8月10日 大会5日目
バッターボックスから見るマウンド上にいる本多は、想像以上に大きかった。1打席目は、詰まりながら、ライト前ヒット。2打席目は、変化球を上手くすくってレフト前ヒットとなんとか結果を出すことができていた。しかし、この2本では、なんのアピールにもならない。なんとかこの打席で結果を出さないと。俺は、強く意気込んで打席に入っていた。
ここまで、ストレートとカーブ中心の組み立て。まるで、俺を試しているかのように。おそらく、この打席では、三振を狙いにくるだろう。俺は、ヒットなんてしょうもないのは狙わずに、一か八かのホームランを狙うことに決め、バットを長く持つことに決めた。
セットポジションに入った本多。さっきまでと何か違う。本多の左足が上がったのと同時にタイミングをとる。きた!ボールはストレートだ。やや低いがストライクゾーンだ。思い切ってバットを出した。しかし、ボールはキャッチャーミットの中。当たらなかった。センターバックスクリーンには、152kmの急速表示が。速いなぁ。こんな球、打てるのかよ。あまりの速さに笑ってしまった。
今度は、スライダーだろうか?連続でストレートはないとよんだ。となるなと、変化球。そろそろくるだろう。再び、セットポジションから、本多が2球目を投げこんだ。俺は、スライダーの軌道をイメージしてバットを出す。スライダーだ。インコースからイメージ通り曲がっていく。しかし、想像以上の変化でボールに当たらない。もう少しでワンバンウンドしそうだった。本多のスライダーは、横の曲がりだけでなく、落ちてくるのか。俺は、呆気にとられてしまった。
ついに追いこまれてしまった。ただ、これで次のボールはストレートと確信した。一球目である程度つかんだ。後はコースだけだ。運命の三球目。やはり、ストレートだった。そして、そのボールは見事俺がイメージしたところにやってくる。俺のバットの真芯に当たり、ボールはレフト方向へとはるばると飛んでいく。飛距離は文句ないだろう。後は、フェアゾーンかファールゾーンか。さっきまでの2本のヒットの運気はどこへやら。打球は切れてしまった。これで、俺はゲームセットだった。次の四球目は、スライダーで曲げられバットは空を切ってしまったのだ。3打席が終了したのと同時に俺のテストも終わり、家に帰ることになった。俺は、大会5日目の試合を見ながら、悔しさを滲ませていた。




