10月8日 海美高校vs聖徳高校(引退試合Ⅱ)
昨日の熱戦は、一ノ瀬にとってどんな気持ちだったのだろうか?プレーせずに外から見る俺にとっては、なにも言えなかった。きっと、一ノ瀬には何か得れる時間だったんじゃないだろうか?
ー10月7日ー
海美高校サッカー部の引退試合は、静かに幕を開けた。聖徳高校は、時折笑顔を見せる生徒が多い中、海美高校は、とても冷静だった。エースの一ノ瀬にどの程度ボールが渡るかそれが一つのポイントの様だった。
新田「なかなか、一ノ瀬ボール触れないな」
俺 「向こうが上手すぎるんだろ?」
向こうには、沢田、宝来、工藤といった上手い選手たちが並んでおりボールが回らないのも仕方がない。試合ならではの緊張と期待が入り混っているように感じた。
新田「サッカーの背番号って何番がいいの?」
俺 「知らねぇよ。俺、サッカー部じゃねぇし」
新田「知らないのかよ」
俺 「そんなのスマホで調べたら出るだろ」
スマホを取り出し、検索していく。どうやら、野球と同じ様に「1」〜「11」の番号をつけるみたいだ。その中でも、ゴールキーパーが「1」、フォワードやチームの中心選手が「10」をつけることが多いと書かれていた。再び、コートに目をやると、たしかにゴールキーパーは、両チームとも背番号は「1」。海美高校の「10」は、もちろん一ノ瀬。聖徳高校の「10」は沢田だった。当然の結果だった。
新田「やっぱり、聖徳のボールを持つ時間が多いな」
俺 「それは仕方ねぇな」
新田の言う通り、聖徳高校がボールをつないでゴールを狙っていた。聖徳高校の選手たちは集中しながら、声を出していた。背番号「10」の沢田は、選手たちに上がるように要求している。
新田「どうするんだ?」
俺 「何が?」
新田「この後だよ?」
俺 「ただ、帰るだけだろ」
この後、新田は何をしようと言うのだろうか?俺には理解できなかった。
新田「一ノ瀬を励まさないと」
俺 「何言ってんだよ、まだ負けが決まったわけじゃないだろ」
新田「いや、厳しいだろ。この展開だと」
すると、大きな笛が鳴り響いた。どうやら、聖徳高校の選手のファールで海美高校のボールになった。小林から山本。山本から佐藤へとボールが繋がっていく。中央には、一ノ瀬が大きな声を呼んでいる。いけー!!!気がつけば俺も試合に夢中になっていた。ゴール前に迫った一ノ瀬にボールが渡ったのだった。




