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7月28日 試合終了

 この前の試合。俺は振り返るように頭の中で蘇っていた。9回表ワンナウト。海美高校は、3番山本が打席に入っていた。みんなと一緒にグラウンドに立てなかった悔しさがさらに増してくる。ネクストバッターボックスサークルには、4番の中田が入っており、バットを振りこんでいた。金属音が響いたが、打球は、三塁線に切れていく。3番の山本は、俺の代わりに背番号1をつけて投げてくれていた。

 しかし、対戦相手の千川第二高校に確実に1点ずつを積み重ねられ、ここまで7失点を喫していた。山本も一生懸命投げてくれていたが、ここまでピッチャーでの経験値がほとんどなかったことが影響していた。さらに、周りの野手のエラーも絡んでいた。

 一方、千川第二高校のピッチャーは村上。村上は、ストレートとカーブを駆使して、凡打の山を築いていく。海美高校は、村上を打ち崩せず、9回ワンナウトまできていた。カーン!!。打球は、センターへ。いい当たりではあったが、センター正面だった。

 "4番キャッチャー中田くん"。打ってほしいとか勝ってほしいとかそういう気持ちにはなれなかったけど、なんか寂しかった。こんなところで終わってしまうのか。春まで、ずっとバッテリーを組んでいた中田。俺のわがままにも散々付き合ってくれた中田に何も返せず終わってしまう。

 俺は、4月まではチームの中心人物だった。春季大会では、20年ぶりに準優勝させることができた。1回戦、2回戦ともに完封勝利。そして、準決勝をかけた白峰工業高校との1戦は、1失点完投勝利。強豪校の白峰工業高校打線相手に、12奪三振。そして、MAX148㎞も計測した一球を見て、一気に俺の名前は全国へ轟くことになった。

 しかし、そこが俺の高校野球人生の頂点だった。その後は、怪我をして練習すらできない状態に。監督ともソリが合わず幽霊部員みたいになってしまったのだ。中田が振り抜いた打球は、ファーストゴロとなり、試合終了。千川第二高校の選手は、喜び、海美高校の選手は泣いていた。

 俺は、千川第二高校の校歌は聞かずに席を立った。こんなかたちで俺の高校野球人生が終わるなんてな。これから、どうすればいいかすらわからないでいた。自分の高校生活を全て、野球に捧げた自分だったが、終わった頃には入った頃と同じ、何も持っていなかった。惨めな気持ちを胸にしまいながら、階段を降りていく。野球なんて、、、、、。二度としたくない。自分を否定することしかできないでいた。

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