8月15日 大会10日目
俺は、スマホと財布をもって田舎町に来ていた。ここまで来るのに電車で2時間。なぜ来たのか、それすらわからなかった。気がついたらここにいたような感覚だった。昨日、よくわからない監督に全然話を聞いてもらえなかったことに腹を立ててしまっていた。やっぱり、あんなところ入らない方がいいかな?そんなことが頭をよぎってくる。けど、今から俺が野球をするなら、草野球チームくらいしか残されていない。
けど、草野球チームなんか入ったら、テキトウに野球をして終わりになるだろう。俺は、本気でもう一度野球がしたいだ。なぜ、理解してもらえないのか。苛立ちを隠せなかった。炎天下の日差しに照らされた、お盆の田舎町で、農家の人は、必死に作業を続けていた。昨日、帰ってから、野球のことをいろいろ考えた。しかし、監督の言いたいことが理解できないのだ。
おそらく、監督の言いたいことは、一人で野球はできない。お金を出してくれる親や周りの人とコミュケーションをとれない奴は、野球など上手くならない。そう言いたいのだと解釈をしていた。しかし、俺は、この意見に対して、真っ向から反対の立場だ。親?周りの人?コミュニケーション?自惚れるな。そんなもんは、野球に必要ない。
野球は、どれだけ速い球を投げられるか。どれだけコントロールがいいか。どれだけボールを遠くに飛ばせるか?そういった技術の方が大事なんだ。俺は、その中で技術を証明してきたんだ。誰になんて言われようと、否定される筋合いがないのだ。なぜ、あの監督はわかってくれないのか。
監督は、40代くらいだろうか。いい歳したオッサンがアホみたいに説教して恥ずかしくないのだろうか。今どきの野球を知らずによく野球の監督なんてできているな。逆に感心してしまう。しかし、あの監督がホントに想像していた通りの奴なら、たとえ野球スクールに入っても、また対立して終わるのが目に見えている。だったら、やらない方がいいんじゃないのか?
どうやら、ひと段落ついたようだ。青々と茂る稲穂の中で、農作業を終えた人々がひと息つくように、家に戻っていく。今日の夕方からは、祭りも行われるようだ。街は、まるで時が止まったかのように静まり返るような空間だった。俺は、大会10日目の結果を見ながら、ため息をついた。俺は、どうすればいいのだろうか?答えがわからず、ただただいろんなことが頭の中を駆け巡っているので精一杯だ。




