8月2日 ドラマ
俺は、涼しいクーラーから流れる風を浴びながらソファにもたれかかっていた。さっきまでの激戦から一転、ゆったりとした飲料のCMが流れていた。昨日の試合、終わってみれば8対11で白峰工業高校が勝利した。試合序盤だと、この点差は考えられなかった。序盤から、淮南高校の佐藤が打ちこまれ苦しい展開だった。それでも、なんとか淮南高校の打線もくらいついていた。結果的には、淮南高校は負けてしまったが、わざわざグラウンドまで足を運んだ甲斐があったものだ。
そんな昨日の試合を見て、勝った白峰工業高校がどんな試合をしてくれるかをテレビから見守った。俺の中では、白峰工業高校が勝つと思っていたが、それは全然異なった。俺は、テレビを見ながら唖然としていた。テレビは、CMからドラマへと変わっていた。
どうやら、夏の青春ドラマがやっているみたいだった。俺には、まったく縁のない物語だ。前回までのストーリーが紹介される。突然自分の元を去ってしまった友人内川への再会を待ち望むサラリーマン山野。そして友人への未練を残すサラリーマン山野は、この夏、運命的な出会いが待っていた。その運命の相手というのが大学生羽月だった。
サラリーマン山野と大学生羽月の二人が出会い何かが始まろうとしていた。その二人の後を追うように大学生の三笠と梶本は付き合い始めた。しかし、山野と羽月が出会うよりずっと前からひたすら羽月のことを思い続けていたのが三笠だった。過去の思いを引きずったまま梶本と付き合っていた三笠だったが、山野を見ていて大きく恋が動きだそうとしていた。夏の恋が今始まる。なんとも俺には向いていないドラマで失笑しそうになっていた。
先ほどの試合。白峰工業高校も道和高校の前には、歯が立たなかった。スコアこそ2対8でそこまで差はなかったが、道和高校の強力打線にのまれてしまっていた。道和高校は、3番八乙女、4番黒木がそれぞれ3安打1ホーマーと圧倒的存在感を示した。
道和高校は、三好、武田という白峰工業高校の投手陣を簡単に打ち崩してしまう。聖徳高校も淮南高校も白峰工業高校も凄かったけど、それ以上に道和高校は凄かった。この道和高校が全国でどれだけ通用するのか見てみたくなっていた。全国大会は、5日後の8月6日からスタートする。どこのチームと当たるかによって大きく変わると思うが、湘生高校、清綾高校、群馬北高校など強豪校も出場を決めていた。