異常性を個性と濁した罰か、あるいは多様性という魔法の代償か
前回のあらすじ
レアち、死神に就職した
私はイシャやカジヤが去ってしまったギルド拠点で寂しくでっどちゃんと次の相談をしていた。
「でっどちゃん、次のエモノの場所を教えてよ、いっぱいお金もってそうな奴」
「うぅん〜、しけた人しかいませんねぇ……」
「いやもうさ、マップ全土どこでもいいから」
でっどちゃんは死神の能力で世界中のプレイヤーの位置や情報を手に入れられる、そして私は『爆縮地』でどこへでも瞬間的に向かうことが出来る、このコンビでかつてはぼろ儲けしたものだ、1ヶ月で1億、大変だけど多分頑張ればいける、まあもう2週間は過ぎた訳だが。
「狩りの相談か?レアち、それよりもいい話があるぞ、お前の実力を見込んで特別に話してもいい」
「クラマさん?」
いつの間にか入ってきていて会話に割り込んできたのは散々な目のギルドマスター、クラマだ、こんな怪しい話をどんな顔して持ちかけているのか、あいにく狐の面で表情は読めない。
「ちなみに何やるつもりなんですか?ギルド戦争とか?」
「ん、銀行を襲う、ギルド戦争は今度やる予定だ」
「銀行強盗ですかぁ?レアちさんのギルドは景気いいですねぇ」
「そうだろう、散々な目の初ギルド活動だ、派手にやる」
「ん〜、いいですね!行きましょう!」
「くくく、話が早くていい、メンバーは雑草とDaydo、俺にお前にそこの黒いの、後ギルド外から1人加わる予定だ」
「了解です、いつ始めるんですか?」
「今からだ、既に外にメンバーを待機させている、行くぞ」
そう言ってクラマがギルド拠点のドアを開く。
「急ですねぇ」
「確かにね……みんなよろしく!」
外に出て待機していたメンバーと顔を合わせる、ギルドメンバーの雑草ちゃんやDaydo君、それにもう1人のメンバーというのも見知った相手だった。
「お久しぶりですね、レアちさん、今日はよろしくお願いします」
「灰音ちゃん!?待って待って!期限はもうちょっと先だよ!」
灰音ちゃんは私が今負債を抱えているエンデ商会の戦闘部隊『スクアッター』のメンバーだ、業務内容は戦闘行動で金になること全般な訳だが、その4割くらいは借金を背負ったプレイヤーを拉致してPK可能エリアまで引きずり追い剥ぎするというものである。
「ふふ、安心してください、レアちさんの督促部隊は既に編成されていて、それは私じゃありません」
「なぁんだ良かった!灰音ちゃんを返り討ちにしたら大変なことになるからね」
私に借金を背負わせた憎き灰画君は灰音ちゃんの兄であり、重度のシスコンでもある、どんな事情があるにせよ灰音ちゃんをキルしようものなら軍団を率いてやってくるだろう、そうなればエンデ商会にとって大事件だろう、大人数を動員して私に狩られることになるから、というか最悪灰音ちゃんを狩って灰画君を釣り上げて大儲けしよう、うんそうしよう。
「最悪の計画ですぅ…」
「ホンマやで!灰音ちゃんに手出したら例えレアちちゃんでも許さんよ!なぜなら彼女はうちの友達やから!」
どうやら口に出ていたらしい、あせあせ
「雑草さんは今日あったばかりですよね?」
「Daydo君は細かいこと気にしいやなあ、とっくにみんな友達や!なぜならうちの料理を褒めてくれたから!」
「美味しかったです」
「ふっ、雑談はそこまでにしてもう行くぞ、時は金なりと言うからな…さあ乗れ、馬車を用意したのだ」
「おぉ!豪華な出来やな!うち馬は大好きや!なぜなら馬刺しはおいしいから!」
「僕も好きです、なぜなら良い性能のカードが多いから」
「豪華というより厳重?なぜこんな護送車のような馬車を?高かったのでは?」
灰音ちゃんの言うとおり、ただ移動のためだけならここまで硬そうな馬車を借りてくる必要は無いはずだ、鋼鉄製の車体に分厚い窓が嵌められている、なんかタイヤとか8個着いてるし、スレイプニルかな?
「まあいいじゃない!計画も説明してくれるんでしょ?」
「その通りだ、全て中で話すぞ、防音機能付きなんだ」
そう言ってクラマが馬車に乗り込み、それにみんなが続く、灰音ちゃんが後ろでにドアを閉めると外の音がほとんど遮断された、どうやら防音機能があるというのは本当らしい、結構大きめなだけあって6人入っても大丈夫で余裕がある。
「ちょっと待ってください、誰がこの馬車を動かすんですか?一応私ライダースキルを持ってますから私がやりましょうか?」
灰音ちゃんがドアに手をかけるがそれをクラマが制止する。
「必要ない、Daydo、お前が何とかしろ」
「あ、はい任せてください、『マスター』が運転します」
そう言ってDaydo君が手を叩くと煙とともにポンとコミカルな音を立てて彼の膝の上に変な生き物が現れた、大きさはランドセルくらい、黄色のゲル状の体を持った上半身だけの人型の生物は頭にシルクハットとモノクルを付けて紳士風でキメている、付けヒゲもバッチリだ。
「ピオピオピオピオ」
形容しがたい鳴き声を上げてドアから出ていくと、馬に飛び乗り、指のない手を手綱に絡ませ、巧みに馬車を操り始めた。
「え?なんですかあの生き物?ペット?」
灰音ちゃんが私の分の疑問まで解決しうる質問を飛ばした、ギルドマスターや雑草ちゃんは既に見たことがあるのか特に変わった様子を見せない。
「錬金生物です、僕は錬金術師なので彼らのような生物を創り出せるんですよ」
「付け加えて言うなら指示をきかせるなら調教師、都合のいい時に呼び出すなら召喚士のスキルも必要になる、Daydoはかなりの使い手と言えるだろう」
「なんか照れますね…」
「照れてないで胸張った方がええで!なぜなら凄いから!」
雑草ちゃんがバシバシとDaydo君の背中を叩く、少し痛そうな反応だがまんざらでもなさそうだ。
「いいですねぇ、レアちさんも私を褒めてくださいよ」
「でっどちゃんはあつかましさなら誰にも負けないよ」
「えへへへぇ」
「それでいいのか?ええい話が進まんじゃないか!計画を発表するぞ」
「はいぃ、喜んで吹聴させていただきますねぇ」
「言いふらしてどうする、傾聴しろ」
そこから私たちは銀行強盗計画をみっちり詰め込んだ。
【クロト銀行バロラン支部前】
「着いたか、計画通りにやれよ」
「了解〜、行こう2人とも」
私はドアを開けて降りる、それに続いて雑草君とDaydoちゃんも馬車から降りた。
「分かってるで!なぜならうちは計画をちゃんと聞いてたから!」
「僕も聞いてましたよ、戻って『マスター』」
「あ、私はどうすればいいんでしたっけぇ」
「話聞いてない死神もいますと、一緒に来てね」
「あっ、はあい」
銀行は重厚な石造りで貴金属のフレームとガラスのドアから見える中には大きなエントランスが構えられている。
銀行の名前やロゴが盛大に掲げられており信頼感を醸し出している、今日瓦解するわけだが。
私達は銀行内に入って待機する、中はそこそこの人数の客がいるが静かだ、NPCやプレイヤー達が呼ばれるのを待っている、天井付近に目をやると監視カメラが多く設置されておりセキュリティには気を使っている風だ、警備員も巡回しているし奥には詰所のようなものもある。
「あのぉ、私たちは何すればいいんですかぁ?」
「ちゃんと聞いてなよ…説明する時間はないから私の指示通りに動いてね?まず」
ドゴンと轟音が響き馬車が壁から突っ込んでくる、狐面で顔を隠したギルドマスターと猫の面で顔を隠した灰音が乗り込んでおり建物内は悲鳴や怒号で混沌に包まれる。
「強盗だ!全員死ねえ!!『気裂き・倹飩葛』!」
クラマが刀を振ると数発の蛇のような斬撃が現れ、床や壁を伝うように蠢き、辺りを切り刻んでいく、威力はそこまででもないが混乱を生み出すのには充分でありその真の狙いは監視カメラを破壊することである、目論見は上手く行きとりあえずパッと見は全破壊状態だ。
続けて灰音ちゃんが指輪をはめた手をかかげて魔法を放つ。
「全員手を挙げて床に伏せ大人しく死んでください!!『アイスシャンデリア』!」
豪奢なシャンデリアのような形をした氷の柱が天井付近に現れて、重力に任せて落下する、大人しく命令を聞いた客は飛び跳ねて逃げようとするが間に合わない、落ちてきた氷が砕けて飛び散りその破片が細かいダメージを与えていく。
「大人しく投降しろ!」
警備員達が奥からわらわらと湧き出て集まる、その中でも1人責任者のような奴が現れる。
「なんてことをする奴らだ!お前たちも銀行を利用したことくらいはあるだろう、恩を仇で返すつもりか!?我々が無くなったらどうなると思っているんだ!」
「それは今までありがとう、これからは自分たちで何とかやっていくさ」
「ふん、戯言を、お前たちかかれ!!」
「侵入者は2人!囲んで叩くぞ!うおおぉおお!!」
警備員達がそれぞれのスキルで攻撃を行う、よく訓練されているようだ、それぞれのレベルもNPCにしては高く連携も取れている、彼らを倒すのは私でも苦労しそうだ。2人は防御的に立ち回り、時間を稼いでいる。
「分かりましたよ!背後から叩くためにこっそり侵入したんですね!」
「んーん?違うよ、2人は頃合いを見て脱出、私達はこっちだよ、この穴」
灰音ちゃんの魔法で床材を貫通し穴が空いている。
「この穴を掘って保管室に向かうんだよ」
「そういうことやで!しかもうちらは誰にも注目されてない、なぜなら我らがギルマスと灰音ちゃんが注意を引き付けたから!」
「なるほどぉ、え、でも道具はどうすればいいんですかぁ?鎌をツルハシの代わりにとか嫌ですよぉ?」
「そこはね、でっどちゃんがやるんだよ」
「えぇぇ?鎌が汚れるのは嫌ですぅ」
「違う違う前神側とか25とかと戦った時に言ってたでしょ?岩魔法を使えるって」
「あぁなるほどぉ」
「うん、だから私たちに見せてね!でっどちゃんのロック!でっど・ざ・ろっくを!」
「パクリですね…」
約1ヶ月半ほど前からやりたかったやつようやく出来たぜ




