8月29日 ハイライト
気がついたらもう、4時間目だった。学校は退屈だけど、時間が経つのは早く感じる。それが、俺の主観だった。学校は、俺にとってただの暇つぶしの時間しかない。行ったからといって、何かあるわけではない。それでも行かないといけないこの日本社会は、俺をとても生きづらくさせる。俺は、教室の一番後ろの座って、授業を聞いていた。
教室の中は、先生が話しているにも関わらず、どこか賑やかな雰囲気があった。そんな中でも、真剣な表情をして授業を聞いている生徒もいた。なんで、こんなに真剣になれるのだろうか?私にはわからなかった。机に向かっている生徒を見ながら、俺は、いろいろ考えてしまっていた。プロジェクターに映るスクリーンの横にいる先生は、とてと和やかな女性の人だった。他の先生なら、もっと情熱的に話す場面もニコやかに笑顔たっぷりで俺たちを受け止めていた。
先生の声は、一番後ろにいた俺のところまできちん届いていた。このクラスの生徒たちは、あまりよくわからない。俺のことも野球部を辞めたヤンチャな生徒という印象が強いのだろう。俺は、自分がどのように思われてもそんなに気にしない。しかし、陰でいろいろ悪口を言われるのはあまり好きじゃない。俺は、先生の話を片耳にスマホをいじり始めた。
いつものように、長野エフォーターズのホームページを検索していた。昨日は、夜に大学のチームと対戦したみたいだった。3対1で接戦を制した様子が書かれていた。エースの本多が8回無失点のピッチング。打者は、中間、高井、関口の3人連続のタイムリーヒットで3得点を奪った様子だ。ちょうど、動画がアップされていたので無音にして、動画を再生させた。序盤から、本多が相手チームのバッターを斬っていく。ハイライトの成果、球速が速く感じる。そして、タイムリーヒットが出た6回。中間、高井がレフトへ飛ばすと、関口はライトへ打球を放つのだった。そして、本多のピッチングへと映像が変わる。解説者もベタ褒め。8回12奪三振。許した安打は、内野安打の1本のみ。
俺は明日のことが脳裏によぎった。おそらく、明日の監督との面談が最後になる。上手くいけば入れてもらえるし、上手くいかなかったらここでは野球はできなくなる。紹介してくれた佐藤、助けてくれた船曳のためにもなんとか練習に参加したいと思っていた。授業時間はあっという間に過ぎ去って行く。時計を見ると、もう11時を過ぎようとしていた。




