もう帰るようですね、しかしその前にここでのおもてなしを受けてください
先行していたギルドメンバーが掘った穴に急いで入って来る。
それにしても半信半疑だったが死神が必死こいて穴掘りをしている、まさか死神を奴隷のようにこき使う奴がいるとは大したもんだ、穴はそれなりの広さがあるので進むために体を押し込んだりする必要は無い。
「あっ!ギルドマスター!追いついたんですね!」
「クラマ、灰音ちゃん!心配しとったで!なぜなら敵は多かったから!」
最後尾のDaydoと雑草が話しかけてくる。
「おう、全員倒すとなれば厳しいだろうが、意外と何とかなった」
「何とかなった、と形容するのはちょっと問題があると思いますが…みなさん、進捗はどうですか?」
「灰音さん、地図上で見ると多分半分くらい、らしいです、でっどさんが言うにはですが。」
前に目をやると魔法に集中している死神とそれを邪魔?しているレアちがいる。
「でっどちゃん、ちょっと遅くない?真剣にやってよ」
「真心込めて掘ってますよぉ、『洞窟の生成』、これであと4分の1です」
魔法が唱え終わった途端にゴリゴリと土がえぐれて道ができていく、器用なもんだ、でっど・ざ・ろっく。
「すごいけどちょっと怖いなあ、なぜなら崩落しそうだから!」
「そうですね、さっきから地響きすごいですしね」
「ふぇ?それは私の魔法の影響じゃないですよぉ」
「えっ?ちがうのでっどちゃん?じゃあこれは何?何の揺れ??」
戸惑う一同に反して俺と灰音はその原因が分かるために落ち着き払って答える。
「銀行の追手だ、どかどか着いてきたんだろう」
「戦っていたら見上げなければならない程の大きさの巨人が降ってきまして、たまらず逃げてきたんです」
「え!全員倒したんじゃなかったの!?」
「そんなことは俺達にはできん、お前がやって見るか?レアち」
後方から踏み込んでくる騎士の大軍は銀行の警備に当たっていた人間だけでなく、恐らく街の治安維持部隊も混ざっているだろう、そして極めつけに謎の巨人、この大騒動で恐らく町民に手を挙げた俺や灰音のカルマ値もうなぎ下がりだ、逮捕されたらアカウント削除までは行かなくとも当分の間禁錮されるかもしれない、というかさっきから思ってたが追手多すぎないか?みんな暇なのか?囚人全員脱獄でもしたのか?
「まぁ任せてよ!みんなは先に言ってて!でっどちゃんはみんなに失礼な態度取らないでよ!」
「はぃん、気をつけますぅ」
「ちょっと待ってよ!ほんまに1人でええん?ウチも手ぇ貸すよ!!なぜなら敵は多いから! 」
「雑草、レアちには助力は必要ない、なぜなら奴は死神であり、この世界で最も対人戦に秀でた者だからだ、分かったら行くぞ」
「死神?死神ってなんですか?」
「Daydoさんそれは後で、今は先を急ぎましょう」
俺たちは洞窟の先まで辿り着き、でっどが詠唱し終わるのを待つことになる。
「次で辿り着くのか?」
「はぃん」
「俺たちにできることはあるか?」
「皆さんは役に立たないですぅ」
「え、言い方悪くないですか?」
Daydoも我を忘れてツッコんでいる。
「あっ、私のポケットにUNOありますよぉ、取ってやっててもいいですよぉ」
「いやこどもじゃないんですから、待ちますよ」
灰音が憤慨している、それもそのはずだろう、俺達も舐められたものだ、重大な作戦行動中に気を抜くマネなどするものか。
「というかやることないならでっどさん一人に任せてみんなで戦えばよかったんじゃ」
「…だまれDaydo、それは俺も薄々気づいてたが言わなかったことだ、今戻って加勢したら全員なんかバカみたいだろう、それに死神の実力も見てみたいじゃないか、果たしてこの状況を突破できるのか」
「その死神っていうのは?なんなんですか?」
「このゲームの開始時点から匂わせぶりな文章で示唆されていた存在…人の死を司る死神は最も多くのプレイヤーに手をかけた者を自身の眷属とする、つまるところPK1位と言える死神の手先のレアちはなぜか行方不明になっていた、引退も噂されていたがまさかその辺にうろついていたとはな」
「そうだったんですか!?じゃあレアちさんもランキング1位のプレイヤーだったってことですね!」
「レアちさんが死神だって知ってて勧誘してたんですか?」
灰音が確かめるように聞いてくる、こいつは知っていたんだろうか?
「と、当然だ」
「これ怪しいで、なぜなら動揺してるから」
していない、断じてしていないぞ。
「ええいだまれい、おい、まだ掘り終わらんのか?」
「まだまだですよぅ」
「ふん…」
レアちが死神を連れ歩いているのを見た時は目玉が飛び出るほど驚いた(実際飛び出た)、顔や体を隠してはいるが鑑定スキルを試してみると全身から死神の装備がうじゃうじゃ出てきてビビらされたものだ。
「…おい死神」
「なんですかぁ?」
「UNOよこせ」
―
「見てください雑草さん!アンモナイトですよ!化石あります!そこの壁に!」
「本当ですね!化石ですよこれは!長年取り立て、差し押さえをやってきた私に言わせればこれは高値がつきますよ!」
Daydoと灰音の渾身の主張、確かに壁にはよく見ると地層と古代の貝の姿が、雑草の関心がそちらに向けられる。
「ほんまやなあ、湯掻いたら出汁取れるやろか」
「…取れるわけないだろうがバカ!黄色の2!」
「はい!雑草さんUNO言ってません!」
「ナイスです!Daydoさん!」
「よくやった、ギルド拠点の庭に銅像を立ててやる」
「は〜!?こす!こすいで、これが散々な目のやり方なん?価値下がるで?ギルドの、なぜなら正々堂々戦えないって言ってるのと同義やから!!」
「なんとでもいえ、勝ちゃいいんだ」
勝たなきゃゴミ、利根川もそう言っていたんだから。
「分かったらさっさと2枚引いてくださいね、雑草さん」
「そりゃないやろ灰音ちゃん!こんなんずるやってぇ…?え?やばやばやばやばやばいってなぜならやばいから」
突如雑草の様子がおかしくなる、俺たちの後方を指さして何か危険について共有しているかのようだが。
「その手にはかかりませんよ雑草さん!UNO!」
「アホか!Daydoあんたは言わんでええねん!まだ手札何枚も持ってるやろ!じゃなくて!!!ホンマにやばいねん!なぜならやばいからァ!」
「もう、嘘だったら承知しませんからね、うわやば」
「なに、ほんとにやばいのか?うわやば」
「あ、ホントのホントにやばいんですね?うわやば」
みなが振り向き同じ感想を抱く、後ろから謎の光線が時速80Kmで泳いでくるのだ、誰かの攻撃なのだろうか?レアちはどうしているんだ。
「おい死神!」
「デッドちゃんですぅ」
「まだ穴開かへんの!?急いでや!なぜならもうやばいから!」
「雑草さん語彙力大変なことになってますよ?落ち着きましょう」
「まだまだ開かないですぅ」
「遅くないか?ほんとに詠唱できているのか?ちょっと口に出してみろ」
「いいですよぉ、今ちょうどサビですからぁ」
「サビ?サビってどういう」
Daydoが疑問をぶつける前に死神が口を開き、その疑問の答えとなる魔術要素を唱えだす。
「死神魂ぃ!ここが凄ぃ!地底死神大学ぅ!命名学など幅広い学問を学べるんだぞぉ!ここがすg」
「もういいです…」
どうやら俺たちは理解不能なびっくり魔術が完成するのを待っていたらしい、まぁ人間じゃないやつのやることだしそういうこともあるだろう、驚かせてくれるぜ、でっどちゃん。
「開きましたぁ」
「よくやった、お前の銅像も立ててやる」
「やりましたぁ」
後ろの謎ビームから逃れるように全力疾走し急いで穴からはいでると目の前には巨大な金庫が1つある四方10m程の部屋だった、どうやら目的の保管室にちょうど繋がったらしい。
後方からみなが続々転がり込んできて全員がなんとか出てくる、みな一息ついたといった様子だ、雑草は普段つけているバカでかいコック帽を被り直した、地下洞窟は狭かったからな、その後に謎ビームが穴から飛び出し、それに吹き飛ばされるようにレアちが穴から飛び出した。
「わぁ、レアちさん今のを受けてよく生きてましたねぇ、何があったんですかぁ?」
デッドが落ちてくるレアちを抱きとめながら聞くと、レアちは強引にそれをおしのけて降りながら答えた。
「まぁいろいろね、説明すると1週間と言わず2年かかるよ」
「ふむ、長すぎるな、3分で説明しろ」
「あ!ちょうどレアちさんの戦いを『パープル』が撮影していましたよ!」
Daydoが彼が方から提げているポーチの中から紫色の体色の植物を出す、葉には人間の眼球の表面のようなものがついており、すっごい気持ち悪い、裏側どうなってるんだそれ?というかポーチから顔を出す形になっているが中に土を詰めているのか?ヤバすぎるだろ。
「おおええやん!レアちの勇姿を鑑賞するとしようや!なぜなら気になるから!」
「ええ?緊張するなあ、いいけどさ」
パープルの目から光線が発射され壁に映像が投射される、さながらプロジェクターだ、だが目はそういう器官では無いことを後でDaydoに説明しなくてはならないだろう、今後のクリーチャー作りでバケモンがこれ以上生まれないことを願う。
ー
【ちょっと前のレアち、洞窟内で】
「こいつ!めちゃくちゃ強いぞ!」
「全員ワンパンだと!?どんな攻撃力してるんだ!」
『死神の視線』は1度攻撃を与えた敵に付与される永続効果で、その敵と私はお互いに与える攻撃が確定でクリティカル+防御・耐性無視になる、その効果は1人にしか適用されず、新しい対象に移る場合古い方に付与された視線は削除される、そのため多数との敵との戦いでは使いずらいのだが、そういう時のための心強い味方がいる。
「ャ!」
黒いローブに全身を包んだ、30cmほどの生き物が宙を舞い、敵を手に持った大鎌で切りつける。
このミニでっどちゃん人形はでっどちゃん魂をちょっとだけ無理やり剥ぎ取って作った便利アイテムだ、魔力を注ぐと自動で動く霊体となり、敵をカスみたいな火力で切りつけてくれる、私の所有物なので私がダメージを与えた判定となり、視線が付与され楽に敵を倒せるのだ。
「ャ!」
「はい!」
デッドちゃんが切った敵に狙いを定め鎌を振り抜きその身体を斬り裂く、誰一人として反応できない速さだったらしく、敵が混乱する。
「何が起きた!?」
「バカ!とりあえず攻撃だ!行け!『カームエレキ』!」
魔法使いが攻撃を仕掛けてくるが、私はミニでっどちゃんのもうひとつの使い方を実践する、次の敵を切ろうとする彼女のローブをふん掴み、私と敵の攻撃の間に配置、しょぼい雷が彼女を襲った
「ャ!?ャーーー!」
盾にされたミニでっどちゃんが抗議の声を上げる。
「怒らないで!カームエレキってつまり静電気のことでしょ?ちょっと痛いくらいじゃん」
「ャ」
ミニでっどちゃんが私の手から逃れて敵を無闇矢鱈に切りつけ始めた、死神の視線があちらこちらへと移り変わる。
「…なるほどね、死神からの挑戦状ってわけ!頑張るよー!」
素早くミニでっどちゃんを追って敵の合間を縫い視線を追い続ける、倒れる敵、上がるボルテージ、起きる悲鳴、下がる緞帳、世界が止まって見えるとはこの事だ、これは戦いではなく作業に過ぎない。
「そこまでだ、総員撤退せよ、『創造の記録第2章の断片』ここからは我らが相手する」
「…帰るんだ?」
敵のひとりが神聖魔法で作った光の門が現れ、敵はそこに入って逃げていく、恐らく外に繋がっているのだろう、4人だけが残り、彼らの纏う雰囲気は間違いなく只者では無い、1人もう見るからにして只者では無い奴もいる。
「彼らは君のような凶悪犯に立ち向かうための訓練を十分に受けていなかったと言えるだろう、しかし君は無事鎮圧されることになる、我らの手によって!我らは都市に最も忠実な4人の公務員!その名も………『4公』だ!」
ドンッっ!!!!
「まずは我がゆく!我が名は『ドロギー』!巨人ドロギーだ!」
「声でか、えぐい」
その男はとにかくでかい、体が洞窟の壁の太さと同じ太さだ、腹ばいになってこの穴に体を突っ込んで入ってきたらしい、じたばたと体をよじってはい進んできている、灰音ちゃんが言っていた巨人とは彼のことだろう。
「我らが同士ドロギーはその圧倒的な肉体強化量、つまり自己バフ能力から地獄の戦闘機械!『ヘルバフの巨人』と呼ばれているのだ!」
「なんかアウトじゃない?てかほんとに戦えるの?」
私は巨人の左側に回る、彼は右手を前にして入ってきたのだろう、そちら側の手は突き出しているがもう片方はあちら側に収まってしまっているのだ。
「むっ!卑怯だぞ!酒に爆弾を混ぜるくらい卑怯だ!」
「いやいやいやいや、むしろ大人しく殴られろってほうが卑怯じゃない?」
「むっ!?確かに…」
「クソっ!同士ドロギーが論破されてしまった!逃げろドロギー!ワープエスケープ!」
「くっ!この雪辱はいずれ果たす!」
「あぁ逃げてった」
巨人を運ぶための門に必死で体を詰め込んでいた、可哀想に、というかでかい理由を説明していかなかったな、それが気になるんだけど。
「次は我が相手しよう、我は光の戦士!『FF』だ!我が秘技を食らって生き延びたものはいない!」
「なるほど!それは手強そうだね!」
解説役の顔をしていた神聖魔法使いの男が1歩前に出る、そして素早く魔法を唱えて打ちだして来る、その速度は確かに平均より優れているかもしれない。
「喰らえ秘技!『火技』『創造の記録第3章の断片』!」
「くっ!ミニでっどちゃんでブロック!」
穴全体に逃げ場なく襲いかかってくる巨大な炎をでっどちゃんを盾にして受ける、短い悲鳴と共に彼女は聖なる炎に焼き尽くされて成仏し、人形に戻った、とはいえ魔力を注げば何度でも復活するのだからコスパ◎だ。
「くらえ!斬撃!」
彼は自分の出した炎で状況が掴めていない、そこを素早く切りつけて処理する、魔法使いらしく耐久は低く、死神の視線なしで一撃で倒せた。
「くく、FFがやられたか、だが何度でも言うぞ、奴は四公の中でも最弱!俺の名はZE-N-I-N!俺の奥義はちょいと強烈だぜ!」
次に現れた男、ぜんいんは着物を着て刀を腰に指した男、突如懐から巨大な武器を取りだしてそれを縦に往復させる。
「奥義!扇!かかってこい出来損ない!」
「普通人に出来損ないとか言う!?こんのぉおお!」
バカみたいにでかい扇を振り回すと突風が吹き荒れ私は為す術なく飛ばされそうになるが必死で壁にへばりつく、この程度の勢いの風、避けることは普段なら造作もないが逃げ場がない閉鎖空間では強力な攻撃だ、ダメージは無いもののこのままでは手が出せない。
「ふはは!手も足も出まい!!!何度でも言うぞ、FFが負けたのは彼が弱かったからだ!む?なんか手応えがなくなってきたな、俺の扇が軽いぞ、ん?なに!?」
ぜんいんは自分の扇を見て絶句する、そして叫んだ。
「破れている!風圧に耐えられなかったのか!?この俺が敗れたと言うのか!?安物を買ったのがまずかったか!」
「ふふ、違うよ、何を隠そうそれは私の仕業!」
敗れた奥義の裏からミニでっどちゃんが顔をだす、霊体ゆえ風の影響を受けない彼女が扇を裏から破ったのだ、そして続けざまに斬撃をぜんいんに浴びせる。
「ャッ!」
「なに!?だがこの程度のダメージ!」
「それは致命傷だよ、ぜんいんくん」
彼の元まで『爆縮地』で瞬時に距離を詰めて頭をスライスする、これで三人目。
「あら、あなた本当に強いのね、どうやら私じゃ勝てなそう、でも私の神技で一矢報いるわよ!」
最後に名乗りを上げた女は地に付くほど長い髪を引き摺っていた、頭に折り紙で出来た髪飾りを大量につけている、自己主張の強い佇まいだ。
「もう読めたよ、絶対髪か紙を使う技でしょ、ダジャレは良いって」
「くらえ『封神ユフの遷命弩級』!」
「うわぁぁぁあ!!?神技ああぁぁあ!!」
光の弓を手に取ったかと思うと閃光が走り謎ビームが発射され、私はそれに吹き飛ばされる、例によって閉所ゆえ逃げ場は無い。
「何を持って勝てないと思ったの!?自己評価上げてこおおお!??」
ビームのヒレの部分に乗せられて運ばれていると前方で仲間たちが見えた。
ー
【そして今】
「まあこんな感じだよ、良く撮れてるねDaydoくん」
アングルを見る限りこの紫の植物がこっそり私の戦いを録画していたようだ。
「撮ったのはパープルです、ほら、褒められてるよ」
「…ス…コロス」
「は?」
やばい草じゃん
「…え?でもよく考えたらさっきの映像だとまだ敵1人残ってるじゃないですか」
「まあ多分1回使い切りタイプじゃないか?あの技、よく耐えたな」
「私の魂を盾にしてましたよねぇ…?いやいいんですけどぉ、一応埋めときますねぇ『土の生成』」
「んむ、そしてこれが…金庫か」
クラマが部屋に鎮座する重厚な存在感を放つ金庫を見上げる。
「どうやって開けるんですかぁ?鍵ついてますけどぉ」
「まったく、耳ついてないのか?作戦は聞いておけ」
「…」
「まあ見ときやでっどちゃん!うちが開ける!なぜならうちの鍛えられた鉄拳は鋼鉄にも勝るから!」
雑草ちゃんが一度金庫を殴打した後、うめき声とともに屈んで手を抑えた。
「…あほか」
「おかしいなぁ、なぜならうちホントに『鉄拳』スキル取ってるから」
「お前も聞いてなかったのか?この部屋にはスキル発動不可フィールドが貼られている」
確かにスキルを使えないようになっている、常時発動型のものも無効になっているようだ。
「Daydoさん、お願いします」
「はい!『マスター』が設置します」
この銀行に来るまでの馬車の運転を担当したスライム生物、マスターが黄色の体を揺らして金庫の前まで這いずる、そしてシルクハットを取って中から何かを取り出した。
「なんかどっかで見た事あるなぁ、あれが爆弾?」
「そうだ、対人戦モードで使用されるやつだな、どんな物体の耐久度でもゼロにできる、グリッチで持ち帰れたんだ」
設置された爆弾が唸り声を上げ起動する。
「あれでっどさん、そこにいては…あぁまずいですね」
「えぇ?」
爆弾が凄まじい轟音と共に弾けて金庫の扉を吹き飛ばした、それを設置したマスターと逃げ遅れたでっどちゃんが巻き込まれる。
「あぁわすれてたよでっどちゃん、爆弾は爆発範囲が広いからマスターに設置してもらうんだよ」
「先に言ってくださいよぉ!」
バラバラになったマスターは自発的に再集合していく、でっどちゃんも骨がカタカタと音を立てて元の形に組み上がっていく。
「うわあ!骨じゃないですか!」
「骨だな、死神ってスケルトンモンスターだったのか」
「そんなのと一緒にしないでくださいよぉ、死神界に戻れば美少女の姿に戻れるんですってぇ」
「すごい!金庫の中見て!」
「話聞いてますぅ?」
堅牢な金庫の中に隠されていたのは到底手中には収まりきらない大量の金塊だ。
「よし、行けDaydo」
「はい!『カービー』が回収します」
かなり版権に問題のありそうなモンスターがカバンから取り出されて、口から金塊を吸い込んでいく、説明するとまずくなるのだが、ピンクの球体に丸い手足をつけた感じだ、これ以上は伏せておく。
「これどれくらいあるかな!?パッと見2兆金貨ぶんくらいの価値はあるでしょ」
「そうだな…4億くらいか?」
「すご!……じゃあ」
「この場にいる全員を始末して独り占めしようとか考えてませんか?抵抗しますよ、本気で」
バレている、いるが全然視野に入る案だ、抵抗されても今誰もスキルが使えない状態だし、その条件ならまあ勝てるだろう。
「…よし」
「何がよしなん?怖いで、なぜなら何考えてるかわからんから」
「おいレアち、裏切ったらどうなるか…ちょっと待て、なにか聞こえないか?」
「ん?」
みながクラマの言葉を聞いて耳を澄ます、確かになにか聞こえるような…アラート音?なにかの警告みたいな。
「なんにも聞こえないですぅ」
「ちょっと待ってください、『壁』が聞き取ります」
Daydoがバッグから1枚のA4位の紙を取りだした、恐らくこれも錬金生物なのだろう、それは壁に張り付き、振動して音を増幅させてくれる、繰り返し何度も同じ音声が流れているようだ。
『人の上にある黄金郷が崩壊しました、全職員は黄金郷の再展示を試みてください、それが叶わない場合はキラーテックの襲撃に備えてください、追加のアナウンスがない場合、1時間後にクロト財閥は自動的に解体されます』
「えー超便利だねー!」
この生物がなんのために作られ何に使われているのかは聞かないことにする、Daydoくん…。
「誤解してませんか…?」
「そんなことより今のはどういう意味だ?」
「小麦粉が買えんくなってまうで!なぜならクロト財閥はパーフェクトプラネットの経済を支えている巨大グループだから!」
「エンデ商会から買ってください、それよりもキラーテックの襲撃が来るらしいですよ」
「俺たちはクロト財閥の職員じゃないし関係ないんじゃないか?それより黄金郷がなにかの方が気になる、タイミング的に確実に俺たちが頂いたこれに関係しているだろう」
「カービーは普通の金塊に過ぎないと言ってます」
すこしの沈黙が流れる、じとりとした、なにか嫌な空気、私たちは一体何をしでかしたのだろうか。
「ふむ…?とにかくさっさととんずらするとしよう」
「そう言うと思って地上への穴を空けておきましたぁ」
「えらい死神だ、よし登るぞ」
私たちはみんなで穴をよじ登っていく、少しづつ大きくなる地上から聞こえてくるアラート音、それに怒号や悲鳴が混ざる、私たちの中に口を開くものはいなかった、やがて地上にたどり着き、私たちはそれを目にする、一変した街並みは混沌とした様相を呈している、空は噴煙で濁り、整然としていた家屋や施設が破壊されて見る影も無くなっている、倒れたNPC達の死体を踏みつけるように街を蹂躙しているのはまるでSFのような、実在しえない機械の兵隊たちだ、完全自律型のす 殺戮マシーンであるキラーテック達の無機質な赤い光学センサーが私達を捉えた、そして一斉にお決まりの題目を唱える。
『世界の平等にご協力ください』
『世界の平等にご協力ください』
『世界の平等にご協力ください』
『世界の平等にご協力ください』
『世界の平等にご協力ください』
『世界の平等にご協力ください』
『世界の平等にご協力ください』
「勘弁して欲しいわ…なぜならキモすぎるから!」
「なぜこんなに多くのキラーテックが…!?」
「落ち着いてねみんな」
明らかに異常事態だ、だが焦りはなんの役にも立たない、ひとまず出来ることを。
「戦闘準備出来ていますよ、クラマさん」
「陣形を組め、目標はギルド拠点だ」
【振り返り】『囚人全員脱獄した』大悪党25の手によってバロランの囚人が全員脱獄した、ep24参照
【神聖魔法】『ホーリーフレイム』カルマ値の高さ、つまり日頃の行いに比例してもりもり強くなる、4公のものともなれば当たったら大体の敵は消滅する。
【勢力】『キラーテック』平等がどうとか言って襲ってくる謎の機械兵器集団、多くは動物の名前を与えられているがその姿はモチーフとかけはなれている、例としてキラーカマキリ、キラーライオンなどなど、唯一判明している情報としてその出現条件は一定以上の資産を有するプレイヤーの中からランダムというもの、だがその目的や由来などは不明




