其の弐 下
「よろしくね。」
そう言ってアマのやつは俺の席の隣に陣取りやがった。これから学校生活が崩壊しそうな気がする・・・。一部の男子から殺気の篭った視線が送られてくる。
恐らくは聡い人だったならもう苗字の件に気づいているだろう。清浦なんて苗字はそんなにいたもんじゃないしな。
なんて言っておこうか・・・従兄妹とでも言っておけばいいか。
とにかくわかってんのは、後始末が大変そうだってことかな。
カミツキ! 其の弐 下 「school days 下ツ巻」
あれから特に(物理的な)問題もなく進んでいった朝のHR、しかし確実に男子の俺に対しての精神的な攻撃は行われ続けていた。
そんな葛藤を知ってか知らずかアマは微笑みを絶やさずにHRに参加していやがった。
HRが終わると転校生恒例(だと思う)の質問タイムが行われていた。
一番多かったのは勇を初めとする馬鹿な男子どもの「付き合ってください!」っていうやつ。・・・おかしくないか?こんな質問は、普通こんな質問しないだろう。
ほかにも「前はどこ通ってたの?」とか「どの部活はいるの?」とか「バスケ部入んない?」とかごく普通の質問だった。まあ「一緒に神の道を歩まないか?」とかいう質問が来たときには思わず噴出しそうになってしまったが。まさか目の前に天照大御神がいるとは思わなかっただろうな。
すると凛が俺の前に立っていた。
すると
「ねえ、景と天音って何か関係あるの?清浦って苗字は滅多に無いでしょ。」
といった。
刹那、クラス中の男子の視線が俺に、女子の視線(凛をのぞく)がアマに向かった。・・・男子諸君、そんな目で見ないでくれ気持ち悪い。
「ただの従兄妹だよ。そんな深い関係も無い。」
実際はあるのだが、同居してるなんていう必要も無いだろうし言わないといけない義理も無い。
もしも言ってしまったらこの教室が恐慌状態に陥り、あっという間に男子どもの暴動が起こり俺はフルボッコにされるだろう。
「ふぅん、面白くない。」
何が面白いって言うんですか貴方は。暑くも無いのに汗が出てくる。
「お〜い、お前ら授業始めるぞ。」
どうやら先生が来ていたようだ。普段は聞きたくも無い教師の声が今日ばかりは天使の声に聞こえた。
――キ〜ンコ〜ンカ〜ンコ〜ン♪
時間はあっという間に過ぎもう昼休み。弁当を持つものは各々好き好きに弁当を開け、学食組は食堂に向かい、購買に買いに行くものは戦地へと赴いていった。
俺は弁当組。入学前に試算した結果これが一番安上がりだったのだ。もちろん俺の手作り、料理は得意分野だ。
しかしアマは弁当を持ってきていないので購買部に買いに行った。さて、帰ってくるときはボロボロなのか?
「景〜。」
そんなことを考えていたらドアを開けて無傷のアマが帰ってきた。・・・無傷だって!?
あの東方のバルカンと呼ばれている(本校生徒から)購買部から無傷で帰ってきた。購買部の凄まじさはいつか語るか。
「アマ、何で無傷で帰ってこれたんだ?戦場みたいになってただろ。」
「なんかねぇ、私が行った途端皆が両側に分かれたんだよ。ザザザ〜って感じで。」
なんだそりゃモーゼの十戒か?
「そりゃあアマちゃんが可愛いからだよ。男子はほとんど惚れてるよ。」
俺の後ろからすっと出てきてそんなことを言ったのはこのクラスの委員長の佐倉さんだ。なんか百合疑惑付の女。説明終わり。
「こんな可愛かったら誰でも道を開けてくれるよ〜。可愛い〜〜〜。」
そう言ってアマに抱きつく。きっとこんな光景を勇が見たら鼻血を出して倒れるだろうな。
「佐倉さん、苦しいよ〜。」
アマは佐倉に抱き付かれているせいでものすごく苦しそうだ。佐倉さんも可愛い子をすぐ抱きしめる癖直せよ。
「あ〜、ごめ〜ん。」
「ふぅ、ありがと。」
佐倉さんはアマを解放して帰っていった。
あら、男子が2,3人鼻血をだして倒れてる、だが気にしない。
「お〜い、景。帰ってきたぞ。」
そんな声がかかったので後ろを振り返るとボロボロの勇が購買から帰ったのか何かを持って帰ってきた。
でもいつもより綺麗だな、今日は早く帰ってこれたのだろうか。
そして勇はいつもどおり俺の席の近くに腰を下ろす。
「じゃあ食べるか。」
「おう、そうするか。」
食事の風景は割愛。友愛じゃないぞ割愛だ。
そして食事も終わって5限目なんか文化祭について話し合っているらしい。
で今出ている案は、
・メイド、執事喫茶
・コスプレ喫茶
・お化け屋敷
の3つ。個人的にはお化け屋敷に賛成。理由は料理したくないから。去年は料理係に任命されてひどい目にあった。
そして今多数決で投票中。だってこの国は民主主義国家だからね。
「結果はこうなりました。」
委員長の佐倉さんが声高に宣言する。そして黒板には・・・
・メイド、執事喫茶 1
・コスプレ喫茶 25
・お化け屋敷 7
と書いてあった。よりによってコスプレ喫茶かよ。
それよりメイド喫茶の1票は誰の1票だろう・・・。たぶん勇だけど。
「あと、清浦君には女装をしてもらいます!」
佐倉さんが声高に言った。殆どのクラスメイトたちがいっせいに頷く。
っておい
「なんで俺が女装しなきゃならんのだ。」
「なんでってこれ。」
佐倉さんが見せてきたのは投票用紙。その紙にはコスプレ喫茶と書いてあり、清浦君は女装と小さく下に書かれていた。
「ほかにも後何枚かあるわよ。」
そう言って佐倉さんが見せたのは20枚ほどの投票用紙。
その全部に俺が女装をするという旨が書かれていた。
「絶対嫌だ。」
「問題ないよ、似合うと思うよ。」
「そういう問題じゃ―――」
「あ、女の子の格好なら何でもいいよ。」
「そういう問題じゃなくって、もっと根本的な問題。」
「問題ないよ。ね、皆。」
佐倉さんが聞くと実にクラスの半数以上が一斉に頷いた。
「ということだから多数決により可決〜。」
多少落ち込んでいる俺を尻目にやっぱり佐倉さんは声高にそう宣言した。
・・・ん、そういえばこれで料理しなくていいのか?
次回、学園祭です。




