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9月13日 仲間を作り続けること

 もう17時30分。だいぶ日が暮れたグラウンドに、俺は立っていた。ここに、立つのはあの日以来だ。この前までは、金属バットを握っていたが、そろそろ木製に変えようと思っていた。今日、手に握っていバットは、樫の木の芸術的な作りだった。マウンド上にいるピッチャーは、湯浅守。2.3球投げている様子を見たが、とても投げ方が綺麗だった。手足が長くて流れるようなフォームから直球130km後半くらいのようなボールを放ってくる。

 二人で決めたのは、3打席。全部初球打ちをしてしまえば3球で終わってしまう。まだ、コイツに挑む資格があるのか見定める絶好のチャンスだった。まず様子を見るためにも初球は見ることにした。バットを構え、湯浅の初球を見守った。決して速いボールのわけではなかったが彼の想いがこめられように感じた。ボール!少しインコースに外れた。初球は、ストレート。次は何を投げてくるだろうか?変化球ではなく、もう一度ストレートを投げてきそうだ。俺は尻を下げ、バットを肩に担いだ。バットの重みが肩にぐっとのってくる。

 ピッチャーの湯浅は、ゆっくりと振りかぶり、第二球目を投げこんだ。俺の目はボールを追いかける。軌道、速さ的にストレートだ。頭の中ですぐさま計算を働かせる。ここでバットを出せば打てる。球がホームプレートの手前に近づいた時、思いっきり力をこめバットを振り下ろした。木製バットが硬いボールにぶつかる。少し鈍い音が響き渡る。ボールは鋭い角度でバックネット裏に飛んでいく。ネットに当たったボールを残っていた槙田がグローブを使ってとった。ファールかぁ。これで、1ボール1ストライク。ここから、どうするか?次はさすがに変化球だろうか?それとも、もう一度裏をかいて、、、、、。

 槙田からボールを受け取った湯浅は、表情一つ変えない。俺は、バッターボックスを外し、一度二度とスイングをしていく。昨日の今日で投げてくれる湯浅には本当に感謝しなければならない。これこそ、"仲間を作り続けること"だろう。こんなことが起きるためには、もっといろんな仲間を作らなければならない。しかし、仲間を作るのは容易ではない。それは、高校の部活で嫌というほど学んだ。自分は、野球が上手かったただそれだけで人がついてきた。それ以外は何もないということを思い知らされた。監督は、そういうところを学ばなければならないと俺に言っているのだろう。

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