絶望
やるぞやるぞやるぞやるぞ
俺の名前はムラビト、今強盗されています。
「きゃっ!やめて」
今まさに腕を掴まれて脅されているのは俺の幼馴染のテンイン、村の雑貨屋で真面目に働く彼女がこんな仕打ちをうけなくてはならないのだろうか?
「やめろ!あんた冒険者だろ!なんでこんなことをするんだ!」
テンインに恐喝していた男を止めようとすると、男は暴れ回る。
「黙れ!脳みその入ってねえバカNPCどもが!俺たちは客だぞ!デートぐらいしろ!!」
「そうだそうだ!サービスってもんがなっちゃねえなあ!」
取り巻きがガチャガチャと騒ぎ立てている。
どうやら相手は俺の事を覚えていないようだ、その方がいくらかやりやすい
「困っているだろう!暴れるのはやめるんだ!」
男を取り抑えようとしたが、男が振り回した武器が俺に当たってしまう、すると当たった箇所から7色の光が放たれていく。
「なに!俺のワカメモンスター特攻の剣が発動しただと!?」
「安全エリアじゃ攻撃は出来ねえはずじゃねえのか!?」
男たちが何か叫んでいるのが聞こえる。
全身に蕁麻疹が出て耳鳴りがする、平衡感覚を失い立っていられなくなり蹲る、ついでに肝臓が破れた、俺ってワカメだったのか?
「俺は知らねえぞ!『逃げる』!」
「待って待って!?俺も『逃げる』〜!」
「NPCが死のうがどうでもいいからなあ!『逃げる』」
男たちが逃げていく、テンインが俺に駆け寄って、心配そうに覗き込む。
「大丈夫?ムラビト」
「だいじょばない!助けてくれ!死にそうだ!肝臓が破れた!」
「あなたのユニークスキル"肝臓検査"が発動したのね!?」
そう、俺のユニークスキル、"肝臓検査"は常に肝臓の状態をチェックすることが出来る、それによると俺はもう死ぬ、せめてテンインに一言伝えたかった……
「しっかりしてムラビト!今イシャを呼ぶわ!」
「もういいんだ、最後に聞いてくれ……」
「もう喋らないで!二度と口を開くな!」
「そうはいかないさ、俺はお前のことが…………」
ガクり、その音が脳内に響いた、俺は死ぬのか、やり残したことがいくつかあるのに…
「ムラビトーっ!!」
俺はテンインの涙を受けて絶命した。
【用語】
『ユニークスキル』通常の方法で習得できない限定スキル
【ユニークスキル】
『肝臓検査』肝臓の状態をいつでもチェック出来る