完全栄養食キャロリウェーイ
「みんな!これ食べて!」
テンインから渡されたアイテムの名前は『カロリーM8』現実世界の完全栄養食をモチーフにされた料理アイテムであり食べるとステータスが強化される。
通常ボス等に挑む時はそのボスに合った料理を食べて対策をするのが基本だが情報の無い相手には全てのステータスをバランスよく上昇させるカロリーM8が良く用いられる。
ちなみにM8の意味とはMとエイト、繋げてメイト、カロリーメイトということらしい、今度はカロリーメイトが何者なのかという問題が浮上するが、今はどうでもいいことである。
「クソでっけえ鳥がきやがる!」
カジヤが指さした場所から飛んでくるのが『魔鳥コタル』だろう、こちらの馬も全力で走っているがそれに軽々と追いつきそうな速度で移動している。
マジででかい、俺たちが乗っている馬車3台分程の全長だ、鈍く光る暗い色の金属の翼と体を持った鷲のような姿だが頭や首はコンドルのような形をしている、その姿からどことなく凶暴さを覗かせ目は燃え盛る炎のように赤くぎらついている。
「どうやら見られただけで状態異常にかかるようだな、『居竦み』か」
イシャに指摘されて気づく、俺たちがかけられた居竦みという異常は行動や動作スキルにマイナス補正がかかるようだ、接近戦で戦う俺やカジヤ、テンイン等にとっては辛い相手になりそうだ。
「くっ……まずは小手調べだ!『雷槍』!」
馬車のキャビンから身を乗り出し雷の槍をコタルに向けて投擲する、それは一直線に突き進みコタルの胴に直撃して、たち消えた。
「消えた……!」
「ば〜かありゃどう見ても属性耐性が高いパターンだな!俺様に任しとけえ!!」
「そう見えるか?私には物理耐性の方が高そうに見えるが」
カジヤが懐から取りだしたナイフを投げつけるがそれは向かってくるコタルの翼に当たって軽く弾かれる。
「何も効かねえ!まずいだろこれ!」
まずい、コタルがほとんど眼前に迫っているのに何も出来ない、敵を必ず麻痺させる『雷桜』も『雷怨舞踏会』を発動しなければいけないため使うことが出来ない、雷の檻で囲ってしまうと逃げようにも逃げられないから本末転倒だ。
「マジでどうしようもねえのかよ…!」
カジヤも流石に弱気になっているようだ、だが俺たちの中にこの程度で諦めるやつはいない、俺たちができることを必死で考える。
「くっ……『創造の記録第2章の断片』」
イシャの神聖魔法で半透明な青い膜が貼られて馬車を包む、コタルが足で馬車に襲いかかろうとしてバリアに激突する、バリアにヒビが入り欠片が散るが辛うじて一撃では割れてはいないようだ。
「うわぁ!みんな大丈夫!?もしかしてそっちマズイ!!?」
「戦っても絶対勝てねえ!マジでやべえ!」
「こいつ!何しようとしてる!?」
「馬車を掴んだ……?落とす気か」
イシャの言った通り、コタルはバリアを1部貫通して足の爪をねじ込み馬車を掴む、そしてそのまま軽々と持ち上げ羽ばたいていく、馬が宙に浮き即座に馬車が移動能力を失う、俺達には何とか落下しないようにしがみついている以外の選択肢がなかった、そしてコタルが足を離し馬車は一気に落下、バリアは破壊され馬車は粉々になる、俺も落下ダメージを受けた、ゾッとする、もっと高いところから落とされたら無事だったか分からない、それよりも。
「全員無事か!?」
「勝手に死んでねえだろうな!」
「今のところ生きている」
「ギリ平気〜、ちょっとやばかったけど」
みんなの無事は確認できたがとはいえ絶体絶命だ、上からコタルが急降下してくる。
「イシャ!コタルに私を狙わせて!みんなは逃げて!私は多分前線都市バロランでリスポーンするから!」
「……分かった、『創造の記録第2章の断片』」
イシャの神聖魔法でコタルの標的がテンインに向けられる、俺達3人はテンインを残して逃げ出した、テンインが何のためにNPCのロールプレイをしていたのかは分からないがそれをやめてまで逃がしてくれようとしているのだ、その思いを無駄にする訳には行かない。
俺たちは走った、まだまだ先ではあるが少なくとも都市が見えた。
俺たちは走った、テンインが倒れたというメッセージが送られてきた。
俺たちは走った、再び俺たちにコタルの視線が届き『居竦み』が付与された、
俺たちは走った、目の前にひとりの男が通りかかった、もう追いつかれる直前だった。
「そこの人!助けてくれ!モンスターに殺される!」
「……ふん?いいだろう、助けてやる」
男は弓を持っていた、その表面は磨かれ、光を受けるたびに鮮やかな青い輝きを放つ。
弓の背面には、古代の文字が刻まれている、その存在感は、弓が単なる武器ではなく、過去の知恵と力を宿していることを示している。
男が矢を引き絞る、それは特別なものだった、矢じりはなにかの生き物の鱗であり本能のようなものに強さを感じさせる、弓は空間を震わすように唸り声を上げ、それが放たれる時その直線に在る全てを割いた。
「『龍牙』」
それは炎だった、それは嵐だった、それは光だった、放たれた矢は豪熱を纏い魔鳥に向けて進む、一切のよどみなく吸い込まれるように魔鳥の胸に刺さった矢は奴を仰け反らせ、少なくともダメージが無効化されていないと確信できるだけの手応えを感じさせた。
「すっげえ……!!まじかよ!」
「ふっ、俺の腕ならば当然だ」
「すごい!これなら魔鳥から逃げ切ることも……でき……あの、矢が矢筒に1本も入っていないのですが」
思わず敬語になってしまった、そんなことある?
「それならばこれを使ってくれ『創造の記録第3章の断片』」
イシャの神聖魔法で光の矢が手に現れそれを男に手渡そうとする、男はそれを受け取ると叩き折って捨てた。
「なんで!?!?」
「おい!人がせっかく作ってくれたものを!」
「……なぜだ?」
「お前たちの方こそふざけるな!」
「「「!?!?」」」
「常に矢を1本しか持たないことこそ私を必中の弓使いたらしめる要素なのだ!致命の一矢を射掛ける私は!2本目の矢等持ってしまえばその瞬間に指が腐り落ちてしまう!」
「っ!それでも頼む!俺たちは命がかかっているんだ!バロランまで逃げないと」
「逃げればいい、今やつの狙いは私に変わった、案ずることは無い、弓使いとは弓の扱いを熟知した者のこと、私には矢がなくても問題ない」
そう言って男はコタルに向かって歩いていく。
「……頼んだ!ありがとう!このお礼は必ず!」
「誰か知らねえけどありがとな!」
俺たちはまたバロランに向かって走る、後ろを見ると男がコタルの攻撃をいなしていた。
「ハァッ!『弓転動地』!」
驚いたことに弓でコタルの爪を受け止め、力が余ったコタルは地面に激突している、見知らぬ男のおかげで俺たちは全速力で走り30秒程で何とかバロランに入ることが出来た。
「はあ!なんとかここまでこれたか!もう命がけでゲームをするのはこりごりだぜ!」
「そうだな……プレイヤーがリスポーンするのってこの広場だよな?」
「そうだな、お前たち逃げきれてよかったな」
そう会話に混ざってきたのは今リスポーンしてきたさっきの男だった。
「んいや死ぬのはっや……」
【料理】
『カロリーM8』全てのステータスを中程度アップさせ様々な耐性も上昇させる、結構色んなとこで売ってる、4人が食べたのはチーズ味
【異常】
『居竦み』動作スキルや行動にマイナスの補正がかかる、また行動系のステータスを低下させる
【神聖魔法】
『アトラクト』
プレイヤーのヘイトを上昇させ、モンスターの攻撃を集中させる
【アイテム】
『龍の矢』伝説の龍の逆鱗を妖精族の特殊な加工で矢じりにした特別性の矢、呆れるほど攻撃力が高い。
【ユニークスキル】
『龍牙』龍の炎の力を矢に乗せて本来の力を発揮し、物理と同値の炎属性を付与し貫通力を高めて、耐性をある程度無効化し、また敵の攻撃に相殺されづらくなる。
「信念あらば答えん」
『弓転動地』敵の物理攻撃のタイミングに合わせて衝撃を全て大地に流して殺す、弓装備時に弓の耐久値が敵の攻撃の強さに対して一定の条件を満たしている時にのみ発動する、1日1回までしか使えない
【フィールドボス】
『魔鳥コタル』
コタル草原の支配者、その眼差しに捉えられたが最後、恐怖で体が言うことを聞かなくなる。
「腕に自信が無いなら最後に美しい青空を眺めることをオススメします、捕食は一瞬で終わるので苦しみは無いでしょう」




