ちゃんと大切なことを書いておいても読めなきゃ意味無いな
前回のあらすじ
カジヤとDYGODNの3人は幻想希石の大鉱山の奥へとたどり着くがそこには何も無かった、しかし引き続き隠された何かを探索することを決断した
前日、このダンジョンの深部をあらかた探索し終わった、今回は古い地図の間違いを修正していく作業、だいぶかったるいがやらねば話が進まない、自称弓使いに書かせることにした、そもそも地図を書くのが俺にとっては苦行なのだ、それを修正する作業なんて1番やってられない。
「実際なにか見逃したものがあるとすればそれはなんだろうな?」
壁に頭をぶつけながら嵐が聞いてくる、驚くべきことに今やうめき声ひとつあげない、これがNPCとは違うリアルな人間の適応力なのだろうか。
「うーん…小さいボスとか?見たことあるか?そういうの」
「私はひまわりのボスと戦ったことがある!大体80cmほどの奴だ!」
「なんだそいつ…」
ドヤ顔で手を使って大きさを示す嵐、だがそれに対してテルがカウンターを繰り出す。
「その程度で勝ったつもりか?俺は10cm程のカブトムシと戦った、高速で飛びまわり誰にも手を出せない厄介なやつだったが、我が致命の一矢により撃ち抜いたのだ」
「すげえな」
「なに!?私はすごくないのか!?」
「いや、うん、ひまわり見ただけだろ?」
「ふっ、上には上があるのだぞ!テル!俺はそれより小さい寄生虫のボスを見たことがあるぞ!その大きさは3マイクロ!寄生された私は脳を食い荒らされる痛みに耐えたのだ!」
「す、すげえ、バケモンだ、キモ」
「はははは!!それほどでもある!あれは本当に辛かった!…本当に辛かったんだ…」
「頑張ったな…!黄緑のドヤ顔魂に拍手!」
「おー、ぱちぱち、ほんとにすごい、それはいいんだけどな、現実的に考えてやっぱボスが隠れてるは微妙な説だな」
「まあ私もそう思っていた、いるなら何らかのヒントがあるものだろう」
「では他にどんな案があるのかね!嵐君!」
「くくく、3時間考えた私の考察を聞きたまえ、まずこのダンジョンでは文書やNPCからの情報を得ることは出来なかった、私たちDYGODNは事前にきっちり調査したから間違いない、クロト財閥はこの鉱山についてなんの情報も持ち合わせていないし、鉱夫達は採掘の難度が高いことや、入場料の問題からこの鉱山を嫌煙している、やはりダンジョン扱いではあるがオリハルコン採掘用のマップに過ぎないという認識が強まっただけだった…がしかし」
「がしかし?なんか見つかったのか?」
「私はモンスターの行動からヒントを見いだした!モンスターの生態からマップの隠し通路を見つけるようなギミックは今までに何度か確認されている、ここもそのパターンの可能性がある!」
「大いに納得感のある考えだな嵐!」
「わかったわかった、もう結論から言ってくれ」
「地下だ!奴ら床に潜って逃げることもあるからな!おそらく階段が隠されている!!」
地下に続く階段、それならスペースを取らない、この手の洞窟ダンジョンに設置された階段を誰も見つけられないなんてことは普通のダンジョンならありえないが、入場料100万のダンジョンを真面目に探索しようというものは少ないだろうから有り得なくは無いのだろうか…
「まあ結局何か見つければわかる事だからな、今話しても仕方ないんだけど」
「そうだな!最高に無駄な時間だった!はははは!!」
地図を書くのに集中していたテルが顔を上げる。
「マップ埋めの進捗は7割と言ったところだ、全く、もう金貨が尽きる可能性があるぞ?早くなにか見つかってくれ」
「そうだな、ギルドの金庫に手を付けたんだから早いとこ…おわあ!!!!」
「な!なんだ!?」
ゴロゴロとものが転がる音と共に嵐の声が遠くなっていく。
「階段から足を踏み外したようだな!今のは絶対痛いぞ!足元をちゃんと見ないからだな!ははは!」
「お前じゃないんだから実際には痛みは無いだろ、ダメージは入るだろうし痛みの情報はあるだろうが…行くぞ」
テルが先頭になって階段を降りていく、アーチャーの自覚0だ、後ろにいろよ。
「あ、お前の地図は返しておくぞ、カジヤ」
「おう、どうも…まじかあ」
地図の現在地に当たるだろう場所、よく見るとそこにうにょうにょとキモイマークが書かれている、察するに階段マークだろう、書いたやつは相当センスがない、自分しか読めない地図とか価値6分の1だろ。
「『気裂き・双閃』!」
階段を降りると1階とほぼ変わらない風景が広がっていた、嵐が2匹のカニと戦っている、2つの斬撃でカニは2匹共怯んだようだ、しかしいつもなら真っ二つになっていたことを考えると珍しいことではある。
「はァ!『鷹飛刺し』!」
即座に合わせるように蒼月黄緑が飛び出して飛び蹴りを放つ、片方のカニの甲羅にあたり倒れて動かなくなった、続けてもう片方にテルが走り、龍の矢で残ったカニを突き刺す、俺もそれに合わせて攻撃を仕掛けた。
「『白刀斬り』!よし!効果なしだ!」
2人分の攻撃でも硬い甲羅に阻まれたカニにはほとんど効果は無い、来るであろうカニの攻撃に備えたが…
「『気裂き・春一番』」
嵐の斬撃が飛んだ、今までより威力は低いが、発生が速い斬撃でカニが狙いを変える隙を狙ったのだ。
「おおすげえ!そういうのもあるんだな!」
「ふふっ、当然だ、テルとカジヤは有事まで後ろで見ていたまえ…しかし2階に入って敵が一気に強くなったな、まさか気裂きを耐えるとは…」
「その分ドロップもうまいぞ!…それじゃとりあえず3階が無いか確認しておくか」
「なに!?どうやって確認するんだ?カジヤ君!」
「まあ見てなって、床抜けにはコツがいるんだよな、よいしょっと」
軽くジャンプして力を込める。
「うん、抜けられない、ここより下は無いな」
「2階しかない構成か、敵の強さの割に小さく感じるな」
「1時間で攻略するからじゃないか!?これだけ広いダンジョンを1時間は厳しいな!」
「…いやそれを忘れてたな、今40分ほどかけているからあまり時間は残っていないぞ」
「階段周辺の地図を書いていこう、テル、頼めるか?」
「俺よりカジヤの方がスキルが高いだろう!なぜやらない?」
「やだ!めんどい!」
「はあ…まあいいだろう」
「それにしても階段があるなんて情報は聞かなかったな、素晴らしい発見だ!もうドヤ顔できるんじゃないか?」
「だから?と言われて終わりだろう、必ずボスを発見しなくてはな!」
「まあここからを探索しようっていうのは俺様たちが初だろうな」
100万は大金だ、普通にオリハルコンを買う方が大抵は安く済む、最高効率で採掘しようとエンデ商会の探索チーム『スペランカー』がマップを制作したこともあった、当時俺もそのプロジェクトに携わったが(俺の地図はその時貰ったもの)結局採算は取れなかったらしい。
「よし!じゃあみんな!進めるうちに進めるだけ進むぞ!」
「うぉおお!」
【ビッグ・ダンジョングラブ・オリハルコン】
「ガチでデカすぎる!!」
「苦戦させられそうじゃないか、面白い」
見上げると首が痛くなるサイズ感のカニが空洞に鎮座していた、これデカすぎて出口から出られないやつだ、とはいえ倒さなければ進めないのもまた事実、何よりも
「こりゃ絶対山ほどオリハルコンをドロップすんぞ!」
「ハサミが小さいから押し潰し攻撃が来るな」
テルが言うと確かにその通りにクソデカカニが転がってこちらを轢き殺そうとするがすかさず蒼月黄緑が間に入る。
「『海星面押し』!」
蒼月黄緑が両手を前に突き出して体でカニを止める、そして嵐が先程から溜めていた刀気を解放した。
「『気裂き・天喰い』!」
空気が唸り、空間が捻れる、それが動いてカニにたどり着いた時、まるで抉ったように体が削れて消し飛んだ。
「うぉぉ!こりゃドロップにも期待でき!…うん?」
「すまない、この技は敵のドロップアイテムを損壊させるんだ」
「う…まじか…急いでるから仕方無いな…無いわけねえだろうが!俺が着いてくる理由を奪うんじゃねえ!」
「ごめんてえ」
「でもこのカニ中身スカスカだぞ、どうせ大したことねえよ」
「うわほんとだ、甲羅薄すぎだろ」
「…お!そういうことだ!それを見抜いていたんだよ!」
「見えてねえのにか…?ドヤ顔やめろ殴るぞ」
【ダンジョングラブ・オリハルコンもどきもどき】
「…こいつなんだ?」
オリハルコンとは違った光沢の宝石で出来た貝殻を被った生き物が無警戒でずかずか歩いてくる、厚かましくも俺たちの隣を通ろうとしているのだ。
「…う〜ん、トパーズで出来たヤドカリ…だな」
蒼月黄緑が魔物知識に成功してモンスターの名前を特定し、結果が共有される。
「もどきもどきか!最初のもどきがかにでは無いことを示しているのか!?それともオリハルコンでは無いことを示しているのか!?どっちなんだろうな!?」
「いや心底どっちでもいいだろ…」
「うむ…行ったな、先に進むか」
「良かったのか?トパーズと言えば需要の高い宝石だぞ?あのサイズならオリハルコンよりよっぽど高価だろう」
「…あ…あ〜!!!!!!」
「名前のせいでそんな思考に至らなかったな!やられた!ははは」
「何笑ってんだ黄緑!追いかけるぞ!」
「諦めろ、アイツ通り過ぎたあとは全力で走っていた」
「なんて小賢しいカニっ…!」
あほ面を晒した目隠しに仕方なくツッコんでやることにする
「ヤドカリな」
【トラッパー・ダンジョングラブ・オリハルコン】
「なんだあのカニ!?踊ってる!」
「本当だな!愉快なやつじゃないか!はははは!」
蒼月黄緑は能天気なやつだからああいう陽気なカニとは気が合うだろう。
「なにか投げたぞ」
テルが上を向いて言う。
「なに?何も見えない」
「そりゃお前は何も見えないだろ…確かに保護色で隠れてるけどなんか投げたな」
あたり一面に投げられた物が散らばる、俺たちを取り囲んだ謎のものは目を凝らさなければ見えない、投げるだけ投げて満足したカニは逃げていった。
「うむ、良いダンスであった!では行くか!」
「あっおい待てそれ多分」
カチッ!
「うぐわあぁぁあ!!!!?!!!!!」
大爆発が起きた、吹き飛んで床に落ちる蒼月が痛みにもだえている。
「ぐあぁぁあ!ぐっ!この痛みは!まるで身が焼けるようだ!!くっ!」
「焼けてる焼けてる、焼けてるよ」
しかし吹き飛ばされたことでカニが作った爆弾エリアを抜けたようだ。
「あつつっ、君たちは気をつけたまえ!私は強靭な精神を持ち、耐久力も高いから耐えられたが君たちでは一溜りもないだろう!」
「いや精神力は無くても問題ねえんだよ、お前が自分から削りに行ってるだけで」
「ふん、俺は目が良いから問題ない」
そう言ってスイスイ歩いていくテル。
「ふざけんな!俺にも場所を教えろ!」
「そうだ!私にも教えろ!」
「お前は教えられても分かんねえだろ…てかどうする気だよ」
「天に任せる!私は行くぞ!」
「ふざけんな!お前が抜けたらこの先どう戦うんだよ!いいか!目開けてゆっくり安全なところを踏んでいけば」
「安全なところを踏めば助かるからさあ踏もうでは誇りある人間になれない!」
「どんな理論だ!?どんだけ目開けたくねえんだよ!手引いてやるから着いてこい!」
「むっ、それならいいだろう、君に託そう」
「ハァっ、!」
「カジヤ、あと10分しかないんだぞ、早くしろ」
「ふざけんな!お前が道教えりゃ済む話だろうが!!」
結局俺は神がかり的な観察力とナビゲートで五分ほどで抜けることに成功した。
【クワトロシザース・ダンジョングラブ・オリハルコン(別名・阿修羅蟹)】
残り五分でたどり着いた玄室、そこに奇妙な敵の姿あり。
「ハサミが4本…実質4対4ってとこか?」
4本のハサミを持った怪物カニが現れてハサミを打ち鳴らし威嚇してくる、しかしなんとも滑稽な姿だ、明らかに欠陥を抱えた構造である。
「なんで全部右側に付いているんだ…」
嵐が呆れながら言う、本来カニは両手にハサミを持っているものだが、こいつは右側に4本の手、左側には何も付いていない、アンバランスでシュールな見た目だ。
「これでは分類学的にはカニでは無いな!はははは!」
「そうなの?知らねえからそれじゃ笑えねえけど」
「とはいえ楽に倒せそうだぞ、どれどれそうれっと」
嵐がカニの左側に体を寄せようとする、しかしカニはそれに対してたどり着かれる前に体を90度回転させて対応した。
「…うん?…え!?その手があったかぁ!?」
思わず叫んでしまう、カニが横を向いたことで右側がこちらに向き、4本のハサミが向けられるらそして器用に動かしての攻撃を行ってくる。
「このカニ横向きで戦うつもりか、剣士のスキルの『カニ歩き』のように」
テルの冷静な分析が入った、それでまあ間違いないだろう、あえて突っ込むとすれば剣士のスキルのカニ歩きの方がカニのように戦っているということだが。
「クッ!『ツバメ返し』!」
ハサミによる攻撃を一刀の元に受け、翻すように反撃を行う攻防一体のスキル、ツバメ返し、しかしその反撃をカニは別のハサミで受け、そのうえで更に2本のハサミが残っているのだ、剣士としてはやりずらい相手だろう、そのうえ嵐は近づいて自分の得意な距離から離れてしまっている。
「はァ!『獅牙突』き!」
蒼月黄緑が残り2本のハサミを引き受ける、しかし攻め手が足りないといったところだ、カニの巧みな間合い管理で思うように戦えていない。
「ふむ、もう時間もないし、使ってしまうとしよう、我が致命の一矢を受けよ…『龍牙』!!」
テルの弓にルーン文字が浮かび上がり、本来の輝きを取り戻す、テルによれば龍の牙から作られたと言う龍の矢が炎を纏って放たれ、カニを一撃で焼き払った。
「ナイスだテル!まさか私としたことが不用意に近づいてしまうとはな…お、面白そうなアイテムがドロップしたぞ」
嵐の指した場所を見ると4本のハサミが落ちている。
「阿修羅蟹のハサミか…これ貰ってもいいか?装備品に加工できるかもしれない」
「いいじゃないか!片手に4本持つような設計にはするなよ!はははは!」
「出来たら見せてくれ、さて今回は時間的に終わりだな」
テルが時計を取り出して見ながら言った。
「そうだな!じゃあ今日は終わりにしよう!次は少し時間を置いて3日後ということにしよう、カジヤ!作品楽しみにしているぞ!ではな!」
「おう、じゃあな」
3人が光に包まれてワープする、鉱山から追い出されただろう。
「さあて、俺も帰るとするか…うん?まじかよ…」
【??????】
"そいつ"に一撃で葬られて気づけば拠点に送られていた。
【『散々な目』のギルド拠点】
死亡して次の瞬間には復活、inギルド拠点
「確実に今のがボスだな…まあいいや、さあて3日後までどうすっか!カニハサミか、オリハルコンの装備作っか、むむむ」
「カジヤ、ダンジョンに行っていたのか?」
「あっはは!ボコられて帰ってきたんだ、まあ私もだけど」
ギルド拠点にはイシャとテンイン、じゃなくてレアちがいた。
「おっイシャ、そうだぜ?見ろよこの大量のオリハルコンをこの勢いなら、まあ俺の腕次第で1億は行ける!」
「ならダメそうだな…1金貨も得られて居ない私の言えた事ではないが」
「まあまあ!落ち込むなよイシャ!お前がダメでも俺が代わりに2億稼いでやるよ!」
「ひゅう!やるじゃんイケメン」
「ありがとう…だがそんなことよりも、パーティーを組んで行ったのか?」
「おう!まあな!」
「むう…長い髪の毛がついているぞ、女性がいたのか?」
イシャが俺の服に着いたゴミを取ってくれた。
「おう!いるぞ、嵐っていう侍なんだけどな、超つえーの、楽しかったぜ、でもさそいつやばくてさ、目隠しして地雷原を歩こうとすんだ、仕方なく手を引いてやったりして、他にもおもしれえことが」
「もういいぞ、私は用事があるから失礼させてもらう」
今日あった面白いことを話そうとしたのになぜかへにょへにょになって出ていってしまった。
「…?なんだよあいつ、行っちまった」
「う〜ん、気にしないで、ゆっくり解決する問題だよ」
「なんだよ?訳わかんねえー、心配だから行ってくるわ」
「いいね!行ってらっしゃ〜い」
なぜかニヤニヤしたレアちに見送られて俺はイシャを追いかけ始めた。
【スキル】
『気裂き・天喰い』気裂き派生の技の終着点のひとつ、少しのタメを要求するものの威力は破格、刀気の消費は多くコストパフォーマンスは悪いがそれだけ目を瞑れば非常に高性能な技である、最大の目玉は敵の動作を阻害する異常効果、『損壊』を付与すること、ただし損壊状態の敵からのドロップは減少してしまう、ボスが落とす宝箱には影響しない。
『ツバメ返し』攻撃を防ぎながら反撃を行なう刀限定のスキル、これのためだけに刀を持ちたい程の有能スキル、物理攻撃なら何でも防げる上に判定が甘く簡単に使えてビジュアルが良いという利点もある。
『鷹飛刺し』
高く飛び上がり、空間を蹴ることで機動し、刺突属性の足刀攻撃を行う、鷹の動きを観察し自分のものにする、という習得条件が不明瞭なために習得にセンスが必要だが、蒼月黄緑は鷹に突き刺されたり連れ去られたりすることでそれを解決した、発動してから攻撃するまでの自由時間に空間を蹴って飛翔することが可能で、緊急回避や追撃に使える、また格闘家には取りづらい刺突属性を持てるのも有能ポイント
『海星面押し』両手を突き出すことで自身に極大量の『耐圧』を付与する、ただしその間身動きができない、実際に潰されることで習得した。
『カニ歩き』人間の体の構造的に横を向いた方がリーチが長くなる、という思想の元生み出された闘法、これを習得して横を向いて戦うとバフを得られる、しかし強いわけが無い上ほとんどのスキルと競合するため滅多に用いられない。




