9月21日 準備
どこの学校もこんなことをしているのだろうか?俺たちは、晴れ渡る青空の下にいた。他の生徒たちも大きな声を出したりして遊んでいる者もいた。まだ、9月ということもあり、暑い。リレーではないけど、コイツとここで決着をつけなければならなかった。俺は、クラウチングスタートの準備をしていた。どのタイミングでスタートの合図がでるかわからず、今にも飛び出しそうなほど緊張をしていた。 俺の心臓はいつもより早く動いている。そして、地面についた手のひらには、じんわりと汗ばんでいた。俺の周りには、リレーメンバーの川村と高橋が
何やら声を出していた。少し距離が離れているから、何を言っているのか理解できない。じゃあ、そろそろいくぞ。審判の船木は声を出した。よーい、スタート!いつもより大きな声を出した。船木の合図と同時に、俺は、思いっきり地面を蹴り上げた。ランニングシューズは、弾き返すように後押しをしてくれる。俺は、風を切り裂きながら、走った。第一コーナーを曲がる頃には、一ノ瀬からリードをとっていた。しかし、背後から一ノ瀬が迫ってくるのもわかっている。地面を思いっきり蹴り上げ、全力で走っていく。
右手には、一応バトンも持っていた。たかが、一周走るだけだからバトンはいらないのだけど、一ノ瀬が本番さながらにやりたいということから行うことにした。バトンを掴むその腕には、とても力が入っていた。先頭を走る俺は、ただただ前を見るのが精一杯の役割だった。ようやく第2コーナーを回った。再び直線に。やはり後ろから抜くのは大変だ。一ノ瀬とは少しずつだが、距離が離れているように感じていた。すると、川村から大きな声が飛んできた。チラリと後ろを見ると、一ノ瀬は近くにいない。やはり、俺の方が早かった。もう間もなく第3コーナーにさしかかろうとしていたが、一ノ瀬がすぐ後ろにいなかったこともあり勝ちを確信していたのだった。勝つ根拠なんてまったくないのに、俺は自信で満ち溢れていた。一ノ瀬には、申し訳ないけど今回だけは負けられない。それは一ノ瀬に対する想いではない。周りの野球部に対してだった?第3コーナーを曲がり最後の直線に入った。最後まで、一ノ瀬は来なかったが、腕を振る。俺は、最後の力を振り絞り、そして、ゴールラインを越えて大きな雄叫びを上げた。しかし、それについてくる者は一人もいない。しかし、こんなレースですら息があがっている。自分がまだまだであることを改めて気づかされる瞬間だった。




