踏めば助かるからさあ踏もうじゃ誇りある人間になれない
【前回のあらすじ】
PPT(Perfect Planet Tournament)に参加するためチームに所属したムラビトは5Killについて学び始めた、しかしそもそもメンバーがまだ揃っていないという問題も残っている。
あれから1週間程の間有橋と辺銀は未だにメンバー集めに奔走していた、俺は2人のうち片方に交代で対人戦の練習をほとんど常に受けさせられており、我ながらなかなか戦えるレベルになったと思っている、辺銀には『強めのカカシ』有橋からは『立派なトロール』という評価を貰ったくらいだ。
しかし2人ともさすがに自分たちの悪評を甘く見ていたようでメンバーの集まらなさに焦りを覚え2人してスカウトに行ってしまった。
仕方なく俺もギルド内チャットでちょこさんをスタジアムに呼び出し、彼女が来るまで適当な試合を観戦していた。
「ムラビトさん、なんのご用ですか?」
「ちょこさん、お聞きしたいことがあって、PPTっていう大会に参加する予定はありますか?」
「あいやないですけど…もしかして」
「はい、ちょこさんにチームに参加して欲しいんです」
聞いたところによると、ちょこさんのMPは5000あるらしい、俺が今1600、有橋が2500、辺銀が2900程だそうだが、2人曰く3000超えたら人間じゃないそうだ、こいつ人間じゃないんだろうか。
「えっと…ごめんなさい!大会には出ないつもりでして、私じゃ役に立てるか分からないですし…」
「そうですか…いえ大丈夫なんです」
断られてしまったか、とはいえダメ元だったのでギリギリかすり傷だ、彼女が他のチームに入らないことをしれただけでも良かった。
「ムラビト〜、まじでメンバー集まらないわ!はは!」
「バシの顔見るだけで全員引き気味だしな…ムラビトの方はどうだった…あぁ今やってるのか」
有橋と辺銀2人が戻ってきた、どうやら芳しくない結果に終わったようだ、俺も2人に返事しようと思い向き直る。
「実はちょこさんは「…ります」」
「「「え?」」」
ちょこさんが何かボソリと呟いたので俺たち3人は聞き直した。
「入ります!ムラビトさん!みなさんよろしくお願いします!」
「マジ!?俺有橋ね、よろしく!」
「俺は辺銀、よろしく」
「はい!ちょこです!よろしくお願いします!」
「…ぇえ?」
とりあえず4人目は集まったみたいだ。
「早速で悪いけどさぁ、今から逆面接行こうと思って」
「逆面接?」
バシの発言に俺は思わず聞き返した、どういう意味だ?
「向こうから申し込みなんてマジで来ないしさあ、来てもなんか逃げちゃうし、こっちから行こうと思って、適当にカジュアルマッチ入ってマッチしたヤツ片っ端からスカウトしよっかなって」
「名案ですね!どんどん行きましょう!」
「そうか?迷惑行為だろ」
何故かハイテンションなちょこさんに対し辺銀の反応は冷ややかだ、俺も常識には微妙にかけてると思ったが…
「まあなりふり構ってられないもんな、いいんじゃないか?」
「よし!そうと決まれば行くぞ!」
「どうせならそれなりに分かってるやつがいい」
有橋と辺銀が受付に向かって行く。
俺も着いていこうとしたところちょこさんに引き止められて興奮気味に話しかけてくる。
「ムラビトさん!どうやってバシさんと同じチームに入ったんですか!?」
「え?普通に掲示板に募集貼ってあったよ」
「そんな…!最近スタジアムに入ってもいなかったから気づきませんでした!一生の不覚です!でもムラビトさんのおかげでバシさんと同じチームに入れるなんて!ありがとうございます!」
「いや…うん、う!ん!頑張ろう!」
「はい!…あっでも私チーム組んでやる経験無いので…不慣れですが、頑張りますね」
「…ちなみにそれはなんでか聞いていいやつ?」
「えっと、じつは」
「ムラビト〜!ちょこさん〜!2人とも早く来て〜!マッチした!」
「今行きまあす!!」
バシに呼ばれてちょこさんは一瞬で駆け出して行った。
「あ…まあ俺もいくか」
俺も3人を追ってマッチングスペースに入った。
マッチング設定を絞ってこのマップしか出ないようにしてある。
「構成どうしますか?」
「そうだな…1人アーチャーがいればいいんだけど」
「良ければ私やりますよ!アーチャー出来ます!」
「うんありがとう、バシは?」
「メイジ!MD行くぞ!」
「珍しく普通だな…ムラビトは素手固定だから俺も近接で前衛2枚だな」
「え?野良の人も混ぜたら3人になるんじゃないか?」
4人で参加すれば5人目の1人が即席でパーティーになる、いわゆる"野良"だ、黒いローブに黒い画面を付けて全身隠している、何故か手元に爆弾を4つも持っていた。
「いや見た目怪しいな、えっていうか爆弾めっちゃ買うじゃん、塔は2個しかないぞ?」
「私たちの分も買ってくれたんですかね?」
「いや!?これはあれかもしれん!」
バシは何やら心当たりがあるような反応をした、4つの爆弾を使う高尚な戦術でもあるのだろうか。
「それが前衛が2枚しかいない理由だ、野良には期待できない、チームのMPの合計は揃えられるから、ちょこで5000、バシと俺で大体6000、ムラビトが1500を考えたら大体12500、敵全員2650あるとしても残りの味方1人ののMPは750しかない、そんなんどう頑張ってもトロールだろ」
辺銀が装備を選びながら喋っている、しかし自分の周りで行われていることに気づけていないようだ。
「辺銀?多分そんな事解説してる場合じゃないぞ?お前大変なことになってるって」
「はあ?」
辺銀は5人目の手によって4つの爆弾を付近に設置されている。
「…?は?なんだこれ、動けん」
「きっ!決まった!!『ボムポジ』!!」
「ボムポジってなんですか!バシさん!」
「『パーフェクトアリーナ』時代に発見されたテクニック!ボムを塔以外に設置すると不発弾になって見えない壁を生成するだけのゴミになる仕様を利用してボムを複数購入!設置して部屋を封鎖するテクニックである『ボム壁』!その派生系がマップの壁とボムでプレイヤーを閉じ込めるボムポジ!こいつ!古来からのベテラントロールだ〜!」
「さすがですバシさん!」
「ふざけんな!!どうすりゃいいんだよこれ!」
「ラウンド終了まで出られないし敵とも戦闘できない!つまり完全に見学!やられたな!!はは!!」
「てことは辺銀が動けないから4対5ってことか?」
「トロールの人戦わないでしょうから3対5ですね、バシさんビルド変えますか?」
「変えねえ、勝てる、俺たち強い」
「もしかして俺責任重大か?」
「そうだなムラビト、前衛の練習だと思って気楽にやれよ、どうせまともな試合じゃねえんだ」
「ありがとう辺銀!よし!頑張るぞ!」
エリアが晴れ試合が始まる、5人目の黒ずくめはナイフを使って単調な動きでひたすら辺銀を囲む透明な壁を斬りつけている。
『i f.e.e.d』
『i f.e.e.d』
『i f.e.e.d』
『i f.e.e.d』
しかも謎の文字列をチャットに送り続けている、辺銀は全力で上を向き続けている、以前トロールに反応したら負けだと語っていたのを思い出した、しかし青筋が立っているしブチギレているのは簡単に見て取れてしまう、なんともわかりやすいやつである。
「よし!じゃあとりあえずCB行こう!ムラビト先頭で!」
「わかった!」
基本的に守備側の潜伏は角度をつけられても見えないように全員壁に張り付くのが基本だ、AB.CB間の通路は大人数で壁に張り付くことが出来ない広さなので索敵の必要性が薄いらしい、辺銀が言ってた。
「誰もいない!」
「OK、俺トーテム無いから2人のどっちかCBに投げれる?」
「…何で持ってないんだ?」
「私索敵矢持ってますよ、撃ちますね?」
そういってちょこさんが撃った矢が壁に刺さりその矢から見える範囲が可視化される。
「CBに敵居ないですね」
「なるほどね…よし、じゃあとりあえず入って…こっちは人数少ないし、3人で速攻でRL通ってRTに入ろう、敵に見られても無視で」
「分かりました」
「分かった」
3人でRTまで走っていく。
「有橋!LSに敵いる!」
「1人RRから出てきましたね」
そう言ってちょこさんは矢を1発放つ、それが吸い込まれるように部屋から出てきた敵の頭に命中し一撃でキルされる。
「ナイス!RTに即設置してそれ守りきろう」
「了解!」
RTに突入して急いで爆弾を取りだし塔に貼り付ける、ちょこさんも爆弾を塔に付けた。
「よし!片方解除されてもどっちか爆発すればいいからね」
「バシさんは爆弾持ってないんですか?」
「買わなかったからね」
「…じゃあ逆に何を買ったんだ?」
「ふふふ、そりゃお前こういうのよ!『ファイアウォール』」
部屋の入口の片方に薄い炎の壁が貼られる
「なるほど!この入口からは入りにくくなりますね!」
「そういうこと!片方だけ見てればいいよ!3vs4ならワンチャンあるね!」
「なるほど!強いな!」
「騙されんなムラビト!通る時にカスみたいなダメージ入るだけの魔法だ!何でちょこさんまでトロールに加担してんの!?」
VCで辺銀の声が飛んできた。
「…ちょこさん?らしいけど?」
「ちょっとよく分からないですけど、バシさんのやることなら多分間違いないと思います」
「そうだよムラビト!俺と辺銀どっち信じんの!?」
「辺銀かも…」
「よし!そろそろ敵来るよ集中して!」
強引に有橋が話を終わらせ、実際に敵がタイミングを合わせて2人ずつそれぞれの入口から入ってくる。
「やっぱり無駄なのかよ!」
「まあでもほぼ勝ってるね!『マジックアロー』!」
有橋がDB側から来た相手に魔法を放ちそれが命中してダメージを与える、弱点等の上振れが無い分安定するのが魔法の利点だ。
「合わせます!」
ちょこさんの射撃が怯んだ相手の隙をついて追い討ちのように首に刺さってさらに1キル。
しかし後3人の敵が別方向から同時にやってくる。
「どっち止めればいいんだ!?」
「2人の方!ムラビトが死ぬほど頑張れば行けるよ!」
「了解!うおおお!」
2人に囲まれてボコボコに殴られて即死、有橋とちょこさんは敵の1人を仕留めたようだが、後衛2人では難しかったようで2人も倒され爆弾を解除されてラウンドは敗北、今度はDSにリスポーンする。
「ごめん無理だった!」
「大丈夫大丈夫!ボムポジされないように動きながら買い物してね!」
「分かってる」
「そうか、忘れてた」
「正直面倒ですね…」
『i f.e.e.d』
「でもバシさん、いくらなんでも後衛2人と前衛1人で塔部屋に立てこもりは難しかったですね」
「まあね、勝ちたいなら孤立してる敵を襲撃して行く方が可能性はあった」
「でも部屋に誘い込むことで情報を取ったんだろ?敵は全員近接ってことがわかった」
「それ俺が今言おうとしてたやつね!」
なるほど、それを活かせばかなり動きが変わってくるかもしれない。
『なんか空気悪いし俺飯食いに行くわ』
突然今まで聞いたことのなかった声が飛んできた。
「?トロールの人ですか?」
「違うみたいだな、敵の1人がVCを全体に晒してるみたいだ」
『はあ!?ふざけんな!』
なんと聞き覚えのある声だろうか
「ムラビトさん!今の声って」
「あぁRONだ、間違いない」
「え?ムラビト君もRON君のこと知ってんの?」
「え?まあ同じギルドだし、有名なやつなんですか?」
「そうだね!立ち回りが終わってて集団戦が適当でも対面さえ強ければMP2500行けることを証明した面白プレイヤーだよ、RON君をチームに入れてもいいな」
「まあ悪くないか…」
悪くある、絶対嫌だ
こんなまともじゃないやつチームに入れるべきじゃない、現に今日も治安の悪い叫び声を上げている。
『いやふざけんななのはお前の方だろ、部屋から出た瞬間弓当たって死ぬ戦犯じゃん』
3人目の知らない奴が会話に入ってくる、しかしさっきのラウンドで1度も合わなかったのはそういう事か。
『んだとてめえ!』
『そういう雰囲気悪いのやめましょう』
さらに4人目、脳がテンパりそうだ、向こうはなかなか派手なことになっているらしい、勝ったにもかかわらずである、不思議な話だ。
『『俺以外全員トロールだな、うん』』
「え!?今の偽バシさんじゃないですか!?」
「に、偽バシ?」
「バシの声録音してそれで喋る変なやつな」
「なんだそれもうめちゃくちゃじゃん…」
『んだとてめえ!誰がトロールだ!?』
『『お前お前お前お前ぇ!』』
『この野郎!』
『マジでお前ら喧嘩すんなよ○○○〇!○○○!ゴミ死ね!』
[相手プレイヤーが1人通信を切断しました]
「…えぇ?」
「最低な空間に閉じ込められてしまった時の対処法があるってわけだ」
「さっきまで喧嘩はやめようとか言ってた人、唯一のまともな人かと思ったのになんか豹変して抜けちゃいましたね」
「あとRONと飯行ったやつ、偽バシ、普通の暴言厨か」
「もういいや、適当に2連勝してRON君だけ適当に勧誘して次行こう」
「あ!動くの忘れてました」
ディフェンス側はアタック側より先にバリアが晴れるために先に配置に着くことが出来る、しかしラジオに夢中になっていたらアタック側と同じ時間にスタートになってしまった。
「あ〜、いいやDB待機でタワー設置来たらそっちに突っ込もう」
「完璧な作戦ですね!」
「ゴミだろ」
ガンッ!ガンッ!ガンッ!
「えなになに!?なんの音?」
「味方のトロールの人がナイフで壁殴ってますね、ああやって私たちの場所を敵に教えてるんですよ」
「え?遠くからも聞こえてくるぞ」
味方の黒ローブがひとしきり床に爆弾を設置して諦めて壁を殴り始めたのは認識した
しかし遠くからも同じような音が聞こえてくるのだ。
『なんで壁叩いてんのお前?』
RONの抗議が聞こえてくる。
『そんなことも知らないの?位置教えてんだよ』
『やめろや!』
『『トロールは辞めましょうよ!時間が!!もったいない!』』
「お前そんな白々しいこと言ったことあんの?」
「あるようなないような…敵CB前通路っぽいね」
「そんな遠くの細かい音が聞こえるんですね!流石です」
「まあね!耳いいから」
ちょこさんがDBからCBを覗く、1本の矢を番えた普通のものより長く、ほのかに白い光を放っている。
「うお、なんか強そうな矢」
「2000金貨する『月射ち』って名前の矢だな、ちょこがMP5000を手に入れた要因の一つでもある、筋力しだいで弾速が飛躍的に伸びる、極端なステ振りをすれば」
RONがCBに顔を出した、そして矢に貫かれて次の瞬間には倒れていた。
「1人やれました!」
「どれだけ距離があっても頭なら1発、言うは易しの典型例だな」
『やばすぎだろ、警戒なさすぎな』
『おめえが場所教えるからだろうが!!』
『頭守るとか避けるとかあるだろ』
「あれを避けるは無理だな、まあ警戒が無さすぎるのは事実だと思うけど」
『『喧嘩はやめて!殴るよ!?ラブピで行こう!』』
『いやいや、喧嘩とかですらないから、これただの下げランだから』
『『会話できね〜!電車とか好き?』』
『電車…がなんて?何それ』
「電車しらない奴もいますと」
味方からも敵からも有橋の声が聞こえてくる、とても片方は録音とは思えない精度だ。
「もういいだろう、さっさと終わらせよう」
辺銀が適当に歩き出した。
「え!?警戒しなくていいの?辺銀!?」
「いいんだよ、どうせこんなんばっか」
辺銀に付いてCBに入ると何故か何も無いところでジャンプしている2人組。
『『俺はね〜EID200形が好きかな』』
『…何それ?』
2人の頭に矢が突き刺さって動かなくなる。
「ジャンプしてる相手にも当てられるんだな」
「タイミングずらされるとわかんないですけどね」
そのままDBに入って放置してたご飯行ったやつも矢を刺して終わる。
「マジでかったるいな、トロールの相手すんのも」
「そうですね、ランクならまだしもカジュアルだと勝っても何も無いのに勝負も楽しめないなんて…」
「まあでも次のラウンドとったら終わりだよな?逆に落としたら続くことになるんだけども」
『まじでさあ!お前ら真面目にやれよ!』
『カジュアルで真面目にやる意味ある?』
『『そのために死ねる何か見つけてないやつは生きるのにふさわしくない!…電車とか好き?…電車とか好き?』』
『ただいまぁー、カツ丼美味かったわ、てかまだ終わってないのな、草』
どうやら飯行ってたやつも帰ってきたようだ、とは言っても真面目にはやらないだろうが。
『『うひょー人のカスしかいねえ!…電車とか好き?』』
『うるせえ!電車は好きだ!』
「「「「『『『!?』』』」」」」
『電車好きが馬鹿にされてるのは知ってる!普通のやつには理解できない趣味だってのも!倫理的じゃないってことも!色んなやつに頭おかしいって言われてきたし迷惑かけてきた!それでも!!俺は電車が好きじゃないなんて言えない!!!』
「「「「『『『『…』』』』」」」」
『バカにしたっていいよ、早く終わろう』
『馬鹿になんてしねえよ』
『…え?』
『本気で好きになれるものがある、いい事じゃねえか、俺だって対人戦が好きな変なやつだ』
『『やっぱり〜電車って〜見る分にはサイコー!』』
『今帰ってきたばかりだからマジでなんもわかんねえけど熱いじゃん、勝とうぜ』
『あぁ!勝つぞ!誰にも俺たちを否定なんてさせねえ!』
『『勝利に向かって出発進行!』』
『絶対に勝つ…この4人で!』
『いえーい!がんばりまあーす、IGLは俺に任せろ、とりあえず敵の情報をくれ』
「…なんか盛り上がってんな」
「IGLてなんだ?」
「インゲームリーダーの略だ、司令塔的な奴だな、チームがそれぞれの考えで動いたら勝てるもんも勝てないだろ?相手の飯行ってたやつがIGLやるらしいな」
「面白いじゃん!真剣勝負!」
有橋は燃えているようだ。
「よし!どこから攻める?」
「そうだな、LLに3人、RLに2人で分け」
『『強敵と書いて、友と読む…俺と決闘しろ!LRにて待つ』』
「今のセリフ!元のセリフを途中で切ったものですね!正しくは」
「いい、いい、バシオタクいらないから」
「どうするんだ?辺銀」
「向こうの発言に乗せられて戦術を変えるなんてデータキャラの名折れだ、普通に行くぞ、普通に」
「普通に?甘えるなぁ!」
「え?なんだよバシ」
「!?バシさん!?もしかして!?『手出し』ですか!?」
「手出しはいらない!」
「キャーーーっ!!手出しきた!きたきた!生手出し!ファンサえぐい!」
「言ってる場合か!バシを止めろ!!」
有橋がLRに突っ込んでいく、決闘に応じるつもりだろう。
「有橋なら勝てるんじゃない?」
「メイジでタイマンに勝てるわけないだろ!そもそも!」
「おらあ!相手は誰だ!?この俺が負けるかあ!」
『『強敵と書いて友と読む…そんなわけねえだろーっ!死ねぇぇぇぇ!!!!』』
「あれです!本来のセリフですよ!」
「言ってる場合か!絶対勝てバシ!」
「頑張れ有橋!」
「『マジック…』うお、これ無理」
[味方が倒されました]
「バシさん!?」
「バシ!?」
「バシー!?」
『『正々堂々てのはなあ!バカの言葉なんだよおお!!』』
『ははは!ムカつくバシをやってやったぜえ!』
『これで4対3、えぐい弓使いいるし警戒していこう』
『弓使い?人数差勝ってるんだからビビる要素なくね』
『お前は飯行って見てなかったから言えるんだよ、まじでヤバいんだって』
「あいつら同じとこで喋ってんな!やっぱそもそもほんとにタイマンな保証なんてねえし!バシもドア開けた時点で逃げろよ!なんでちょっと戦おうとしてんだよ!」
「辺銀!どう動くんだ!?」
「…そこで壁切り続けてるバケモンがいるからこっちの場所はバレる、人数差が出にくいLLに、急いでいくぞ、今こられたらマズイ」
「いいですね!じゃあそれで」
だがそう決めて俺たちが動こうとする前に向こうから大声を上げて突っ込んできた、なんの作戦もない突進のように見えるが。
「ち、DBには退路がない、やるしかないぞ」
「っ!頭守られてます!」
敵は全員が頭だけを守るようにして、あるいは味方の後ろに隠れて突っ込んでくる、ヘッドショットワンパンだけを避ける動きだ。
『おらあ!死ねぇぇぇぇ!』
RONが俺に向かって剣を振り下ろす。
「くっ!こいつ強いんだよな!」
俺はRONに反撃をしようとするも上手くすり抜けられ通られてしまう。
「しまった!」
「ちっ、無理か」
辺銀は2人の相手を止めていたが、それでもちょこさんが2体1を作られてしまい、やられてしまう、敵には何本か矢が刺さっているが、事前にポーションを飲んでいたのだろう、少しの回復が入ってとても有利な状況では無い。
『スイッチ!』
敵のカツ丼男が指示を飛ばすと敵の動きが変わる、3人が俺に向かってきてRONが辺銀の前に立つ。
「おいムラビト!まずお前からってことらしいぞ!逃げろ!」
「…無理!」
普通に3人に囲まれて簡単に倒されてしまった、辺銀はRONとの勝負は五分五分だったが、4人に囲まれて一瞬で倒されてしまう。
「ごめん!全然役に立てないな…」
「気にすんなよムラビト、これから成長痛ってことにするぞ」
「あ〜負けか〜!人数差きついなー!」
「バシお前な?お前が作ったんだからな?人数差」
「あれ?全員死んだのになんで進まないんでしょう?」
「…まだトロールのやつが残ってるからな」
『勝ったな、飯食ってくるわ』
『さっきも食ったろ?てかまだ残ってるけどな』
『『4人倒したら勝ったのと一緒一緒』』
『ていうかこいつもトロール?このゲーム終わってるね』
『お前が言うな…まあこいつ見たことない奴だし、雑魚だろ』
「は?」
今日初めてローブのトロールが口を開いた。
「お、女の子じゃん」
「トロール女とか最悪だろ」
『俺上位勢の顔全部覚えてるし、こういう奴って低ランでトロールして何が楽しいんだろうな、下げる程のポイントねえだろ』
「いや知らねえよ、あたしはあんたみたいなゴミ相手にするつもりないだけだから」
「相手には聞こえてないぞトロール女、VC公開設定しろよ」
「なんであたしがやんなきゃいけないの?あんたがやれよ」
「…いや俺がやる意味ないだろ」
「そういうなって辺銀!面白いじゃん!公開したよ!」
「おいゴミ!ぶっ殺してやるからかかってこいよ!」
ローブの女が啖呵を切ると敵の4人は警戒するように陣を建て直した。
『なんかやる気になってるけど、これ誰のせい?』
『関係ねえよ、倒して終わりだろ』
『しかもこいつ装備買ってないし、素手の防具なしじゃん』
『『こいつ!?あえての不買運動だと!?深い!』』
「付け加えると、多分ステも振ってない、見るだけ無駄だな」
「私は即死に賭けます、40000へにょへにょ金貨賭けます。」
「結構だね!じゃあ俺は1ダメージ与えて死ぬに賭ける!ムラビトと辺銀は!?」
「即死の方」
「ええ?じゃあ勝つに賭けるか」
賭博場が開かれて賭けのウィンドウが現れる、即死、勝ち、1ダメージ与えて
「こんな機能あるのかよ…じゃあ勝ちで」
敵の4人が同時に飛びかかる、飯落ち男が突き出した槍をローブは体を半回転させてすれすれで避ける、無駄な動きは一切ない、そのまま槍を掴み取って奪おうとする。
『『他人からポイントを奪って成り上がろうって言う性根が良くない!!』』
偽バシが飛び出して剣で攻撃する、ローブはそれを飛びすさって回避した、その俊敏さはまるで獣のようだ。
「うわすごい!動きキモ!」
「ステだけは振ってたのか…?トロールの一環で速度に全振りしてたのかな」
「そんな感じの動きには見えませんけど…」
「え?じゃあステータス1であの動きってこと?それ凄すぎだろ、対人の人達ってそんなに操作上手いの?」
「そんなわけないだろ、やっぱステータスは真面目に振ってたに違いない」
距離を離したローブに対して電車が追いすがり剣を振るう、しかしローブは軽々と更に下がって電車の攻撃範囲を離れる、そして驚くべきはその後だ、電車の攻撃の隙を突いて急接近し顔を殴り飛ばした、綺麗に入った一撃だがダメージはほとんどないように見える
『こいつ強い!』
『『強キャラ出た〜!!潰すわ』』
『でもステータス振ってなさそうじゃねえか!』
「…そう見えるな」
「やっぱりそうですよね!速度システムの補助が無いからですよ!」
「そんなことより!一撃入ったぞ!しかも見た感じ1ダメージ!勝った勝った!」
「…黙れ、まだムラビトが勝つ可能性がある!」
RONと飯が前に出て連携して攻撃するもそれを間近でいなし、飯に足払いを賭けて転倒させる、それをカバーしようとしたRONの攻撃に対し手首を掴んで攻撃をねじ曲げ、倒れた飯に当てようとする、それがあわや命中しようとする直前にローブの頭目掛けてナイフが飛んでくる、偽バシが投擲したものだ。
『『甘〜い!甘すぎる!考え直してね、人生とか』』
それの効果はあったようでローブは一旦RONの手を離してナイフをキャッチする、そしてRONに一蹴り入れて電車や起き上がった飯の追撃を振り切って安全な位置に立った。
『こいつマジで強え!』
『あぁ、RONより強い奴ってなると相当か』
『『これこれこれこれえ!欲しかったやつ!…分かってるプレイヤー来たね』』
「まさかナイフ投げて解決するなんて偽バシって人も機転効いてるな」
「本物と一緒で魅せプか舐めプしかしないですもんね」
「確かにな、偽バシもそこそこやる奴だ、本物より真面目だしな」
「でももちろん本物の方が強いよな??な?」
「でも1人死ぬほうがマシな選択だったかもしれないですね…」
「俺もそう思ったところだ、武器を渡す結果になったな」
ローブはキャッチしたナイフを構える、さっきまでは一方的に殴れる相手だったのが反撃する手段を持ったことで4人も少し心持ちが変わったようだ、ローブの出方を見ている。
「あれ?何もしなくて大丈夫?殺すけど」
『でけえ口叩きやがって…ステータス1だろ?当たってもカスみたいなダメージしか入らねえだろうしビビることねえよ』
『完全に4人でかかるぞ、油断はなし』
『『今すっごい真面目な顔してる、すっごい真面目』』
4人がタイミングを合わせて進む、しかし短いナイフの射程に4人が入る直前に彼らが攻撃を仕掛けたにもかかわらず、緩んだ動きから突然急加速したローブが先に攻撃を行った、反応出来ずに一瞬のうちに2人の首が飛ぶ、結果を見て推測できたものの、俺にはその光景を目に捉えることは出来なかった、それはおそらくみんな一緒だろう。
「飯と偽バシが死んだ!このひとでなし!」
「首はね…!守られてない首に当てればステータスに関わらず一撃必殺、当然敵も警戒していたはずだが…」
「反応出来なきゃ警戒の意味なんてないですね…」
なおもローブの攻撃は止まらない、まだ残りのふたりも攻めの姿勢から抜けられていないにも関わらずローブは既に次の攻撃の予備動作を終わらせている。信じられない速さだ。
『クソ!あとは頼んだ!!』
電車が体を張って立ち塞がり、RONを庇う、あえて防御を捨て首だけを守る体制で入った為に首はねだけは避けられたが、急所を2箇所刺され、更に2発の斬撃を受けて体力が尽きる。
『どうしろってんだよコイツを…!』
『『対面にだけは定評のあるRON君に期待する』』
『まあ飯食いながら見るわ、当たって砕けろ』
『…頑張れ!RON!』
『うおりゃああぁぁああ!!!!』
RONが両手に持つ剣の片方が振り下ろされる、剣速は鋭く、熟練の経験から導き出した答え、接近するローブの女に対し明らかに早すぎるタイミングでの攻撃、イレギュラーな相手に対する対応は力量の問われる部分だと言えるだろう、その読みは当たり、攻撃は女が辿り着くと同時に届く、しかし簡単にナイフで受け流され衝撃を殺される、しかしRONにとってはまだ終わりでは無いのだ。
『『『『いけえぇぇ!!!!』』』』
『おらァァァァ!!!』
もう片方の剣を用いて二の太刀を繰り出す、アリーナで磨き続けた必勝パターン、自身の確立してきたアイデンティティーそのものを乗せた咆哮はしかし。
がきんとうち鳴らされる金属の音で受け止められた。
『速すぎんだろ…』
2撃目も受け止められたと認識した頃には既に腹部に深々とナイフが突き刺さっている、どころかいつの間に出来たのか深い傷跡がひとつ、悪あがきにポーションを取り出すもそれをナイフで瓶ごと破壊され万策尽きて倒れる。
「カス弱すぎゴミカス」
「やめろ」
「…どうしたムラビト?」
「何アンタ?」
勝負が終わって全員がリスポーンした、俺は女の暴言を止める、よく見れば年端のいかない少女だ、何が人を傷つけるのかもわかっていないのだろう。
「お前が倒した相手はカスだ、初対面の相手に暴言を吐く、ゲームのうまさで人の価値が決まると思ってるヤバいやつだ、だけど真剣だった、そんな風に言うな、相手の好きな物、本気になってることをバカにしちゃいけない、アイツはそれぐらいは出来てたよ」
「…だる、もういいわ」
少女は踵を返して去ろうとする、嵐のようなヤツだった、またどこかで会うかもしれないな。
「待って待って!ちょっと話していこうよ!ほら面接やるよみんな!!」
バシ?俺かっこよく決めようとしたよ?
「お前結局ステータス振ってたのか?ほら事務所行くぞ」
バシと辺銀は少女を引っ張って連れていく。
「…トロールしてた人がチームに入るのは不安ですけどね」
「…確かにな」
仕方なくちょこさんと一緒に3人について行く、もうなるようになれだ。
電車:①公共交通機関、人を乗せてしゅぽしゅぽ走る、ファンの民度がえぐいという噂が存在するが実際話してみるといいヤツらである
②地上を走っては人を狙って轢き倒すミュータント、無慈悲な破壊兵器として恐れられていたものだがその恐怖も薄れて地下では時折娯楽として観察されることがある。




