8月12日 大会7日目
監督「高校3年生か?」
俺 「はい」
監督は、俺の履歴書を見ながら話してきた。
監督「成績は?」
俺 「1回戦敗退です」
監督の後ろからは、高校野球が流れていた。今日は、大会8日目だ。
監督「ポジションは?」
俺 「ピッチャーです」
監督「お前、バッターで入ったんだろ?」
俺がバッターということは理解しているみたいだった。
俺 「肩を壊しまして」
監督「なるほどな。うちで何をするのか?」
俺 「ピッチャーだけが野球じゃないので」
言い返したが全く気にしていない。
監督「ピッチャーはやめるのか?」
俺 「いや、いずれ戻ります。でも、今は」
監督「MAX何キロだ?」
すぐ様、質問がとんでくる。
俺 「148kmくらいです」
監督「ホントだったら、大したもんだな」
俺 「ホントですよ」
監督「お前、本多から打ってたやつか?」
そこまで覚えてるのに、なぜか曖昧だ。
俺 「打ってたってほどではないですけど」
監督「本多は、珍しく悔しがってたよ」
俺 「そうなんですね」
意外だった。
監督「ああ。でも、俺は、お前からバッティングセンスは感じないけどな」
俺 「そうですか?」
悔しいけど言い返すことはできなかった。
監督「ああ。あのバッティングならピッチャーを見てみたいな」
俺 「今は、流れないですよ」
監督「過去の映像ないのか?」
なぜだ?
俺 「動画なら上がってますよ」
監督「そうなのか」
すぐにスマホを開き、動画を検索し始めた。
監督「これか?」
俺 「はい。それは、白峰工業との試合です」
監督「へぇー。勝ったのか?」
さすがに白峰工業高校は、監督も知っているみたいだ。
俺 「いや、負けました」
監督「なんぼだ?」
俺 「0対1です」
監督「三振は?」
俺 「12こくらいだったと思います」
熱心にスマホを見ている。
監督「いいじゃねぇか。投球フォームも」
俺 「ありがとうございます」
監督「ただ、今のフォームならまた怪我するぞ」
後ろのテレビから大きな歓声が聞こえてきた。どうやら、3試合目が終了した模様だ。
俺 「えっ、なんでですか?」
監督「体が出来上がっていないからだ」
俺 「そうですか?」
監督「とてもじゃないけど、お前の体で148kmは支えきれないだろう」




