10月1日 練習
気がつけば、一ノ瀬を練習している自分がいた。なんで手伝っているかはわからないけど、怪我をした自分にとっては少しはコイツの気持ちがわかる気がした。
一ノ瀬「10月12日」
コイツらの引退試合の日程か。
俺 「めちゃくちゃ微妙な時期だな」
一ノ瀬「そうなんだよな」
これが遅くなればなるほど、受験勉強に支障が出る。
俺 「受験生だしな、一応」
一ノ瀬「まぁ、俺には関係ないけどな」
俺 「お前は相変わらずだな」
コイツは大学に行くのか?怖くて聞けない。
一ノ瀬「お前に言われたくねぇよ」
俺 「海美のグラウンドでやるのか?」
どこでやるのか気になる。
一ノ瀬「まさか。俺たちが向こうに行くんだよ」
俺 「そうなの?」
なんで、こっちでやらねぇんだよ。なぜか、イライラしていた。
一ノ瀬「ああ。向こうは、全国大会出場してるんだぜ?」
俺 「そんなに強いのか?」
まさか、全国なんて。知らなかったな。
一ノ瀬「そうは思いたくねぇな」
俺 「試合しなかったのか?」
一ノ瀬「試合はしたさ」
海美が予選を通過したのは知ってたけど、その後どうだったのかは知らなかった。
俺 「どうだったんだ?」
一ノ瀬「負けたに決まってるだろ」
俺 「スコアは?」
一ノ瀬「県大会が3対1。予選会が2対0」
どちらも負けたということか。
俺 「惜しいじゃねぇか」
一ノ瀬「惜しくねぇよ。ずっと向こうにボールもたれて、カウンターしか狙えなかったんだよ」
たしかに、サッカーはボール保持率が出される。それが一つ勝ち負けにかかわる数字だった。
俺 「へぇー。そんなに強かったんだ」
一ノ瀬「お前知らないのか?」
俺 「何を?」
なにが言いたいんだろうか?
一ノ瀬「聖徳の沢田、宝来、工藤」
俺 「ピンとこねぇな」
一ノ瀬「ハハハ。まじか」
俺 「上手いの?」
その三人が何者かなんて、野球しかしてこなかった俺にはわからない。
一ノ瀬「ああ。レベルが違うよ」
俺 「へぇー。そんな凄いんだ」
一ノ瀬「三人ともそれぞれ、個人プレーするからな」
個人プレーかぁ。なぜか罪悪感を抱いてしまった。
俺 「そんなんでよく勝てるな」
一ノ瀬「それを他の奴らがまとめてるんだよ」
なるほどな。あくまで三人はコントロールされてるということか。




