10月2日 厳しい
どうやら、引退試合とはいえ向こうはベストメンバーを揃えてくるらしい。
俺 「アイツだけは、よくわかねぇんだよ」
新田「でも、意外とお前らお似合いだけどな」
俺 「どこがだよ」
お似合いなぁ。俺は野球、一ノ瀬はサッカー。やっぱり、水と油の関係だ。
新田「次の引退試合にかけてるんだから、手伝ってやれよ」
俺 「そんなに引退試合って大事なのか?」
新田「大事なんじゃねぇの」
俺 「俺にはわかんねぇよ」
引退試合を一ノ瀬みたいに気合いをいれる理由がわからなかった。初戦、最後の思い出作りなのに。
新田「お前もこの前引退試合したろ?」
俺 「そこにかけて何かしたとかはなかったからな」
新田「アイツもいろいろあったんだよ」
俺 「いろいろ?」
新田の言葉がひっかかった。
新田「ああ。うちのサッカー部って弱いだろ?」
俺 「そうだな」
海美のサッカー部が強いなんてこれまでも聞いたことがなかった。けど、一ノ瀬の名前だけはずっと聞かされていた。
新田「それでも、アイツが変えていったんだよ」
俺 「ふーん」
新田「最初はメンバーすらいなくて、部員集まるところからしてたんだぜ?」
俺 「そんな時あったんだ」
それは意外だ。想定外だった。
新田「ああ、あったよ」
俺 「全く知らなかったぜ」
新田「お前は、もう少し相手のこと考えろよな」
俺 「そう言われてもな」
新田が何が言いたいかはよくわからなかった。
新田「最終的には県大会までいって、全国いった聖徳と互角に戦ったんだ。大したもんだぜ」
俺 「アイツって何者なんだ?」
新田「何者?」
少し下を向いた。
俺 「ああ。だって金持ちなんだろ?でサッカー上手いならわざわざ海美選ばなくてもいいんじゃないのか?」
新田「海美しか行けなかったんだよ」
海美しか?
俺 「どういうこと?」
新田「アイツの家は、親が厳しいんだよ」
俺 「親?」
髪の毛をかきあげた。
新田「ああ。私立いくなら、海美よりも賢いところないかないといけないんだよ。だから、聖徳も淮南も無理。かといって、他の私立は海美よりも学力が落ちるんだよ」
真面目な新田を見ると、なんとも言えない気持ちになった。
俺 「ああ、そういうことか」
今の説明で納得がいった。




