其の参拾伍
――カラン
「いらっしゃいませー」
来客を告げる鐘の音とそれに呼応して毎度通りの声を出す。
そんな光景が繰り広げられている個々は俺のバイト先、喫茶『white cats』だ。
カミツキ! 其の参拾伍 「喫茶店とパフェ」
ここ、『white cats』は高校に程近いところにある喫茶店である。
そんな立地条件だから夕方には多くの学生であふれかえる喫茶店で働いている人も殆どが学生である。まあ俺もそんな中の一人でここでバイトをしているわけなんだけども。
「店長ー、そろそろ時間ですよ。」
「あ、景君ありがとね。」
そう言って微笑む店長に言った時間というのはメニュー替えの事である。この喫茶店はモーニング、ランチ、ディナーの三つのほかに時間帯に応じてスペシャルメニューなるものが作られる。
で、今の夕方時のメニューは店長特製の白猫パフェなるものである。他にも白猫オムレツや白猫パスタなど数々のメニューがあってそれを目当てにここに来る人も多いらしい。その中でも白猫オムレツなるものは不可解なものでちゃんと卵を使っているはずなのに白いオムレツが出来上がるのだ。一回俺も食べてみたのだが何の変哲も無いオムレツだった。
ちなみに今から売り出す白猫パフェはバレンタインでは黒猫パフェと称してチョコ味にしてあった。
『ご来店中の皆さん、白猫パフェ限定25食。販売開始です。』
店内にそうアナウンスをかける。すると・・・
「白猫パフェ三人分!」
カウンターには長蛇の列。皆が皆パフェ目当ての人だろう。しかし、列の最後のほうの人は今日は食べることはできないだろう。そう思っていい。
で、いきなり三人前を頼んだのは・・・ん?
「あれ、景さんだー!」
「あれ、櫛ちゃん?」
この呼び方はアマのが移ってしまった。まあ特に彼女も気にしていないようだしいいとは思うけど。
で、そこにいたのは櫛ちゃんこと櫛名田比売。
「それにしても何でここに?」
「皆で遊びに行った帰りなんだよっ」
「なるほどね、っとほらパフェ。」
「んー、ありがとっ」
そう一言言って実に嬉しそうな表情で席に帰る櫛ちゃん。彼女の歩いていった先を見るといたのは須佐之男さんと月子さん。兄弟で来てるんだろうけど夫婦と子供にしか見えないのだから不思議なものだ。
『白猫パフェ完売しました!』
ん、もう終わりか。今日の販売時間は・・・二分ぐらいか。今日は早かったな。
「あ、景君ちょっといい?」
「店長、どうしました?」
店長が事務所から俺を呼んだ。一体何の用だろうか?
「実は明日なんだけどね、バイトの子が一人休むって言ってて来てくれるかしら?」
「明日ですか、別にいいですけど何処かで休みいれてくださいね」
「んー、今度の土曜でどう?」
土曜、バイトがなくなれば完璧にフリーになるか。それならまあいいか。
「分かりました。手を打ちましょう。」
「ありがとー。それじゃあ今日はもう上がってもらっていいわよ。」
「分かりました。」
そう言って更衣室へと向かう。
ちなみに後ろで手を振っているこの店の店長の名前は中江裕仁、性別は男。要するにオカマである。
そして次の日。
――カラン
「いらっしゃいませー」
また普段と同じように接客をする。
「何にしましょうか?」
「んー、カルボナーラとダージリンで。」
「分かりました。」
これもマニュアル通りな接客である。まあ別にこの接客法でも相手が嫌な気持ちになることもないだろうしこの国では最もポピュラーな接客法であると思っている。
「繰り返します、カルボナーラとダージリンで宜しかったですね。」
「はい、いいです。」
「それでは失礼します。」
これまた一般的な態度。注文を厨房に伝えふと時計を見るともう結構な時間だった。
「店長、準備はいいですか?」
「んー、いいわよ。」
きっと厨房の中では女言葉を話す結構ごつい男がいるんだろうな。出来るだけ見ないように、想像しないようにしよう。その方が精神衛生上よろしいに決まっている。
『白猫パフェ売りますよ。』
そうアナウンスを掛けると長蛇の列が形成される。そしてその列の一番前にいたのは
「白猫パフェ、二人分!」
見覚えのある少女というか昨日も今朝も見た少女。櫛ちゃんだった。
「はい分かりました。」
呆れて物も言えないというか言わない。まさか二日連続で来るとは。
「それでは席でお待ちください。」
そう言って次の人の応対をする。
ちなみにあれから暫く櫛ちゃんがこの喫茶店に通うようになったり、それにつき合わされている須佐之男さんが毎朝ジョギングをしているのを見かけるようになった。南無。




