10月5日 何者
一ノ瀬。俺は、いつの日かコイツに虜になっていた。何かが特別いいというわけではなかったけど、コイツには何か魅力があった。何がいいんだろうか?上手く説明できない。
俺 「一ノ瀬は?」
新田「病院らしい」
俺 「まだ、完全に治ってないのか?」
新田「さぁ、俺には」
手をあげ、俺の方を向いた。ゆっくり、ため息をつく。
新田「どうしたんだよ」
俺 「いや、別に」
見透かしたように、新田はツッこんでくる。めんどくさいやつだな。
新田「お前は、高校生の時は、ピッチングしないんだろ?」
俺 「ああ」
新田「それってしんどくないのか?」
しんどくないと言ったら嘘になる。でも、もう高校生活は捨てて大学生活にかけていた。
俺 「いや、別に」
新田「やっぱすげぇな、お前らは」
俺 「そうか?」
なぜそう思うのか?
新田「ああ。お前らみたいにこれからのこと考えて努力できないからな」
俺 「俺もそんなことばかり考えてはいない」
正直、俺には野球しかないのだ。
新田「俺は、一ノ瀬の試合が終わったら、ちょっといろいろ考えるわ」
俺 「何を考えるんだよ?」
新田「これからのことだよ」
放課後の教室には、誰も残っていない。他の生徒たちは、自習室で勉強している。
俺 「お前もやりたいこと探せよ」
新田「やりたいことかぁ」
俺 「あるのか?」
新田「ああ」
ニヤリと笑う新田が怖く見えた。
俺 「なんだよ?」
新田「ケンカ」
俺 「喧嘩?」
微動だにせず俺の方を向いている。
新田「ああ。お前、『fours』知ってるか?」
俺 「この前言ってたやつだろ」
新田「ああ。俺もあの中に混じろうかなってな」
何を考えているか理解できない。『fours』とは、聖徳高校の工藤、淮南高校の山下、八代総合高校の三上、そして海美高校の東藤の4人の総称だった。俺には、コイツらが何者かよくわかっていない。
俺 「混じって何するんだよ?」
新田「そりゃあ、ケンカしかないだろ」
俺 「喧嘩して何になるんだよ」
もう夕方。そろそろ帰らないと。
新田「何者かになるんだよ。ハハハ」
俺 「なんだよ、それ」
そういえば、今日は俺たちのチームの試合があったはず。試合には出ないけど、どんな試合か見に行かないといけなかった。悪い、俺行かないと。新田の話を遮ぎり話し始めた。




