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8月8日 大会3日目

 大会3日目。つい先日会った船曳が今まさに、試合をしていたのだった。船曳も9番レフトでスタメン出場を果たしていた。しかし、船曳がいる學学園高校は、序盤から点をとられ、劣勢ムードだった。

 8回表まで終わって、0対5。4点を追う展開となっていた。そして、打席には、船曳が入った。今日、三回目の打席。ここまで、2三振。いい結果が出ていない船曳に代打もあると思ったけど、俺の思いすごしだった。

 打席に入った船曳だったが、簡単にツーストライクと追い込まれてしまう。最後は、低めにフォークを投げてきた。船曳は、片手一本でなんとかバットに当てる。打球は、三遊間へと飛んでいく。三塁方向に走っていくショートがボールを捕球する。そして、すぐさまファーストへと投げる。

 俊足の船曳も一塁へと走る。夏の照り返すグラウンドに、一塁への道を駆け上がろうとする船曳。そして、チームを鼓舞しようと駆け抜けた方が早いはずなのに一塁へとヘッドスライディングをしたのだった。

砂埃が舞う中、観客たちの熱気がすさまじく、スタンドからは大きな歓声が鳴り響いた。そして、視線は、一気に審判の方へ。

 その瞬間、グラウンド全体が静まりかえったように感じた。すべての物音が消え失せ、時が止まったかのように、選手たちも止まっている。大注目を集めた審判は、大きく手を広げたのだった。さっきの静かさが嘘のように大きな歓声と拍手に包まれた。一塁ベースに立った船曳は、満面の笑みを浮かべていた。

 あまりにもエネルギッシュな走塁に、観客たちが歓声をあげていると、俺まで嬉しくなっていた。そして、ここから學学園の攻撃が始まった。2番のレフト前ヒット。3番の内野安打でノーアウト満塁のチャンスを作る。ここで、4番、5番の連続犠牲フライで2点を入れる。その後、6番と7番の連続四球でツーアウト満塁というチャンスを作った。

 ここから、ワイルドピッチで3点目。四球、エラーと続き5対5の同点で再び、船曳へと回ってきたのだった。なんという試合展開なのだろうか?グラウンド全体が學学園高校への流れと変わってしまったのだ。そして、それにとどめをさすように、あの男が試合を決める一打を放ったのだ。陽の光を浴びるように一塁ベース、二塁ベースと駆け抜けていく。そして、ベンチで笑顔の仲間たちに迎えられた。大きな拍手に包まれ、ハイタッチを交わす船曳が映し出されるのとともに、投手は、ガックリと肩を落としていたのだった。


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