8月5日 待合室
俺は、久しぶりに病院に来ていた。野球をやるかやらないかはわからない。あの時もっと早く治療していれば変わったのかな。自分の中で、自問自答を繰り返してしまう。今頃、本来ならキャッチボールをして、動き出すことができていたのかと思うと悔しくて仕方がなかった。
やっぱり病院は、どこも混んでいるな。受付に行き、予約を済ませて時間が来るまで待つことにした。
俺は、ゆっくりソファに倒れかけた。俺は天井を見上げてから辺りを見渡した。もっと人がいないかと思いきや、病院の待合室にはたくさんの患者たちが静かに座り込んでいた。
40代男性は足を組み、眉間にしわを寄せながら時を待っている。30代女性は少し俯きながら、スマートフォンをいじっていた。そのスマホからは、ススススという触っている音が聞こえるが、周りの人たちは黙ってその騒音を許容しているかのようにしていた。
この待合室は、空気自体にもなんとなく重苦しい感じが漂っている感じがする。これがいいのか悪いのか。それすらわからない。静かなのが好きな人にとっては、こうした空気感は悪くないのかもしれないな。
時折聞こえる他の部屋からのもれた声も、俺は、病室があるということを再認識させてくれた。
"ありがとうございましたー"。扉からは、30代男性が出てきた。すると、さっきの40代男性が代わりに入っていく。あと一人かぁ。自分の中でテンションが上がってくる。俺は、残りの時間をどうつぶそうかと辺りを見渡した。すると、前方の方に雑誌や本が置いてある棚があることに気がついた。
これなら、時間潰せるかも。シーンと静まり返る待合室から、いつものように時をつぶす備え置かれた雑誌を使っているページをめくる音が響いていた。あっ、、。雑誌を見ているのは、さっき診察室から出てきた30代男性だった。
だんだん、音に耐えられなくなり苛立っていた。しかし、病院の待合室には、医療の必要を感じてやってきた人々が、それぞれの思いを抱いて座り込んでいると思う。だからこそ、誰かのことを簡単に罵ったり罵倒したりしてはいけなかった。
俺は、雑誌を取りに行くのをやめることにした。待っている間は、明日から始まる高校野球の全国大会ののことを考えることに決めた。どこが試合をするのかスマホで検索する。いきなり開幕戦から、有秀高校がいきなり登場することがわかり胸が高鳴った。