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第七話


 ピピピ‥‥ピピピ‥‥。


 (よし、行くか!)


 目覚ましを止め、珍しく早起きする蓮。


「やけに早起きだな」


 蓮が部屋から出ると、所長はダイニングで朝食を食べていた。


「おはよう、出かけてくるから。多分遅くなるけど気にしないで」


「おぅ!気を付けてな!」


 蓮は顔を洗い、目立たない服を選び、帽子を被った。


「いってきます!」


「いってらっしゃい」



 蓮は自宅を出ると真っ直ぐ依頼人のマンションに向かう。玄関が見える位置に着き、張り込みを開始する。しかし、意気込んで来たものの、一向に状況は変わらない。

 

 対象は出勤時間になると家を出たが、その後も何時間待てど、依頼人らしき姿が見えない。


 (今日もダメか‥‥)


 そう思っていたその時。


 家に配達員らしき人が来て、チャイムを鳴らした。


 (あっ!出てきた)


 そして、依頼人が出てきた。おそらくネットスーパーで買い物をしていたようだ。

  

 (いるのは確認できたな。でも今日も外出しないつもりか。引きこもり?)


 蓮は不思議に思っていた。その後も結局出てくる事はなく、夜になり対象が帰ってくる。


 (今日も帰るか)


 その日の収穫は、確かに家にいる事。買い物はネットでしている事ぐらいだ。そして、歩いて帰っている途中でアイビーに会った。


「調査ですか?」


「うん、お前なにしてんの?」


「俺は野暮用です」


「ふーん、飯行くか?」


「えっ二人で?!」


 蓮は驚いていた。


「嫌なのかよ!」


「いやビックリしただけですよ!調査はいんですか?」


「今から帰るとこだから。行くの?行かねーの?」


「行きます!ちょうど俺も腹減ってたし」


 蓮はアイビーに付いていき、店に入る。


「ここ24時間営業だからな、すげーだろ」


「すげー、のかな?」


「今日は奢ってやるから何でも食え!」


「じゃあ遠慮なく」


 蓮はそう言うと、腹ペコだった事もあり、大量に注文する。


「なんでも食えって言ったけどこんなに食えんのか?」


 テーブルに所狭しと並んだ料理を前に蓮は満足げに言った。


「余裕でしょ」


 本当に余裕で完食する蓮。


「はぁー食べ盛りだな」


 アイビーは感心していた。


「ごちそうさまです!」


「おぅ」


 そして、二人は食事を終えると店を後にした。


「じゃあ、お疲れ様です!」


「おい、あんま変な事に首突っ込むなよ」


 アイビーはそう言いながら帰って行った。


 (もしかして気付いてる?)


 蓮は不安になったが、あまり深くは受け止めないようにしていた。


 ビルの前に着くと事務所の電気がまだ付いているのが見えた。


 (毎日こんな時間までやってて休む暇ないだろうな)

 

 所長は蓮に怒った事が一度もない。

 蓮が中学生の頃、同級生と喧嘩して椅子でぶん殴った時も、相手の親に必死に頭下げて。でも蓮には笑って"そうゆう時期もあるわな"って。正直どんな時期だよって思ったが、その後も蓮が何かしでかしても怒られる事はなかった。過ごした時間は少ないけど所長からの愛情はちゃんと感じている蓮。


 (おじさん、ごめん。バレても怒らないでね)


 蓮は呑気にそんな事を考えていた。自宅に帰り、シャワーを済ませベットに転ぶ。


 (もういっかな。なんかダルくなってきたし)


 本当は明日も張り込みしようと思っていた蓮だが、あまり変化のない事をしていても仕方ないと思いだしていた。

 

 (いっその事直接行ってみるかー。それでダメならもうやめよっと)


 明日の結果次第で諦める事にしたのであった。

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