理
この通り、全く攻略の糸口すら見えない、1番ダメだった回なんかシェリシュが不意打ちではなく堂々と前から来たから珍しいなとか思いながら見てたら突然俺の頭が弾けた(らしい)ほどだった、一体どんな技だったのか。
「さて、なにか新しい案のあるものは?」
「無い!1つもな!はっはっはっは!」
「勝てないだろうと感じる、レベル上げでもするか?そういえば俺たちはそういったことを他のプレイヤーほどはしたこと無かったじゃないか、気になっていたんだよな」
「はは、レベルならうなぎのぼりで上がってるぜ、カニ退治でな」
「残念ながらカニでレベルが上がるのはカジヤ君くらいのものだな」
俺のレベルは冒険者達の平均より大きく下回るほどだったんだが、ここ数日の大連戦で相当上がった、もうそこら辺の中堅冒険者と並べるくらいにはレベルが高い、まあその程度じゃここのボスには勝てる気しないが。
「……レベル上げってどこでやるんだ?俺を連れてけ、ゴリゴリにパワーレベリングしろ」
パワーレベリング、高レベルの3人が戦うのについて行けば俺も大量の経験値がもらえる
「あぁ、俺のオススメは『妖精葉脈』だ、あそこには親切な妖精が沢山いる、彼らは俺の弓にルーンを刻んでくれたしいつでも帰ってきていいと言ってくれた、狩りにも誘われたな、今こそその時だろう」
「おお!いいじゃねえか、テルの友達がいんのか!……葉脈?葉脈って葉っぱの上の白いのか?それどういうダンジョンなんだ?」
「あぁ、妖精が選んだ者だけが体を小さくしてもらって入れるんだ」
「それ俺入れんのか?」
「絶対無理だ」
こいつ……どういう考えだ?
「どういう意味だよおい、なんで俺がダメなんだ?」
「基準があるんだ、カジヤと蒼月は入れん、嵐も多分ダメだろう」
「どんな基準だよ!行けねえ場所おすすめすんじゃねえ!」
「確かにな、盲点だった……嵐はどこかないのか?」
テルはそうそうに自分のターンを投げ出した、そしてバトンを受け取った嵐は意気揚々と語り出す
「ふふ、私のおすすめは『逆落日洞穴』だ!」
「逆落日洞穴?どういうダンジョンなんだ?」
名前からすると……逆落日?太陽が登ってる洞窟的な?
「そこは私がこの妖刀を手に入れた場所でな!空に浮いてた、広くて穴ぼこだらけの洞窟なんだが……中では何故か重力が逆転しているんだ、だからずっと魔界の下がり続ける太陽が逆に上がるのを見ることが出来る」
「お?なんか情報量多くて1回聞いただけじゃ想像できねえし……魔界の下がり続ける太陽?」
「あぁ!魔界の太陽はいつ見ても下がり続けているんだ、1日のいつ見てもな、不思議なことに」
「いやいや、魔界にあるってことか?それすぐ行けんのか?」
「いや!片道1週間ほどだな」
「旅程に無理ありすぎだろ、そりゃ無しだぜ」
「うむ、カジヤ君の言う通りだな、だが私たちのレベルで有効な上に手頃なダンジョンなどあるだろうか?」
「ある!!」
食い気味に入ってきたのは蒼月黄緑、どうやら心当たりがあるらしい
「はい黄緑、言ってみろ」
「デートダンジョンだ!」
デートダンジョン………?
一体どんなダンジョンなんだ?まさかデートってあのデートじゃないよな?
「あっ!もしかしてデルタダンジョンって言ったか?」
「違う!デートダンジョンだ!」
「デートダンジョンか、聞き間違いじゃないのか……デートってあれだよな?手を繋いで遊びに行く?」
「そのデートだ!」
「それってどんなダンジョンなんだよ」
めっちゃ弱そー。
「私も知らないぞ、どんな場所なんだ?説明してくれ蒼月」
「カプ厨の神が作ったとされるダンジョンだな!この大陸全土からいつでも男女の2人組限定で侵入可能!行く方法はデートと二人で唱えるだけだ!中の宝箱からは『思い出』シリーズの装備がドロップする!」
「ふうむ……かなり良く聞こえるな?難易度の方はどうなのだ?蒼月」
「難易度はカップルの男性側のレベルに調整される!」
「それって俺が挑む場合は簡単になっちゃうのか?」
「その心配は不要だカジヤ!このダンジョンは最深部までは非常に長く難易度の方もどんどん高くなる!2人のレベルを超えるダンジョンを攻略するにはカップルの信頼関係が試されるというわけだ!このデートダンジョンをどこまで潜れるかでカップルの相性診断を行う文化もあると聞いている!」
「……めっっちゃいい感じじゃん」
後半の部分はともかくダンジョンの性質が今の状況に適しすぎている、俺が潜った場合本来俺じゃ進めないところまで嵐に連れて行ってもらうことができるだろうからパワーレベリングにもなる、蒼月やテルもレベル上げ可能なわけだ。
「そうと決まればデート行くぞ!嵐!」
「え?う、うん、行こうかカジヤ君」
ここから俺たちのデートレベル上げが始まったのだった
【ユニークアイテム】
『妖刀・鬼結ん丸』嵐が所有する武器であり、基礎威力が高くその刀気は何もせずとも自動で少しずつチャージされ、消費して技を撃つと斬撃が空間を飛んだ距離に応じて威力を上昇させる効果がある、かといって距離が短いから威力が下がるということは無いためデメリットが無い刀気の性質、妖刀を名乗るのがおこがましいほど高スペックで隙がない。しかも刀身が桜色で可愛い、鞘まで花いっぱいで可愛い。
【キャラクター】
『カプ厨の神』このゲームに存在する神の1柱、ゲームシステム中にこの神を信仰する方法は用意されていない、なぜならカプ厨神の教義とはカプの信仰であり全てのプレイヤーはカプを信仰する以前にそれぞれがカプの一員だからである。




