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9月26日 引退試合3

 今になって思う。途中で部活動を放棄しなければよかったと。放棄しなければ、あのメンバーと最後の夏を戦えたのかと思うと悔しさが残る。新しいチームに入り一歩を踏み出したとはいえ、自分のやった行動に不甲斐なさを感じていた。


 ー9月24日ー


 バットを持ちながら、打席に入る中村を見つめた。中村は、静かだがチームの中で一番努力家だった。中学時代は、ボーイズリーグでやっていたが、怪我で3年間過ごした経験があり、高校は勉強ができるこの海美を選んだそうだ。左バッターボックスに入った中村は、笑みを浮かべていた。1.2年生のチームの先発ピッチャーは、2年の鈴木だった。鈴木は、俺が抜けてから、公式戦も投げていたので今日もそんなに緊張していないみたいだ。

 マウンドを見ていると、海美高校のマウンドで投げていた1年生の頃を思い出した。俺が海美高校で初めてマウンドにたったのがこの引退試合だった。新チームになって、当時3年生だった先輩たちを引退試合でめった切りをしたのだ。バッテリーを組んでいた中田から、"ちょっとは手を抜けよ"と言われたのを覚えている。あの時は、9回を投げ、1安打完封。先輩から奪った三振は14。打っても4打数3安打と絶好調だった。あの試合から、自信をつけたのだった。あの試合がなければ今の俺がないと言っても言い過ぎではない。そんな引退試合を今日は、こんな形で見るとは。思いもしなかった。打席に入った中村は、鈴木の4球目を捉えた。打球は、センターの前に弾き返された。ベンチの盛り上がりとともに、中田がこっちへ歩いて来た。


 中田「なんでここにいるんだよ?」

 俺 「出なかったら端にいるだろ」

 中田「は?」


 よくわからない表情をした。


 中田「お前、今日4番だぞ?」

 俺 「‥‥」


 何が何だかよくわからなかった。


 中田「言ってなかったっけ?」

 俺 「言ってねぇよ」


 すると、2番の本田がきっちり送りバントを決める。ベンチ内からは大きな声が響きわたる。


 中田「早くバット持っていけよ」

 俺 「、、、、、、、」


 言われるがまま、ネクストバッターサークルに向かった。何をしているんだろうか、俺は。ヘルメットをつけ、バッターボックスから山本を見つめていた。守備を守っていないということは、俺はDHということか?もしかしら、中田が監督やチームメイトに言ってくれたのかもしれない。こんなことになってるなんて。

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