其の弐拾
「後輩クン、見つかったかい?」
「駄目ですね、先輩。」
「う〜む、そうかい、了解、続けるかい。」
今、俺たちはヘルさんの要請、つまりフェンリルさんの捜索に当たっている。
カミツキ! 其の弐拾 「商店街での捜索劇」
「まったく、忌々しい。」
「で、アマ。忌々しいのはいいけどフェンリルさんは見つかった?」
商店街のクリスマスの飾りを見てまだ小言を言っているアマに先ほどの先輩の疑問をぶつける。
そういえばアマ、ここ最近商店街を見るたびにぶつぶつ小言を言っている気がする。
「いないね。まったく見当たらないよ。」
「そうか。本当にここにいるのか?」
「いるんじゃないかな、ヘルが一番いる確率が高いって言ってたんだし。」
「そうか。」
ここ、商店街を捜索しているのには訳がある。訳が無ければこんなところは探さない。
捜索が始まる前にヘルさんが「きっと兄さんは商店街にいる!私の勘がそう言っているんだ!!」と叫んだからである。
しかしこの商店街、やけに広いのである。前に行ったネズミーランドの20分の一ほど、つまり某ネズミさんの夢の国の5分の一ほどの大きさのある商店街である。
そんな商店街だからもし、ここにいても一筋縄ではいかないのだ。
「それじゃ、私は向こう探すから。景は向こう探してくれる?」
「ああ、分かった。」
そう言うと彼女は北の方向へと向かっていった。
そして俺は近くの路地裏へと入り、
「フェンリルさん、何で隠れてるんですか?」
先ほどからこちらを覗いていた人物、フェンリルさんに声を掛けた。
当然ばれていない思っていた本人は俺の発言に背を振るわせた。
「・・・景君、なんで分かった?」
「何でって、偶然見えたからです。
特殊能力なんて持ってませんよ。」
嘘だ、霊感はあるほうだがこの際はどうでもいいだろう。
先日発見した演技力を最大限発揮し、目の笑っていない笑顔で聞く。
「その笑顔・・・怖いぞ。」
「それは、知ってます。
・・・で、どうして隠れていたんですか?」
「ヘルから逃げた。それだけだ。」
「・・・そうですか。」
意外と単純な答えで一瞬ポカンとしてしまった。
「でももう見つかっちまったから投降するか。
ヘルに電話してくれ。」
「良いんですか、きっと怒ってますよ。」
相談所ではない俺の部屋へとヘルさんが入ってきたときすごい必死な形相だった。きっと怒っているだろう。
「大丈夫だって、きっと怒らない。むしろその逆だ。」
「そうなんですか?」
「ああ。これであいつのブラコンが治るかも知れんからな。
それじゃあ早くヘルをここに呼んでくれないか?」
「え、あ、はい。」
まあフェンリルさんにも考えるところがあるのだろう、と思い、依頼主であるヘルさんに電話を掛ける。
『兄さんが見つかりましたか!!どこですか!?』
「篠田鮮魚店の隣です。」
『分かりました!今すぐ行きますから待っていていてくださいね!!』
そう言って彼女は電話を切ると・・・
「兄さん!!大丈夫でしたか!?」
いきなり後ろへと現れた。
何か時間の壁とか物理法則とかすべてを超越して現れた気がするのは・・・気のせいだろう。
「ああ、どうにかな。」
「怪我はありませんか、何かありませんでしたか!?」
「まあな。」
この空気の中、傍観している自身はまったく持ってゼロなのでこの路地裏からさっさと立ち去る。そのほうが精神衛生上いい気がする。
「ということで俺は帰る。」
「私もそうするわ。」
「うん、私もそうしよう。」
路地裏への入り口でいつの間にやら集まっていたアマと凛にそう告げると二人とも賛同してくれた、感動しました。
「そういえば峯下先輩知ってる?」
捜索しに来たのは後一人、峯下先輩がいた。でもここにいないということはまだ何処かで捜索をしているということだ。
「知らないわ。」
「あ、なんかペットショップのところで猫と戯れてたよ。」
「あ、そう。」
何をしてるんだあの先輩は。サボってるじゃないか。
「それじゃあな。」
「さよなら。」
そう言うと凛はやはり礼儀に適った足取りで家へと帰っていった。
「それじゃあ、俺たちも帰るか。」
「そうしよ。」
俺たちも家へと帰ることにした。
あれから結局ヘルさんのブラコン度は暫く下がっていた。
何故か理由をフェンリルさんに聞いたら
「あの状態のヘルは少し警戒心が治まっているから暗示を軽く掛けておいた。」
らしい。普段のヘルさんだと何に対しても・・・いやフェンリルさん関連は警戒心が強いから暗示がかからないのだろう。
それにしても暗示って・・・何をしたのだろうか。




