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カミツキ!  作者: .png
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其の壱拾伍 下

黄泉山はそんなに恐ろしい山ではなかった。

登山道はそんなに険しいわけでもなかったし、そこらじゅうの登山道ほどの簡単さで幼子でも簡単に登れるほどだと思う。

しかし、この山は一筋縄ではいかなかった。それは・・・


「う〜ん、いい景色だね!」


山頂からの景色がとても良い。




  カミツキ! その壱拾伍 下ツ巻 「帰宅部大合宿会 下」




「でも、少し怖いわね。」


凛が珍しく弱音(?)をはく。

しかしその言い分も分からなくもない。


「確かにこの崖は怖いな。」


景色の良い理由、つまり見晴らしが良い。

しかしこの山から見た絶景は崖だから、つまり遮るものが何もないからだ。


「〜♪〜♪」


「ちょっとアマ。危ないぞ。」


「大丈夫だよ〜。」


すっかり二日酔いからさめたアマは鼻歌を歌いながら崖のほうへと寄っていく。

まあ、最近忘れがちではあるがあいつは神なのだ。もしものことがあっても特に問題にならないだろう。


「それにしても良い景色だよね。崖とかは抜きにしてさ。」


そう言って話しかけてきたのは帰宅部大合宿会の参加者男子のうちの一人。椎名先輩だ。


「それもそうですよね。

 でも少しくるのが遅かったみたいで紅葉が殆ど終わってますけど。」


「そうだよなー。僕ももう少し早く来ればよかったな。」


まあ、この山のことは知らなかったけど、と付け足しながらも先輩はまだ景色を見ている。まあ結構綺麗だしな。


「よし、皆。そろそろ下山するよ!

 急がないと電車に乗り遅れちゃうからね。」


無気力な歓声。


「それじゃ、しゅっぱーつ!」


無気力な歓声。






結果、電車には乗れました。バンザイ。

相変わらずこの車両は閑散としている。まあ黄泉山まで来ることも滅多に無いだろうからね。


「しかし、辺鄙なところだったねー。」


「でも、結構綺麗な山だったわ。」


確かに凛の言うとおり綺麗な山だったと思う。

でも椎名先輩の言うとおりもう少し早く来たら更に綺麗だったかと思う。


「じゃあ、来年はもう少し早く来てみるかい?

 もう少し早く来たらきっと紅葉が綺麗だと思うんだ。」


先輩としてももう少し早く来たほうが良かったと思っているらしい。


「ん、やっと次の駅に着いた。ほかのお客さんが入ってくるかな?」


どうやら次の駅へと付いたようだ。

駅員さんが俺たちを見て怪訝な顔をしていたのは気にしない、というか見間違いだ。うん。

ほかのお客さんが怪訝な顔をしたのも気のせいだ。うん。






で、あの後、旅館に帰った俺たちは山のことを女将さんに言った。

すると女将さんは事務所のほうからノートと鉛筆を持って戻ってきた。


「ちょっと、その話詳しく聞かせてくれます?」


「え、ええ。いいですよ。」


女将さんが先程取りに言ったノートと鉛筆を持って椎名先輩に聞く。峯下先輩より静かな人だからかな。


「えっと、この辺りに電車が走ってるじゃないですか。」


「ええ。」


「そこの駅に葛葉くずは駅ってありますよね。

 そこの次の駅に黄泉山駅という駅があったんですよ。」


「黄泉山・・・」


女将さんも黄泉山の名前を聞くと怪訝な顔をしながらもメモを取っていった。

嫌な予感しかしない。


「で、その黄泉山に登ったんですが。

 綺麗な山でしたよ。少し落葉していましたが。」


「そうですか・・・。

 少し待っていただけますか?」


そう言うと女将さんは玄関から駆け足で出て行ってしまった。


「ねえ、景。どういうこと?」


「俺に聞くなアマ。こっちとしても聞きたいんだ。」


それにしても先程の女将さんの対応、慌てぶり。絶対何かあるはずだ。

しばらくすると女将さんが一人のおじいさんを連れ、帰ってきた。


「皆さんに大事な発表です。木村さん、どうぞ。」


「ずばり言うが、そんな黄泉山という山は存在しないんじゃ。」


そのとき、帰宅部に電流走るっ!


「そもそも、あの電車は葛葉駅が終着駅じゃぞ。」


帰宅部の皆が唖然とする(俺含む)。

ということは俺たちは不思議体験でもしてきたわけ?あの駅は何だったの?


「最後にじゃが。この辺りには昔から黄泉山伝説というものがあって、その山を訪れたものは帰ってこないという伝説なのじゃがな。

 不思議なものもあったもんじゃ。」


え、帰ってこなかった・・・。

どういうことだ?でも今俺たち5人は皆ここにいるぞ。


「ふむ、良い話が聞けたのう。

 まあ、今の話は老人の妄言だと思ってもらえればいいからの。」


そう言っておじいさん――木村さんは去っていってしまった。

静寂が支配するロビー。


「ま、まあ皆さん。変なことをお聞かせしてしまいました。

 どうぞ、お部屋にお戻りください。」


しかし、誰も動かない。

結局動き出したのは迎えのバスが来て帰らざるを得なくなった時だった。





後日談・・・


「ねえ景、何であの山から帰ってこれたか知ってる?」


「知らんが?」


「それはこの天照大御神がいたからだよ!」


アマはそんなことを言って腰に手を当てた。

本当なのだろうか・・・まあ帰ってこれてよかったと思っておこう。

これで一応合宿編は終了です。

次は番外編。誰視点になるかはご想像にお任せします。勿論、景以外ですが。

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