9月15日 他者を受け入れ続けること
野球ノートに書いてある第8条。"他者を受け入れ続けること"。それをいかに実践するかの難しさを感じていると、トイレまでやってきていた。トイレを開けたそこには、新田が立っていた。
俺 「どう?元気か?」
新田「ああ。余裕だよ」
長髪の新田は、鏡を見ながら髪の毛をセットしていた。
俺 「何してんの?」
新田「暇ばっかだよ。何もしたいことすらないね」
俺 「マジかよ」
驚きだった。まさか、新田がそんなに暇だとは。
新田「そんくらいやることないよ」
俺 「やりたいと思わないのか?」
コイツは、とても人望がある。俺と同じように人があんまり好きじゃないと思うけど、人が寄ってくるタイプだ。
新田「あんまだな。お前こそ怪我してからダメなんじゃねぇの?」
俺 「その通りだ。なんもないよ。俺は」
ぐうの音も出なかった。
新田「やばいんじゃないの?」
俺 「まぁ、野球は続けるからいいけど」
新田「野球続けるんだ」
そう。俺の怪我さえ治れば、野球ができる。俺には、野球があるんだ。
俺 「ああ。怪我して終わりはさすがにねぇかなって思うよな」
新田「そうなのか」
俺にはあまり興味がない。しかし、俺の野球センスには興味があるんだろうな。
俺 「もう一度やりたいんだよ、野球を」
新田「いいんじゃない?そういう素直な気持ち」
新田は、妙に革新めいていたことを言ってくる。
俺 「わかんのかよ?お前に?」
新田「当たり前だろ」
どうなんだろうな。新田のことは一理ある。けど、簡単に受け入れることはできない。
俺 「ハハハハ。お前も相変わらずだな」
新田「そうか?」
髪の毛をセットし終えた新田は相変わらずかっこよかった。
俺 「たしか、お前って山城と仲良かったんじゃないか」
新田「仲良いというか、話すだけだろ」
前から気になっていたことをぶつけることしにた。
俺 「山城が気になるんだよ」
新田「何それ?好きなの?」
俺 「違うわ」
すぐにツッコミを入れた。
新田「じゃあ、どうした?」
俺 「お前のこと欲しがってるらしいよ」
新田「どういうこと?」
何が言いたいのか上手く伝わらなかった。
俺 「この前たまたま耳にしたんだよ」
この後のことはあまり鮮明に覚えていなかった。




