其の弐拾伍
「・・・・・」
ああ、何かどす黒いオーラが見えるよ。皆、意識して近づかないようにしてるし・・・
「ねえ、安倍君どうしたのかな?」
「アマ気にするな。どうせテストの出来が悪かっただけだろ。」
そう、今日は休み明けのテストがあったのだ。
カミツキ! 其の弐拾伍 「馬鹿とテストとフェンリルさん」
「・・・景〜。」
げ、帰る前に捕まった。
「何だ勇。テストができないのはしょうがないだろ、どうせ勉強して無いだろうし。」
「く・・・それを何故。」
「経験だ馬鹿が。」
そう言って立ち去る。勿論、後ろでは机に伏して泣いている勇。
それを見てみんなは俺に拍手をくれた。皆分かってるねぇ。
「やあ、匿ってくれないか。」
「ん、フェンリルさん。どうしたんですか?」
「学校で女性に囲まれたのがヘルにばれたみたいだ。」
「・・・まあ入ってください。」
うちは相談所でなければ避難所でもないんだが。
「でもフェンリルさんって昨日ばれたんじゃなかったですか?」
「う〜ん、昨日はどうにか誤魔化せたんだけど流石に二日連続では無理だったな。」
「そうですか。
それにしても今日はアマのやつ出かけてるんですけどいいですか?」
「いいんじゃ・・・」
―――ピロリロリーン♪
これは俺のメールの着信音
「ん、メール・・・。差出人は、湊?」
そのメールの内容は・・・
[兄さん、今から行く。以上]
・・・だけ?
―――ピンポーン♪
・・・来たのか、でもアマがいないのは運がいいというべきだな。
―――ガチャ・・・
と、あいつ入ってきやがった。
「兄さん・・・と、誰?兄さんの彼氏?」
「湊、それは絶対に無いよ。」
「・・・じゃあ誰?」
少し残念そうな顔をした湊。変な趣味に走ってなければいいのだが・・・。
「下の階の人だよ。」
「へぇ。
・・・と、そうだった。これ姉さんからの差し入れだから。」
そう言って湊の出してきたのは何の変哲も無いというかどちらかというと美味しそうなクッキーの数々。そして怪しく微笑む湊。
「フェンリルさんいります?」
「なんだ、いいのか?」
「ええ。いいですよ。」
「そうか、ありがとな。」
そう言って彼はクッキーに手を伸ばし・・・食べた。
「・・・・・」
「・・・・・」
「・・・・・美味しいな。」
え?
「もう一個貰っていいか?」
「ええ、何なら全部いいですよ。」
「そうかありがとう。」
そういってどんどん食べ進める彼。
唖然として見つめる俺。
唖然を通り越し硬直をしている湊。
「ふむ、中々美味しいものだな。」
その微妙な空気の中黙々と食べ進める一匹狼。
「これは誰が作ったものかな?」
「・・・姉さんです。」
「そうか。さぞ料理が上手なんだろう。」
そう彼は呟いた。
この後フェンリルさんがぜひとも姉さんに会いたいといってあわせてみたら意気投合。
それをどうやってか嗅ぎ付けたヘルさんが激怒したのは言うまでも無いだろう。




