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カミツキ!  作者: .png
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其の壱拾弐

『本日、××県の藍川市あいかわし史野辺町しのべちょうにて男女二人が何者かによって、殺害されるという事件が起こりました。

 犯人は槍のようなものを使っているとみられ―――』


そんな朝のニュースを右から左へと聞き流・・・せなかった。

藍川市といえばこの青山市の隣の市だ。もしかしたら犯人に遭ってしまうかもしれない。


「そういえば、月読の神社も藍川市だったかな〜。」


「ん、そうなのか?」


「たしかね。」


こんなこともあるようだ。




  カミツキ! その壱拾弐 「ぽいずんくっきんぐ」




学校に登校すると門に帰宅部部長の峯下先輩が声を掛けてきた。


「やあ後輩クン!早速だけどアブダクションさせて貰うよ!

 愉快に誘拐、アブダクション!」


「ちょ、先輩――「天音ちゃんもついでにアブダクション!」


「ええっ!?」


そういう声も聞かずに先輩に誘拐されてしまった。

反抗したのになんて力だ・・・意外だったぞ。


「さあ、着いたよっ!」


先輩がバンッ!とドアを開けたその先には・・・いつもの講堂があった。


「さて、皆、席についてね。

 はいはいはい、早く席についてね。」


彼女は俺たちを下に下ろし(なんと今まで抱きかかえられていたのだ)いつのもステージへと上る。

やっと自由になれたのでさっさと席に着く。


「さて、帰宅部諸君。われわれは今、由々しき事態に陥っている。

 それが何か分かるかな?分かる人は挙手、挙手!」


帰宅部員の半数ほどが手を上げる。

ちなみに俺も手を上げた。だって、あれしかないだろう。


「ふむ、意外と朝のニュースを見ていないな。

 いいでしょう、由々しき事態とは・・・なんと隣の市、藍川市で殺人事件が起きたっ!

 そしてその犯人はまだ捕まっていないっ!!これがどういうことか分かるかい、諸君。」


しーん、と講堂が静まり返る。


「ようするに我が帰宅部のモットー『安全第一、道交法厳守、でもなんだかんだで道交法って結構大雑把なんだよね、とにかく安全に気をつけ帰宅する!』に違反する恐れがあるのだよ。」


そりゃそうだ。


「そこでだ、我々はどうすればいいか分かるかな?」


しーん、また静寂。

そりゃそうだ、この部活で一番テンションが高いのは部長なんだから。


「安全に下校せねばなるまい。

 恐らく下校は早まるだろうけど、一層気をつけるように。以上。」


そう言って部長はシュタッと舞台からいつも通り飛び降り、講堂を後にする。

それに続きわらわらと部員たちが外へ出て行く。


やっぱ下校が早くなるのかな。








「よっしゃーーーーーーーーーーーーーーー」


結局学校の下校は早まりそのおかげで教室の中だというのに勇がバカみたいに叫んで・・・・・凛に蹴られた。


「アマ、帰るか。」


「え、あ、うん。」


蹴られたバカをみて唖然としていたアマを呼ぶと彼女は意外とすんなり答えてくれた。


「で、アマ。今日なんかやるか?

 暇なんだし。」


「ん、どうしようね〜」


今日は普段より二時間早く学校が終わっている。

そんな二時間を埋める予定はどうしようかと話しているうちにアパートにつくとそこに姉さんがいた。


「やほ、景〜。天音ちゃ〜ん。」


まだ結構距離があるのに手を振ってくる。

てかこんな日に来る姉って・・・危機感無いなぁ。


「あ、梓さん〜。」


アマはアマで振りかえす。


「景〜、クッキー焼いてきたけど食べる?」


え?なんだって・・・・・


「本当ですか?食べたいですっ!!」


「お、さすが天音ちゃんだね〜。早く部屋に行こう。」


そういって彼女たちはさっさと部屋に行ってしまう。

やばい、今日は死者が出るかも・・・


急いで部屋へと向かうがそのときは時既に遅し。アマはクッキーを口にしてしまっていた。

南無・・・・


「うぐ・・・・・」


アマが苦しみ始めた・・・・・やっぱりこうなったか。


「ちょっと姉さんどういうことかな?」


姉さんはわずかに狼狽する。


「え、あのね。クッキー食べたらいきなりそうなっちゃって・・・」


「ちょっと、ここ使っていいから料理してみてくれる?」


「う、うん・・・」


こんな尋問をしている間、俺は終始笑顔で、姉はしょんぼりした顔で、アマは・・・トイレに行ったかな。

じゃあ料理開始〜








数十分後・・・


どうにか出来上がった・・・んだよな。できたのはアイスボックスクッキーだな、いびつな気もしないでもないけど。

途中、砂糖と塩を間違えたり、卵白を捨てそうになったけどどうにかなったっかな。


ということで、試食タイム。

アマはとっくに寝込んでいる。


「おいしそうだね〜」


そりゃそうだ、殆ど俺が作ったんだからな。


「じゃあ食べるか。」


「そうしよう、そうしよう。

 ・・・・・ん〜、おいし〜。」


確かに美味しい。成功したようだ。

そうだ、アマの分もとっとかなければ。


「そうだ、景。今日泊まってくね。」


「へ?」


「だって、もうこんな時間だしね〜。」


気がつけばもう六時過ぎだ。事件のこともあるしもう帰らないほうがいいだろう。


「はいはい。」


「ちゃんと荷物もあるからね〜。」


確信犯だったか。湊と喧嘩でもしたか?




・・・余談だが、次の日。すっかりアマにクッキーのトラウマができていてクッキーを食べてくれなくなってしまった・・・悲しい。

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