死神の大鎌が玩具じゃないことを証明してもいいよ
前回のあらすじ
イシャは徒党を組んで蜃気楼の塔に挑むことにした
【蜃気楼の塔・13F】
「そろそろ戦闘は避けていきましょう、『創造の記録第2章の断片』」
Gyが神聖魔法を唱えると、4人の体が一瞬の間発光した、シールドはキャラクターに付与されるバリアの様なもので耐久力には劣るものの汎用性で7倍くらい勝っている。
「敵と戦わずに進むのか?」
「そうだぜ、この辺からもう敵が楽には倒せないんだよな」
「あいつら扉を移動して次の部屋に着いたら追いかけてこない、でも次の部屋にも敵がいるから休む暇は無い、次の泉部屋まで走り続ける」
「なるほどな、了解した」
扉を開くと部屋にいた『ミラージュ・タイガーバード』がいっせいにこちらを振り向いた、トラの体に鳥の顔がついたモンスターだ、正直逆の方が強そうな気がするが、顔に着いた羽で頑張って飛んでいる。
計画通りに敵と戦わずに扉を抜けて進むんでいく、魔法陣を見つけてトラ鳥しかでないフロアを抜けると次は『ミラージュ・フロートピラルーク』浮遊する黄色の肉食魚のフロアに進む、『ミラージュ・ファイアフライ』、『ミラージュ・イエローハイバット』次々にフロアを抜けて行きようやく泉が見つかった頃には既に22Fだった。
「あぶねー!もうちょっとで死んでたわ!」
「よく耐えましたね、回復をしましょう」
「回復は私の得意分野だ、任せてくれ、『創造の記録第1章の断片』」
先頭でモンスターの攻撃を1番多く受けていたメイに回復をかける。
「私にも元気になる魔法をかけて……」
狩るるが白衣の裾を引っ張るので、私は魔法をかけてやることにした。
「分かった、『創造の記録・第1章の断片』」
「もっとお願い」
「もう最大に見えるぞ?」
「ちがくて、走って疲れたから、『がんばってにゃ』みたいなやつちょうだい」
「?」
「気にしなくていいですよイシャさん、狩るるは疲れるとおかしくなるんです、やはり泉には回復効果はありませんか……もう試す必要も無いですね」
Gyが濁った泉に手を入れながら言った、1度目の泉にもなぜか回復効果はなかったが、この泉も同じようだった、見た目は違うのに。
「黄色……?」
「えぇ、11Fでは赤、22Fでは黄、さて、次の泉は33Fにあるのでしょうか、それは何色なのか、今日はたどり着いて調査を進めてみせますよ、ここからの敵は非常に危険な相手なのでこうします」
そういってGyはメンバーを集めて作戦を発表した。
「2階層毎に体力を回復する時間を設けるために敵と戦います、1階層はメイに先頭を切ってもらいますが負担が心配なのでその次の階層は全員で順番に先頭をやります戦うのは2層目の魔法陣が見つかった部屋にします、いいですか?」
「私も先頭やるの?一撃で吹き飛ぶかも」
「そんなに体力が低いのか?」
「ふふ、生命力、筋力、持久力、全部初期ステ」
「どうして自慢げなんだ……?」
それらのステータスは非戦闘時にも疲れやすさに関係するはずだ、利便性を度外視してまで何にステータスを振ったのだろうか?
「『シールド』があるので恐らく大丈夫だと思いますよ、本当にダメな時は言っていただければその都度余裕のありそうな方に率先して前に行ってもらいましょう、みなさん、準備は出来ましたか?」
「あと2時間休みたい…誰かおんぶして、イシャがいい」
「嫌だ、私だって疲れた」
「狩るる、イシャさんに甘えては行けませんよ、メイ、先駆けは任せましたよ」
「了解!」
メイが扉を開きモンスターのヘイトを稼ぎながら一気に突っきる、その後を私たちも辿っていく。
22Fの敵は『ミラージュ・スカイサーペント』、緑の蛇のようなモンスターに羽が生えている。
それらを超えて次のフロアは『ミラージュ・リーフストームヒューマン』木の葉の群れがまるで人のような形を作って浮いている、素早く飛び回っており攻撃を避けるのは難しい。
「これやべえ!結構削れるぞ!」
「魔法陣が早めに見つからなければ戦闘も視野に入れましょう!」
心配していたほど削れる前に3部屋ほど抜けて魔法陣が見つかった、4部屋目なのでそこそこ早いほうではある。
「ん、キモイモンスター消毒、『ファイアウォール』」
そういって狩るるが円状に広がっていく炎上の壁を生成する、その火力は申し分なく触れた葉は燃やし尽くされ、灰になっていく、どうやら特別に炎に弱いモンスターだったらしい、まあ見た目通りだな。
「楽な相手で助かりましたね」
「作戦を変えよう、倒しやすい敵が来た時に休憩するべき」
狩るるが提案した、それにGyも同意する。
「そうですね、2フロアまでに弱点のあからさまな相手が居た時はそのフロアの魔法陣で休憩しましょう」
『シールド』をかけ直し『ヒール』で回復した後に私たちは続けて25Fに踏み込む、『ミラージュ・ジャイアントジェリーフィッシュ』という太った巨大なクラゲのようなモンスター達が道を阻む。
「邪魔すぎるだろ!進めねえよ!」
「参ったな、前が見えない」
「『スプリットウィンド』」
狩るるが呪文を唱えると強風が吹きクラゲたちを押しのけて道を作った、クラゲは動くのが遅く、道を阻むのは諦めて触手で攻撃してくる。
それを避けつつ同じ進行方法で3部屋進むも魔法陣は現れなかった、しかしここまでではなかった変化が現れた、そこに居たのは『ミラージュ・ユグドライアド』、魔法陣を経由していないのにモンスターが変化するのは初めてのことだ。
「Gy!モンスターが変わったんだが!」
「途中からモンスターがひとつのフロアで混ざるようになります!」
「こいつはよく燃えそう、魔法陣の部屋がこいつだったらそこで休憩しよう」
しかし残念ながら魔法陣の有る部屋はクラゲが我が物顔で闊歩していた。
「最悪……7部屋走らされてこんな仕打ち!ひどい!1部屋で上にあがりたい!幸せになりたい!」
このダンジョンの魔法陣の位置はランダム、つまり運次第で早くフロアをクリアできたり、逆に全ての部屋を覗かなければならなかったりする。
「ハハハ!狩るる!立ち直って早く風くれよ!」
「うぅ……『スプリットウィンド』!」
クラゲ押しのけて魔法陣に乗り進むと、次ぎのフロアは『ミラージュ・ギガントスライム』がうにょうにょと轟く。
「スライムなら俺でも楽に倒せるな!ほとんど消耗なしだしこの階は戦って登ってもいいぜ!」
「そうですね、スライムは当たりですし、そうしますか」
メイは大剣を落として腰に着けた短刀を構えてスライムを切り裂く、スライム特攻の武器だろう、見るとGyや狩るるも本と杖を取りだしてスライムを殴っている、スライム撲殺用の杖も売っているらしい、プチプチとスライムが潰れていく、私は手持ち無沙汰になったのでヒールをかけておく。
「楽な階、最高だね」
「そうですね、おや?もう魔法陣ですね」
運良く1部屋でスライムの部屋に魔法陣があり次に進めるようになる、しかし……
「楽な階に限って…」
狩るるはギリギリ幸せには見えない、不思議な話だ、さっきは1部屋を切望していたというのに。
「まぁ早いならそれがいいか、うんそうに決まってるよね」
そう気を取り直してスライムを殴り始めた
、Gyが気の早いことに既にシールドをかけ直している。
「うぅ……もう走らされる…」
狩るるはいよいよ危険な表情をしている、目とかぐるぐるだ、どうやら彼女にとっては厳しい道程になっているようだ…とはいえやらなければならないことに変わりは無い、とにかくダッシュあるのみである
【蜃気楼の塔・33F?】
結局33Fに泉がありそこまでそう苦戦せずに登ることは出来た、戦いよりランニングを強いられることが苦痛な訳だが。
「ふう、33階は緑ですか、回復効果は無し、まあ消耗は少ないですし、今日は44階を目標にここからは全力で戦闘していきましょう、4人ですし前回より進みやすいはずです」
「もう走らなくていい!がんばる!」
「おし!じゃあここからはこっちで行くか」
そういうと突然メイの手元に黒い仮面が現れる、彼がそれを付けるとメイの大剣が変化した、2m程の大きさに巨大化した鈍く光を反射する暗闇色の剣は先端は鋭く、刃はギザギザに刻まれている、側面にはルーン文字が不気味に赤く浮かび上がっている。
「なんだそれは」
「……」
「ふふっ、メイはこうなるとスキル以外で喋られなくなるんだよ、静かでいいよね?イシャ」
「攻撃力には優れていますが耐久面や速度では普段の姿に劣りますからね、ここからは私とメイ、狩るるの3人で敵を倒しましょうイシャさんはシールドは使えますか?この状態のメイは回復できなくなるので」
「シールドはないけどアトラクトなら使えるぞ」
想像の記録第2章の断片は敵の注意を引きつける神聖魔法だ、味方を守るという意味ではシールドの代わりになり得る。
「素晴らしいです、シールドより好都合ですね、ではイシャさんご自身に継続的に使用してください、イシャさんに向かう敵を私たち3人で倒します、安心してください、敵は届かせませんよ、さあ行きますか」
扉を開くと『ミラージュ・ファイトホッパー』、つまりバッタのモンスターが大量に出現する、とはいえ大きさはかなり常識的ではない。
「創造の記録第2章の断片」
それをかけた瞬間先頭のGyに向かおうとしていた虫がまとめて私の方に視点を変える、しかし標的変更の隙を狙ってGy行動した。
「では行きますよ、『創造の記録第3章の終幕』」
Gyがそう唱えると目映い光線が放たれてモンスターの群れに直撃する、それが止んだ時直線上のモンスターはほとんど死滅していた、残りもダメージを受け満足に動けない様子だ。
「『ダークネス・ベイトスラッシュ』」
メイの持つ2mの大剣の横なぎは広範囲に闇の瘴気を撒き散らしながら残った全ての敵を死滅させた。
「メイはともかく、Gyは景気良すぎるんじゃない?」
「はは、少し気が大きくなってしまいました、ここからはもっとちまちま行きましょう、イシャさん、囮とヒールは任せましたよ」
「任せてくれ」
「メイもせっかく変身したんだからかっこいいとこ見せなよ」
「……」
黙ってはいるが何やら肩を回しながら向かっていった、やる気満々である。
【34F】
『ミラージュ・フロッグマン』
『ミラージュ・レインクラウド』
【35F】
『ミラージュ・ブルーグリフォン』
『ミラージュ・ジャングルワーム』
【36F】
『ミラージュ・ブルーバード』
『ミラージュ・グリーンフラワー』
【37F】
『ミラージュ・ブルーグリフォン』
『ミラージュ・ジャングルワーム』
【38F】
『ミラージュ・ブルーバード』
『ミラージュ・グリーンフラワー』
【39F】
『ミラージュ・ポイズンプラント』
『ミラージュ・ブルーゴースト』
……
…………
【そして43F・魔法陣の部屋】
私たちは『ミラージュ・アイスドラゴン』に立ち向かっていた。
「『スロートスマイトプル』」
「『創造の記録第3章の断片』」
「『ライトニングボルテックス』」
3人の攻撃が降り注ぎモンスターたちを一掃する、彼らの攻撃力については非常に高かった、ここまで苦戦という苦戦は無く私に攻撃をあびせたモンスターは一体も居ない。
「これでようやく44Fか、みんなは後どのくらい戦えるんだ?」
「私はまだまだいける、ボスのおうちに行くまでなら余裕だね、倒すのはきついけど」
「狩るるは凄いですね、私はもう限界です、ヒール1回分も残ってません」
「……」
メイは少しオロオロした後手を前にして大きさを示すようなジェスチャーをした。
「『このくらい』的な?仮面取ればいいのに」
「確かになあ、魔力も残ってないしスタミナもキツい、もう無理だ」
「やはり苦しいですね、しかしここまでの分析は出来ました、ここからはモンスターの強さを見る意味で逃げながら前へ進んでいきましょう、そして次回の攻略でボスを倒します」
そして私たちは最終的に48階まで走り抜けて敵に阻まれ撤退した、そういえば44階の泉の色は青だった
【スキル】
『ジャッジメントオブジャスティスウィズジハード』
1秒間に5回の極大神聖魔法ダメージを与える光線を発射する、その光を浴びたモンスターに持続的に神聖属性の中ダメージを発生させる
「光の柱は罪深き全ての生き物を貫いた」
【装備】
『イグゾースト』
メイが死神を殺した時に死神から賜った大剣の本来の姿、装備時自身に回復不能と闇属性の攻撃以外のスキルを使用不可能になる特殊沈黙を付与する、その代わりに物理攻撃に闇属性を付与する上、『ギロチン』が使用可能になる。
「クソ武器使い共を一網打尽だ!」




