10月9日 海美高校vs聖徳高校(引退試合Ⅲ)
俺 「あれから、一ノ瀬に会ったのか?」
新田「いや、会ってないよ」
俺 「そうかぁ、、、、、」
一ノ瀬の姿が見当たらないのは俺たちにとって少し不安だった。
新田「なんで来てないのか?」
俺 「まぁ、引退試合が終わって一区切りついたんじゃねぇか?」
新田「うーん、、、、、」
新田も一ノ瀬が何をしているのか気がかりのようだった。
ー10月7日ー
一ノ瀬に渡ったボールに向かって一人のディフェンダーが向かう。ここから、どうするんだろうか?
11時10分を過ぎたグラウンドからは、少しずつ陽射しが照りつけていた。一ノ瀬は、ディフェンダーをかわしながら前へと進む。白いラインが引かれたところから、少しずつキーパーの方へと向かっていく。あの位置なら打てるんじゃないのか。サッカーに関しては素人ながらそう思う。
新田「一ノ瀬打ちそうだな」
俺 「、、、、、、、、」
ボールはキーパーの左横にスムーズに飛んでいく。あの角度のシュートは絶対にとれないだろう。ボールは弧を描きながらゴールネットが揺れ、背番号「10」の男は腕を高く突き出していた。これがサッカーの魅力かぁ。背番号「10」のもとへ、佐藤、鈴木、高橋と次々と選手が駆け寄っていく。ディフェンスラインにいた渡辺や小林たちもお互いハイタッチをしながから、輪の中に吸い込まれていく。結局、ゴールキーパーの橋本以外、輪の中に入っていたのだ。引退試合を観に来ていた海美高校の親は、メガホンを叩きながら大きな声を出していた。
新田「先に海美が先制点取るとはな。想像してなかったな」
俺 「まさかだな」
新田「これが、一ノ瀬蓮という男の実力かぁ」
クラスではいつも大口を叩いているけど、それに見合った実力はもっている。俺は、それを認めなければならなかった。
俺 「でも、このままアイツらが終わるとも思わねぇけど?」
新田「それは、そうだな」
俺 「沢田とかって凄いんだろ?」
新田「天才って言われてるくらいだからな」
沢田が天才なら、一ノ瀬はなんなんだ?試合が再開した聖徳高校は、背番号「10」の沢田にボールが渡ったのだった。聖徳高校の中心、なおかつキャプテン。コイツが幾度となくチームを救ってきたんだろう。鋭い目つきでドリブルをしていく。風のように動き、一人でディフェンスをかいくぐっていく。このままだとヤバいだろ。あっという間にペナルティエリアに来てしまったのだった。




